うつつ

猫かぶった悪い子のエッセイ。

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猫かぶった悪い子のエッセイ。

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  • 詩集 死に向かう二十歳のうた

    自分の淋しさの供養のため

記事一覧

いつからだろう。香皿が灰皿になったのは。

うつつ
8時間前

あなたは私のことを何と呼ぶの。

子どものころ持っていたぬいぐるみの名前をほとんど忘れてしまった。 どうでもいいわけじゃない。 あの子たちは大切。 思い出と暖かさと可愛らしさは今でも知っている。…

うつつ
1日前
1

バスタブの底の詩

バスタブの底。 そこは暗いのに水面を見上げると照明の淡い光がゆらりと、たまに強い光がきらりと目に飛び込んでくる。熱いお湯が目にひどく痛い。 それでも必死に目を開…

うつつ
3日前
4

あなたの知性でぶん殴られるのが好きなのよ。

私が恋に落ちるとき、いつも私は誰かの知性によってぶん殴られていた。 日本史の質問に理解しきれないほどの情報量で返されたとき、全くできない数学をわかりやすくしよう…

うつつ
4日前
5

時給1050円を安いと思ったり、おまえらの言葉に喜んだり傷ついたりしませんように。

一人暮らしをして2年と少しが経った。大学に通いながら居酒屋と画廊のバイトを掛け持ち、心もとないバイト代と親の仕送りで生きていた。しかしここ半年で親からの仕送りが…

うつつ
11日前
6

私を壊す人と私の運命の人は決して同じ人ではないの。

これまで愛してきたたくさんの人たちを運命の相手だと思い込んでいた時、私はいなくなってしまいたかった。 きっと穏やかな未来が待っていた。 でもあなたに出会った時、…

うつつ
2週間前
17

淋しさの森

淋しさの森。 たくさんの木。愛情の果実のなる木。果実はいつも熟していた。 でもそこにはたくさんの隙間があって、どうにも埋められなくて泣いた夜があちこちに埋まって…

うつつ
2週間前
25

私の前髪のうねりは憎くて仕方ないのに、あなたの前髪のうねりをこんなにも愛おしく感じてしまうのは、きっと。
私の前髪のうねりも愛して。そしてあなたの美しい詩にさりげなく加えてほしい。

うつつ
3週間前
9

出会いも別れも生きるも死ぬも全部怖いなんて、面倒臭い。

この1ヶ月、時間の経つせわしなさにも時間の経つゆるやかさにも気づく暇すらなかった。ちょうど1ヶ月前に読んだ寺山修司ももう遠い過去の記憶のように思われて、記憶の中…

うつつ
4週間前
15

5年付き合った彼と別れた日。

5年付き合った彼と別れた。その1ヶ月前からそんな話は出ていた。 泣いた。めちゃくちゃ泣いた。 すべては私が悪いのに、被害者みたいにただ泣きじゃくるだけだった。 も…

うつつ
1か月前
19

おうち大好き、私はひとりでいいや。そう思わないと息できない。

おうち大好き 外は怖い 可愛い子がいっぱいで自尊心が抉られる 死にたくなる 音楽を聴かなくちゃ こんな時にAirPodsの充電がないなんて どうやってこの世界との接続…

うつつ
1か月前
4

私の感情は私の心臓。動かし続けないと死ぬ。

「でも私、超イケメンの優しい彼氏いるし。」 こうやって5年間生きてきた。 驕り散らかして生きてきた。 クソみたいな女。 どうせずっと愛してるし愛されると思ってた…

うつつ
1か月前
8

恋の終焉

あなたなしでは死んでしまう。 私の死に時はあなたと別れる時だって腹を括っていた。 私はあなたに依存していた。 これが私だった。 でもいつの日か気づいてしまった。…

うつつ
1か月前
15

猫とタバコと安いアパート、お前らどうせそんなのが好きなんだろ。

私ってこんな人間。 都会の片隅の安いごちゃごちゃしたアパートで拾った猫を飼いながらそれなりの給料で生活する。虚無感の中に生きながら、時にいい人と出会って多幸感の…

うつつ
1か月前
7

詩 『死に向かう二十歳のうた』 取るに足りない詩たち

1 なぜ美しくなくてはいけないのでしょうか。 なぜ不服なことも笑ってやり過ごさなくてはいけないのでしょうか。 なぜ生と死は完全な二項対立なのでしょうか。 なぜ個…

