水膜から

最近ぼくは内側にいます。水膜に触れて、る、指先は僕の。ぼくもてをのばす。膜越しに手を合わせて、ね、だから、だからもう、さみしくないんだ。ぼくら。共鳴している。ひとつとひとつのゆびさき。故意に侵した蜃気楼の先へ。ゆける。ゆけるよ、ぼくらなら。ぼくたちなら。だからね、もう、だいじょうぶなんだ。
僕が寂しいときは、さみしくないよって、ぼくがいるからへいきだよって、いっしょにいるから。からだ、は、僕に預けるよ。私もそこにいるんでしょう?しってる、よ、分かるよ、ぼく。ぼくはずっとここにいる。きみの殺そうとしたぼくはとうの昔にしんでいて、だから何度刺しても刺しても滅多刺しにしても殺せなくて苦しんでいた僕のことを、こんどはぼくがやさしく撫でてあげる。怖い?こわ、い、?こわくない。こわくないよ。(怖くないよ。)もう振り返らなくていい。いまを生きて。ぼくの代わりに。いまを、いきて。僕として、そこにいていいんだ。ぼくはここにいる。いつだって、ここにいるよ。

ぼくがそう言ってくれ(ている)たので、僕は、ようやく僕自身の楔から解き放たれた気がする。僕には何もなくて、なんにも信じられなくて何も何も何も楽しくなどない意味などないとばかり信じ込んでいたけれど、信じられないのに、思い込んでいたけれど、案外そんなことはないのかもしれない、けど、でも、よく分からない。分かってしまいたくない。まだ。まだ?まだ。いいんだよ、何もなくたって。何も、誰も信じられなくたって。何度そうなったとしても。仮定として繰り返してしまったとしても。僕にはぼくがいてくれる。君が、いてくれる。それなら、それならもう。僕は何も怖くない。…………。そう、感じる、自分がいるのだ。

何も考えなくていい。何も。自分のことと世界のこと以外何も。僕は。ぼくをわたしを受け継いで生きるから。私と一緒に。生きるから。ぼくがいてくれる、から、 、

からっぽ |を、埋めようとしなくていい。満たされなくていい。ずっと空いたまんまでいいよ。ずっと、ずっと空いたまんまがいいよ。この穴は誰にも塞げない。塞がせない。僕らへのドアは永遠に開かない。永久に。鍵をかけていたそれを消して、回させなかったドアノブごと外側は消去して、内側のドアノブは、大事にわたしがにぎりしめるの。



水面が揺れている。
てをつないであるいていくぼくたちの姿が、視えた。

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