Minnaloushe

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記事一覧

Aquarium "Radio Africa (definitive version)" (2023年、旧ソ連)

このアルバムはロシアの国民的バンド、アクワリウムのファンにとっては驚きであり、朗報だろう。旧ソ連サイケデリック・ロックの名盤"Radio Africa"の決定版である。 アク…

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3週間前
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ルイジ・ノーノ作曲「力と光の波のように」(1971-72年作曲、イタリア)

イタリアという国は左翼思想が背景にある前衛芸術表現が多い。文学・映画で言えばパゾリーニ、ロックで言えばアレア、そしてクラシック音楽(現代音楽)で言えば今回取り上げ…

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1か月前
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トゥレペ「サムルノリ」(1987年、韓国)

サムルノリとはキム・ドクスによって提唱された、農楽(ノンアク)という韓国の伝統的打楽器音楽を現代風に解釈した音楽である。伝統的な楽器を用いていながらも1970年代と比…

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1か月前

シン・ジュンヒョン「大韓民国楽音楽人 not for Rock」(2001年、韓国)

シン・ジュンヒョンは韓国におけるロック・ミュージックの先駆者的存在である。国内で初めての韓国語によるサイケデリック・ロックを演り、キム・チュジャやキム・ジョンミ…

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1か月前
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キム・ボムリョン「風!風!風!」(1985年、韓国)

韓国の中古レコードの保存状態は欧米や日本のそれと比べて悪い。何も日本のレコード愛好家の優越性を吹聴するわけではないが、日本で入手できる70~80年代韓国ロック・ポッ…

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1か月前

9th, Mar, 2024 音楽マニアの集い@Minnaloushe宅

今日は私Minnalousheの自宅でコアでマニアックな音楽を愛聴する3人のマニアが集結して、各々の好きな音楽を聴かせ合い・語り合うというリスニング・パーティーを行いました…

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2か月前
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ガトーン "Masterpiece Collection"(202?年、タイ)

まずはとあるワールド・ミュージックを扱っている某都内のCDショップで以前筆者が経験した出来事からこの記事を始めたい。 筆者:「タイのガトーンはありますか?」 店主の…

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2か月前
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「毛主席著作」(1967年、中国)

このレコードは中国で発売された毛沢東の著作を朗読したものが収録されているものである。当然、中国語で朗読されている。裏のジャケットには天安門のイラストがプリントさ…

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2か月前

アン・チファン「1st」(1990年、韓国)

アン・チファンは80年代後半から韓国の民主化運動に携わりながら音楽活動をしてきた「民衆歌謡」の歌手。音楽グループ「ノチャサ(歌を探し求める人々)」のメンバーだった。…

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3か月前

LA SENAS "COUNTRY OF FRENZY"(2024年、日本)

今日は山縣俊介さん(ガタさん)が所属する「熱狂打楽器集団」、ラセーニャスのライブにお邪魔した。そのライブで感じたこと、考えたことを踏まえながらラセーニャスの音楽に…

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3か月前
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Serge Gainsbourg 「セルジュ・ゲンスブールとの一時間」(1998年、フランス)

これは立川直樹氏が監修・選曲したゲンスブールのロック調の歌を収録した日本限定のCDである。主にナチスやヒトラーを皮肉った(ゲンスブールはユダヤ系フランス人で、幼い…

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3か月前
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Gordela ”Mudskoi Vokalnii Ansamble”(19??、旧ソ連ジョージア)

ジョージアは合唱の国である。とはいえ、グレゴリオ聖歌のような荘厳な感じではなく、もっと雄々しいロシアのコサック合唱に近いものがある。その一方でアジアの土臭い感じ…

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3か月前

Bahram Mansurov "Plays Azerbaijan Mugams" (1984年、旧ソ連アゼルバイジャン)

ムガムという音楽をご存知だろうか。アゼルバイジャンの伝統音楽だが、我々が知っているところのイスラム圏・中東の民族音楽の一種である。 このLPレコードはタールと呼ば…

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3か月前

Mashina Vremeni "Ten Years Later" (1987年、旧ソ連)

マシーナ・ヴレーメニは旧ソ連時代から活動しているロックバンド。バンド名はロシア語で「タイム・マシン」という意味。 このアルバムはまだロックが共産党政府によって禁…

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3か月前

オウリム "Ensemble" (1988年、韓国)

オウリムはギタリスト・作曲家であるイ・ビョンウクを中心に80年代後半から活躍している音楽グループ。「オウリム」とは韓国語で「調和」「ハーモニー」という意味があるら…

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3か月前
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Alla Pugacheva "Zerkalo Dushi" (1978年、旧ソ連)

