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あなたの知性でぶん殴られるのが好きなのよ。


私が恋に落ちるとき、いつも私は誰かの知性によってぶん殴られていた。

日本史の質問に理解しきれないほどの情報量で返されたとき、全くできない数学をわかりやすくしようとたくさんの式で説明してくれたとき、カントの話に首を傾げたら、これでもかというほど簡単な言葉に咀嚼して吐いてくれたとき、私は知性によってぶん殴られ、ぶっ飛ばされた先にあった穴にたやすく落とされてしまっていた。

その知性があまりにも魅惑的で甘い匂いを放つ。その知性の前に平伏したい。そうやって奴隷根性の恋愛が始まってしまう。
ちょろい。ばかみたい。こんにな簡単に落とせる女なかなかいない。

「好き。この人の言ってること半分わかんないけど、好き。私もこの人のことぶん殴ってやりたい。何でぶん殴ってやろう。」

あなたの様子を見るに、私はあなたをぶん殴れてはいないようだ。

私はあなたを殴れるようなもの何も持っていない。せめてかわいい顔で上手く振り回せるかわいらしさがあればよかったのに。そんなもの持っていなくて、もうあなたに振り回されっぱなし。

知性でぶん殴られるとき、その衝撃が恋になってしまう。

これを書いていて「暇な女子大生」を思い出した。彼女は知性と性欲が直結していた。私もそうなのかもしれない。恋ではなくただの性欲なのかもしれない。

恋愛って性欲?やっぱり気の迷いで冷静なものじゃない?きっと気の迷い。

あなたが好き。一度しか会ったことないのに。
でも未来がないことは分かりきっているからもう良いかな、って思い込もうと今頑張ってるの。マッチングアプリ入れてみたり、DMを送ってくる人とやり取りをしたり、友達の友達を紹介してもらったり。今自分でも驚くくらい自暴自棄で、いろんな人と会う約束をしたの。でも誰も私のこと知性で殴ってこない。

未来がないと思った恋愛はじめてでどうすれば良いのかわかっていない。今までは恋人になれる未来がちゃんと見えていて、それをゲームみたいに何となくクリアしてきていた。でもそれってクズすぎる。

ぶん殴られた先で落とされた穴は思った以上に深くて出られそうにもない。何より1人でこの穴に落ちてしまった。大抵2人で落ちてしまえていたのに、あなたは殴るだけ殴って自分はその反動で落ちるなんてことなかったみたい。穴の中に1人は淋しい。あなたが答えを出すまでこの穴の中。


2024/08/13

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