千葉雅也

哲学、創作。立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。『動きすぎてはいけない:ジル・ドゥ…

千葉雅也

哲学、創作。立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。『動きすぎてはいけない:ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』(紀伊國屋じんぶん大賞2013、第5回表象文化論学会賞)、『勉強の哲学』、『意味がない無意味』、 『デッドライン』(第41回野間文芸新人賞、第162回芥川賞候補)など。

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このサークルは、Twitterを補うような存在で、千葉雅也が日々の考えを投稿し、皆さんと交流する場所です。Twitterやnoteマガジンで提示している価値観に共感する方々に参加していただければと思っています。 ツイート的に短文を投稿します。コメントが可能で、できるだけ返信したいと思います。読むだけでもOKです。 投稿はTwitterにいる時間に並行的に行うことが多く、今後Twitterに実装されるという有料の限定投稿を先取りするようなイメージです。ですので、日によってまちまちですが、Twitterに準ずる投稿頻度になると思います。 複雑な社会批評であるとか、具体的な商品や飲食店の話など、最近のTwitterで言いにくいことはサークルで話します。「わかる」人が集う倶楽部ということです。 プランは二つ設定しました。スタンダードで閲覧可能な通常の投稿に加え、限定投稿があり、アドバンスドの方はすべてを見ることができます。 ぜひご参加ください。

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  • 生活の哲学

    生活から浮き上がってくる考察、執筆・仕事の方法、読んだもの見たものの批評などを連想的つながりで掲載していきます。Twitterでは十分に書けない考察の背景や補足情報も書こうと思います。

記事一覧

空間を食べる(京都新聞連載17)

初出:京都新聞夕刊、連載「現代のことば」、2024年6月。 * 関西の味というものがわかってきた。などと、どれほど長く住んでも栃木出身の僕が言ってはいけない気もする…

千葉雅也
11日前
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自動生成と身体性

前に作ったプログラムについて。これは2018年の春に、Pythonで作ったもの。非常に原始的な自動生成。自分が使いそうな語彙の辞書データを用意し、そこからランダムに単語を…

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千葉雅也
3週間前
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どこへ向かうかを決めずに文章を展開してみる:ひとつの事例

ジャンルを決めずに、だが「作品としての文章」を書いてみる。そのことについて。どういう点を説明するかも決めずに、始めてみる。 量から考える。文を三つ、用意する。じ…

千葉雅也
1か月前
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世代交代(京都新聞連載16)

初出:京都新聞夕刊、連載「現代のことば」、2024年4月。 * 新年度となり、いろいろな業務がある。その忙しさによって少し距離をとることができていたが、ふと大きな悲…

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千葉雅也
1か月前
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書き方についての最近の考察

前々回の記事は、日本語で文芸的なものを書くときに、縦での見え方から受ける触発がある、ということを少し述べて終わったが、そのあたりにつなぐ感じで、最近の文章の書き…

千葉雅也
1か月前
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Scrivenerでの縦書き

Scrivenerにおける縦書きについて情報をまとめておきます。 ある時期から、Scrivenerのバージョン3で、垂直レイアウトという機能が搭載された。これはエディタを縦書きに…

千葉雅也
2か月前
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検索のように誰もがAIを使うようになる時、そうなる前の考察

最近のことについて、いろいろが混じったエッセイとして。 7月の後半は、学位論文の構想発表会というものがある。学生のプレゼンと質疑応答を一日かけて行う。それが二日…

千葉雅也
2か月前
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自分をAIのように思うこと(京都新聞連載15)

初出:京都新聞夕刊、連載「現代のことば」、2024年2月。 * AIが便利だとかまだ不十分だとか問題があるといったことより、最近、自分自身をAI的に捉える感覚が芽生えて…

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千葉雅也
2か月前
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千葉雅也
2か月前
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小説と映画

小説を映画的に構想する。それはひとつの方法だと思うのだが、批判を受ける可能性もある。小説とは言語芸術であり、映画的な展開を優先すると、言語ならではの表現可能性を…

千葉雅也
3か月前
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無人の時代、人類史を考える

2023年はAI元年として記憶されるだろう、と僕は何度かエッセイなどで書いた。ChatGPTが世を騒がし始めたのは、2023年の3月である。春に、まさしく春らしく、物事が変わり始…

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千葉雅也
3か月前
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想像力と類似

想像力とは何だろうか。 しばしば、想像力を広げると言われるように、それは、出発点から離れて広がっていく運動であると考えてみる。出発点にあるのは、「何か限定された…

千葉雅也
3か月前
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千葉雅也
3か月前
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ファッションについて:個性と匿名性のジレンマ

ファッションについて書いてみる。 服のことを大きく捉えると、それは「ファッション」と呼ばれるので、その言葉を使うけれども、「服をどうするか」ということ。それにつ…

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千葉雅也
3か月前
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哲学の考察

これまで様々なテーマを扱ってきたが、多くの場合で、何かを「限定する」ことについて考えてきた面が大きい。それが、哲学に関わる者としての、主要な論題なのだと思う。そ…

千葉雅也
4か月前
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歴史について(京都新聞連載14)

初出:京都新聞夕刊、連載「現代のことば」、2023年12月。 * 今年は、ChatGPTが登場したことにより、AIが社会を変えていく元年として記憶されるだろう。戦争が起きてお…

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千葉雅也
4か月前
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空間を食べる(京都新聞連載17)

空間を食べる(京都新聞連載17)