アーラ・プガチョヴァは旧ソ連時代から活躍するロシアの国民的歌手。結婚・離婚の数が多いことでも本国では知られているらしい。このアルバムは数ある彼女の作品の中でも異…

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3か月前

Aquarium "Radio Africa (definitive version)" (2023年、旧ソ連)

このアルバムはロシアの国民的バンド、アクワリウムのファンにとっては驚きであり、朗報だろう。旧ソ連サイケデリック・ロックの名盤"Radio Africa"の決定版である。
アクワリウムの公式サイトに、
"Previous official releases were all based on rough mix since the master tape was considered lost.(こ

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ルイジ・ノーノ作曲「力と光の波のように」(1971-72年作曲、イタリア)

イタリアという国は左翼思想が背景にある前衛芸術表現が多い。文学・映画で言えばパゾリーニ、ロックで言えばアレア、そしてクラシック音楽(現代音楽)で言えば今回取り上げるルイジ・ノーノ(Luigi Nono)だろう。
この曲"Como una ola de fuerza y luz(力と光の波のように)"はコミュニストであったノーノと親しい関係であったチリの革命家、ルシアノ・クルツの死を悼むレクイエムで

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トゥレペ「サムルノリ」(1987年、韓国)

サムルノリとはキム・ドクスによって提唱された、農楽(ノンアク)という韓国の伝統的打楽器音楽を現代風に解釈した音楽である。伝統的な楽器を用いていながらも1970年代と比較的最近考案された音楽のため、純粋な伝統音楽と混合しないように注意すべきである。
このトゥレペというグループにキム・ドクスは関わってはいないようだが、サムルノリを継承した80年代のグループだ。このアルバムは録音方法が面白く、マイクに近

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シン・ジュンヒョン「大韓民国楽音楽人 not for Rock」(2001年、韓国)

シン・ジュンヒョンは韓国におけるロック・ミュージックの先駆者的存在である。国内で初めての韓国語によるサイケデリック・ロックを演り、キム・チュジャやキム・ジョンミといった多くの歌手をプロデュース、楽曲提供してきた。後世への韓国ロック・ポップスへの影響力は計り知れない。
このアルバムは彼が70~80年代に結成した二つのロックバンド、ヨプチョンドゥルとミュージックパワーのオリジナルアルバムを収録した4枚

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キム・ボムリョン「風!風!風!」(1985年、韓国)

韓国の中古レコードの保存状態は欧米や日本のそれと比べて悪い。何も日本のレコード愛好家の優越性を吹聴するわけではないが、日本で入手できる70~80年代韓国ロック・ポップスのレコードの方が概して保存状態が良く、また韓国で入手するよりもリーズナブルな価格で入手できる可能性が高い。
このレコードは韓国の主に80年代に活躍したポップス歌手、キム・ボムリョンの1st「パラム!パラム!パラム!(風!風!風!)」

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9th, Mar, 2024 音楽マニアの集い@Minnaloushe宅

今日は私Minnalousheの自宅でコアでマニアックな音楽を愛聴する3人のマニアが集結して、各々の好きな音楽を聴かせ合い・語り合うというリスニング・パーティーを行いました。参加者は美術家でもあるTさん、「音響詩人」Mさん、そして私です。
三人とも、プログレ、サイケ、辺境もの、テクノ、エレクトロニカ、現代音楽など多種多様な音楽を聴かせあいました。そして、私のマニア度が他のお二人に比べまだまだだな、

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ガトーン "Masterpiece Collection"(202?年、タイ)

まずはとあるワールド・ミュージックを扱っている某都内のCDショップで以前筆者が経験した出来事からこの記事を始めたい。
筆者:「タイのガトーンはありますか?」
店主の方:「1、2枚ならあるよ」
筆者:「じゃあ、ガトーンに似た音楽性のバンドはありますか?」
店主の方:「それはないな。ガトーンというバンド自体がタイの音楽界では誰も真似できないバンドだから」
そう、ガトーンに似たバンドというのは存在しない

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「毛主席著作」(1967年、中国)

このレコードは中国で発売された毛沢東の著作を朗読したものが収録されているものである。当然、中国語で朗読されている。裏のジャケットには天安門のイラストがプリントされている。
著者はこのレコードを時々引っぱり出して聴くと、少し落ち着いた気分になる。何も自分が社会主義者やマオイストであるからではない。そこには確固たる「意味」があるからだ。
我々が外国の歌、特に非英語圏の歌を聴いて楽しいと感じるのは、知ら

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アン・チファン「1st」(1990年、韓国)

