「毛主席著作」(1967年、中国)


このレコードは中国で発売された毛沢東の著作を朗読したものが収録されているものである。当然、中国語で朗読されている。裏のジャケットには天安門のイラストがプリントされている。
著者はこのレコードを時々引っぱり出して聴くと、少し落ち着いた気分になる。何も自分が社会主義者やマオイストであるからではない。そこには確固たる「意味」があるからだ。
我々が外国の歌、特に非英語圏の歌を聴いて楽しいと感じるのは、知らない外国語で歌っていながらも、そこにはちゃんとした「意味」があり、何を歌っているのかをあれこれ想像できる楽しみがあるからである。タモリのハナモゲラ語とはわけが違うのだ。その朗読や歌に「意味」があると認識しながら聴くと言葉の響きも新鮮に音楽的に聞こえ、何を言っているのか解せないながらも一種の快感を覚える。
少し話は変わるが、丸善の洋書コーナーには英文学作品の朗読を収録したCDが置かれていることが多い。筆者の専門は英文学であるが、目で文字を追うだけではなく耳で英語を味わうのもまた一興だ。特にアイルランドの国民的詩人であるW. B. イェイツの詩やジェイムズ・ジョイスの難解な英語(一般的な英語ではなくジョイスが創造した「ジョイス語」と呼ばれる人工的な英語)を用いた大作小説「フィネガンズ・ウェイク」なども堅苦しい「文学」ではなく「音楽」の一種として聴いてみると耳に心地良い。イェイツやシェイクスピアのソネットなど、英詩は内容もさることながら音楽的にも優れており、オススメである。

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