うつつ
1か月前
3

あなただけずるい

こんな簡単に変えられてしまうなんて 私はこんなに容易く変わってしまったのに あなたはきっと何も変わっていないのでしょう そんなのずるい ムカつく 私を変えるだけ…

うつつ
1か月前
3

いつからだろう。香皿が灰皿になったのは。

あなたは私のことを何と呼ぶの。

あなたは私のことを何と呼ぶの。

子どものころ持っていたぬいぐるみの名前をほとんど忘れてしまった。

どうでもいいわけじゃない。

あの子たちは大切。

思い出と暖かさと可愛らしさは今でも知っている。

私をかたち作った。

でも忘れてしまった。

それよりも私が誰になんと呼ばれているのかの方が今は大事。

あの人は私を呼び捨てで呼ぶ。

あの人は私をちゃん付けで呼ぶ。

でもあなたは私の名前を呼ばないね。

次会ったときあなたは

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バスタブの底の詩

バスタブの底の詩

バスタブの底。

そこは暗いのに水面を見上げると照明の淡い光がゆらりと、たまに強い光がきらりと目に飛び込んでくる。熱いお湯が目にひどく痛い。
それでも必死に目を開けて見えていた私の口から溢れて水面に向かって浮遊していく息の泡が、このバスタブの中で一番強い輪郭を持っているもののような気がした。私には私のこの体が輪郭を失ってしまって、今にもこの暑さの中に溶けてしまってバスタブの底に沈んでいけるのではな

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あなたの知性でぶん殴られるのが好きなのよ。

あなたの知性でぶん殴られるのが好きなのよ。

私が恋に落ちるとき、いつも私は誰かの知性によってぶん殴られていた。

日本史の質問に理解しきれないほどの情報量で返されたとき、全くできない数学をわかりやすくしようとたくさんの式で説明してくれたとき、カントの話に首を傾げたら、これでもかというほど簡単な言葉に咀嚼して吐いてくれたとき、私は知性によってぶん殴られ、ぶっ飛ばされた先にあった穴にたやすく落とされてしまっていた。

その知性があまりにも魅惑的

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時給1050円を安いと思ったり、おまえらの言葉に喜んだり傷ついたりしませんように。

時給1050円を安いと思ったり、おまえらの言葉に喜んだり傷ついたりしませんように。

一人暮らしをして2年と少しが経った。大学に通いながら居酒屋と画廊のバイトを掛け持ち、心もとないバイト代と親の仕送りで生きていた。しかしここ半年で親からの仕送りが徐々に減り始めた。
「欲しいときは言ってね。」と言われるけれど親に金の催促をするなんて私にはできなかった。

だから私はラウンジで働き始めた。

1ヶ月が経ったが、まだ客もついていない。フリーの席ばかり。営業が苦手だから連絡も取らない。でも

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私を壊す人と私の運命の人は決して同じ人ではないの。

私を壊す人と私の運命の人は決して同じ人ではないの。

これまで愛してきたたくさんの人たちを運命の相手だと思い込んでいた時、私はいなくなってしまいたかった。
きっと穏やかな未来が待っていた。

でもあなたに出会った時、私はどうしても生きていたくなってしまった。
まるで運命のように感じたのは、きっと気の迷いだった。

あなたが私を壊した。

綺麗に死んでいくために生真面目につまらなく生きてきたのに、今では生きていくためにたくさんの悪いことをしている。

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淋しさの森

淋しさの森

淋しさの森。

たくさんの木。愛情の果実のなる木。果実はいつも熟していた。

でもそこにはたくさんの隙間があって、どうにも埋められなくて泣いた夜があちこちに埋まっている。

今はこの森の木に熟した果実はひとつも実ってはいない。

ただ淋しさだけが浮遊している。どこもかしこも淋しさ。早く埋めてしまって見えなくしなきゃ。

誰かが木を植えてくれるまで待ってみても、どれも大きく育たない、根が腐ってしまう

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私の前髪のうねりは憎くて仕方ないのに、あなたの前髪のうねりをこんなにも愛おしく感じてしまうのは、きっと。
私の前髪のうねりも愛して。そしてあなたの美しい詩にさりげなく加えてほしい。

出会いも別れも生きるも死ぬも全部怖いなんて、面倒臭い。

出会いも別れも生きるも死ぬも全部怖いなんて、面倒臭い。

この1ヶ月、時間の経つせわしなさにも時間の経つゆるやかさにも気づく暇すらなかった。ちょうど1ヶ月前に読んだ寺山修司ももう遠い過去の記憶のように思われて、記憶の中で幼い私が愛について必死に考えているように映る。今読んでいる最果タヒの言葉が鋭い痛みを私に与え、その痛みに心地よささえ感じ、思いがけず私の口角は上がってしまう。