アン・チファンは80年代後半から韓国の民主化運動に携わりながら音楽活動をしてきた「民衆歌謡」の歌手。音楽グループ「ノチャサ(歌を探し求める人々)」のメンバーだった。彼の歌の特徴はよく響く堂々とした歌声と少しばかり重々しい曲調である。
2曲目「クゴスロ(そこへ)」は明るいエネルギーを放っているフォーク・ロック調の曲で良い。3曲目「幸せは成績順ではないでしょう」では一転して児童合唱を取り入れている。思

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LA SENAS "COUNTRY OF FRENZY"(2024年、日本)

今日は山縣俊介さん(ガタさん)が所属する「熱狂打楽器集団」、ラセーニャスのライブにお邪魔した。そのライブで感じたこと、考えたことを踏まえながらラセーニャスの音楽について短いながらも書いてみたい。
原始、音楽を奏でる者はラセーニャスのようにリスナーをトランス状態へと誘う者だった。しかし、現代のクラブのような機械的なトランス状態への誘いではなく、各々の中で眠っている人間の原始的な本能を呼び覚ましてくれ

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Serge Gainsbourg 「セルジュ・ゲンスブールとの一時間」(1998年、フランス)

これは立川直樹氏が監修・選曲したゲンスブールのロック調の歌を収録した日本限定のCDである。主にナチスやヒトラーを皮肉った(ゲンスブールはユダヤ系フランス人で、幼い頃はダビデの星を付けさせられていたらしい)1975年のアルバム"Rock Around the Bunker"からの曲が中心なのだが、今聴き直してもそのいい意味でのダサさに爆笑を禁じ得ないのだ。1971年のデカダンスの匂いのする名盤"Hi

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Gordela ”Mudskoi Vokalnii Ansamble”(19??、旧ソ連ジョージア)

ジョージアは合唱の国である。とはいえ、グレゴリオ聖歌のような荘厳な感じではなく、もっと雄々しいロシアのコサック合唱に近いものがある。その一方でアジアの土臭い感じがするのも否めない。ジョージアはコーカサスと呼ばれる山岳地帯に位置する国であるが、その山々に響き渡るような力強い歌声がこのLPレコードからは聴こえてくる。
ジョージアは古来から様々な民族が入り混じっていたシルクロードの中継地だった。アジアと

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Bahram Mansurov "Plays Azerbaijan Mugams" (1984年、旧ソ連アゼルバイジャン)

ムガムという音楽をご存知だろうか。アゼルバイジャンの伝統音楽だが、我々が知っているところのイスラム圏・中東の民族音楽の一種である。
このLPレコードはタールと呼ばれるアゼルバイジャンの民族楽器によって奏でられたムガムの演奏が収録されている。その音色はいわゆるアラブ圏の楽器ウードと類似性があり、三味線・大正琴とインドのシタールを足して2で割ったような音である。演奏はどこか高揚感があり、演奏者、リスナ

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Mashina Vremeni "Ten Years Later" (1987年、旧ソ連)

マシーナ・ヴレーメニは旧ソ連時代から活動しているロックバンド。バンド名はロシア語で「タイム・マシン」という意味。
このアルバムはまだロックが共産党政府によって禁じられていた70年代に制作されていた彼らの曲が収録されたもの。1985年にゴルバチョフによってペレストロイカが発布され、マシーナ・ヴレーメニも幾分か自由に音楽活動ができるようになるが、アルバムタイトル "Ten Years Later"は1

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オウリム "Ensemble" (1988年、韓国)

オウリムはギタリスト・作曲家であるイ・ビョンウクを中心に80年代後半から活躍している音楽グループ。「オウリム」とは韓国語で「調和」「ハーモニー」という意味があるらしい。
彼らの音楽性は、韓国伝統音楽にアシッド・フォークを融合させたもので、この手のジャンルを「フュージョン国楽」と呼ぶそうだ。本国ではニューエイジ音楽の一環として扱われており、オウリムの他にもスルギドゥン、キム・ヨンドンといったアーティ

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Alla Pugacheva "Zerkalo Dushi" (1978年、旧ソ連)

アーラ・プガチョヴァは旧ソ連時代から活躍するロシアの国民的歌手。結婚・離婚の数が多いことでも本国では知られているらしい。このアルバムは数ある彼女の作品の中でも異質なものであり、A面だけでも一曲一曲の分数が長く、三曲しか収録されていない。
A面一曲目からスライ&ザ・ファミリーストーンを想起させるサイケデリックなファンクで、ワウのかかったギターがドラッギーだ。しかも5~7分を占める大曲(?)。A面二曲

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