【詩】買いものの名前
買いものの名前はなんだろう。ハムカツをこすり合わせるように、つい、上から2番目の棚にある商品をぜんぶカリカリにしてしまった。ものすごい煙と、咳きこむキツネ。梅干しみたいにすっぱい煙のかすみから、グロッケンのラが、なみなみとこちらへ。あ、これが名前なんだ。
買いものの名前を焦がしちゃいます。
ボロボロの耳栓を捨てられないばかりに、ショッピングのものまねがヘタなまま大人になるなんて、おかしいね。でも、ボロボロは焼き魚と同じように火が通っていて、磁石になる。そういう磁石は、お支払いの10秒前から名前とくっつく。
買いものの名前は、くるくる回転する。地球儀に似ている。ひとつのむくれた星になる。
いけませんシールがそこらじゅうに貼られるようになってから、ものの値段がわからない。思わず油性ペンを握って、いいですよ、いいですよ、と書いて回りたくなった。いけませんシールは、びっくりするほど剥がしにくい。というか、剥がれない。
そうしてわたしは、買いものの名前を買うことにした。
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