「さよならだけが 人生ならば 人生なんか いりません」

「細い首に糸をかけ

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5年付き合った彼と別れた日。

5年付き合った彼と別れた日。

5年付き合った彼と別れた。その1ヶ月前からそんな話は出ていた。

泣いた。めちゃくちゃ泣いた。
すべては私が悪いのに、被害者みたいにただ泣きじゃくるだけだった。

もうそれだけ。

あとは他のよくある失恋話と同じだから割愛します。

そうどうせ、たかがどこにでもあるような恋の話だったんだよ。

でも自分ごとになってしまえば意外と参るもので。

夜も眠れないし、朝は5時に目が覚めてしまう。

バイト

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おうち大好き、私はひとりでいいや。そう思わないと息できない。

おうち大好き、私はひとりでいいや。そう思わないと息できない。

おうち大好き

外は怖い

可愛い子がいっぱいで自尊心が抉られる

死にたくなる

音楽を聴かなくちゃ

こんな時にAirPodsの充電がないなんて

どうやってこの世界との接続を切ろう

ひとりで外に出る

みんなは誰かといる

私はひとり

課題と制作に追われているから逃げている

逃げるのははじめて

はじめて家でビールを飲んだ

ひとりで酒を飲むようになったら終わりだと思っていた

部屋が

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私の感情は私の心臓。動かし続けないと死ぬ。

私の感情は私の心臓。動かし続けないと死ぬ。

「でも私、超イケメンの優しい彼氏いるし。」

こうやって5年間生きてきた。

驕り散らかして生きてきた。

クソみたいな女。

どうせずっと愛してるし愛されると思ってた。

どんな映画を見ても、音楽を聴いても、話を聞いても

それがどんなに素敵でも、聞くに耐えないものだとしても

店長に怒られても、道端で超可愛い子を見かけても、人前で恥かいても

「でも私、超イケメンの優しい彼氏いるし。」

だっ

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恋の終焉

恋の終焉

あなたなしでは死んでしまう。

私の死に時はあなたと別れる時だって腹を括っていた。

私はあなたに依存していた。

これが私だった。

でもいつの日か気づいてしまった。

あなたへの想いは空っぽになっていたことに。

周りにはいつも順調だよと言って聞かせていた。

いやそれは自分に言い聞かせるための、繋ぎ止めるためのおまじないだった。

あなたは相変わらず人が良くて尊敬できる人間だった。

こんな

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猫とタバコと安いアパート、お前らどうせそんなのが好きなんだろ。

猫とタバコと安いアパート、お前らどうせそんなのが好きなんだろ。

私ってこんな人間。

都会の片隅の安いごちゃごちゃしたアパートで拾った猫を飼いながらそれなりの給料で生活する。虚無感の中に生きながら、時にいい人と出会って多幸感の中しばらく生きる。その多幸感も長くは続かずその人の好きな銘柄を吸ってみたりして、しばらく感傷的になってはまた虚無感の中、夜の電車に揺られ猫の待つアパートに帰る。それでもまたいい人と出会って人並みに結婚してささやかに暮らしていく。そういうも

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詩 『死に向かう二十歳のうた』 取るに足りない詩たち

詩 『死に向かう二十歳のうた』 取るに足りない詩たち



なぜ美しくなくてはいけないのでしょうか。

なぜ不服なことも笑ってやり過ごさなくてはいけないのでしょうか。

なぜ生と死は完全な二項対立なのでしょうか。

なぜ個性を持つことを強要されるのでしょうか。

なぜ自分のものを残したがるのでしょうか。

なぜ命を奪うことを嫌うのに花を摘み取るのでしょうか。

なぜ死を忌むのに死後の世界に夢を見るのでしょうか。

なぜ生きていなくてはいけないのにただ

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あなただけずるい

あなただけずるい

こんな簡単に変えられてしまうなんて

私はこんなに容易く変わってしまったのに

あなたはきっと何も変わっていないのでしょう

そんなのずるい

ムカつく

私を変えるだけ変えておいて

音楽も映画も小説も

こんなこと分かりきっていたはずなのに

新しいものを摂取することは怖くないと

あなたは教えてくれたような気がした

今日もあなたは私を変えたみたいに

他の人を変えてしまうのでしょう

よく

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