初出:京都新聞夕刊、連載「現代のことば」、2024年6月。



関西の味というものがわかってきた。などと、どれほど長く住んでも栃木出身の僕が言ってはいけない気もするが、一応10年以上住んで、多少の感覚を持つようになった。というより逆に、そう書き始めてみて思うのだが、関東の味とは何たるかをこの間忘れていっているのかもしれない。と思うと、少しヒヤッとさせられるものがある。

かつて、ラーメンはとに

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自動生成と身体性

自動生成と身体性

前に作ったプログラムについて。これは2018年の春に、Pythonで作ったもの。非常に原始的な自動生成。自分が使いそうな語彙の辞書データを用意し、そこからランダムに単語を選び、複数ある文型のパターン(それもランダムに選ばれる)に入れる、というもの。

それで、散文詩のようなアウトプットが得られる。以下、そのサンプル。少し削って調整し、文末の句点をカットした。

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どこへ向かうかを決めずに文章を展開してみる:ひとつの事例

どこへ向かうかを決めずに文章を展開してみる:ひとつの事例

ジャンルを決めずに、だが「作品としての文章」を書いてみる。そのことについて。どういう点を説明するかも決めずに、始めてみる。

量から考える。文を三つ、用意する。じゃあどう用意するか。実際にやってみるが、パッと思いついたものを書く。——水がこぼれて平らになっている。水たまりになっている。という画を思いついた。

このように、特に意味なく思いつくということが他の人にも起きるのかわからないのだが、何でも

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世代交代(京都新聞連載16)

世代交代(京都新聞連載16)

初出:京都新聞夕刊、連載「現代のことば」、2024年4月。



新年度となり、いろいろな業務がある。その忙しさによって少し距離をとることができていたが、ふと大きな悲しみが戻ってくる。まだ一ヶ月経っていない。私事で恐縮だが、3月の後半に、父が急に亡くなった。

両親は二人とも同年齢で、今年70歳になる。父はそれを前にして、まだ69歳だった。

僕はとても父と仲が良かった。母とも関係が良く、僕は両

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書き方についての最近の考察

書き方についての最近の考察

前々回の記事は、日本語で文芸的なものを書くときに、縦での見え方から受ける触発がある、ということを少し述べて終わったが、そのあたりにつなぐ感じで、最近の文章の書き方——あるいは文章仕事の方法——について、思いつくままに書き留めておく。

どう書くかについては、『ライティングの哲学』という新書にいろんな論点があるが、僕は2017年から18年にかけて、書き方を大きく変えた。何度もいろんな機会に話している

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Scrivenerでの縦書き

Scrivenerでの縦書き

Scrivenerにおける縦書きについて情報をまとめておきます。

ある時期から、Scrivenerのバージョン3で、垂直レイアウトという機能が搭載された。これはエディタを縦書きにするモードで、歓迎の声が聞かれたが、活用しているという話はあまり見ない。機能が追加された当初、僕は歓喜して試してみたが、ちょっと奇妙な挙動をするので使わなくなった。

表示 > テキスト編集 > 垂直レイアウトを使用

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検索のように誰もがAIを使うようになる時、そうなる前の考察

検索のように誰もがAIを使うようになる時、そうなる前の考察

最近のことについて、いろいろが混じったエッセイとして。

7月の後半は、学位論文の構想発表会というものがある。学生のプレゼンと質疑応答を一日かけて行う。それが二日か三日あって、そのときには京都に泊まる。

学生が特定のテーマに狙いを定め、調べ、考察し、論文を書く。それは以前と同じことをしているように見えるが、当然ある時期から調べ物にはネット検索が入っているし、電子化された資料を扱うことも増えている

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自分をAIのように思うこと(京都新聞連載15)

自分をAIのように思うこと(京都新聞連載15)

初出:京都新聞夕刊、連載「現代のことば」、2024年2月。



AIが便利だとかまだ不十分だとか問題があるといったことより、最近、自分自身をAI的に捉える感覚が芽生えていて、それを興味深く思っている。

現在、AIなるものがやっていることは、確率の計算である。文章や画像の大規模なデータから特徴を学習した数値の束があり、それに対してプロンプトと呼ばれる言葉での指示を与える。すると、膨大なデータ=

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小説と映画

小説と映画

小説を映画的に構想する。それはひとつの方法だと思うのだが、批判を受ける可能性もある。小説とは言語芸術であり、映画的な展開を優先すると、言語ならではの表現可能性を狭めてしまう、等々。それはそうだと思う。だが、言葉そのものの次元で何かを追求しようとするのは難しいことであり、まずは、映画制作に似た考え方で、出来事が起きる「シーン、場面」という単位性で書き始めるのがやりやすいと思う。つまり、映画の言語版で

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無人の時代、人類史を考える

無人の時代、人類史を考える

2023年はAI元年として記憶されるだろう、と僕は何度かエッセイなどで書いた。ChatGPTが世を騒がし始めたのは、2023年の3月である。春に、まさしく春らしく、物事が変わり始めたというのは、コロナ禍のスタートを思い起こさせる。それは2020年の2月のことだった。緊急事態宣言が出されたのは4月に入ってすぐ。前年に元号が令和となって、その新たな時代区分が本格始動するとでも言えるだろう新年度は、街か

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想像力と類似

想像力と類似

想像力とは何だろうか。

しばしば、想像力を広げると言われるように、それは、出発点から離れて広がっていく運動であると考えてみる。出発点にあるのは、「何か限定されたもの」である。

たとえば、洗面台の脇に、先日コンビニで買ったティッシュペーパーの箱があるとする。五つくらい積み上がっている。その様子はもっと詳しく書けるが、今はこれだけの簡単な提示で済ませることにする。

それは、一定の形をしている。そ

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ファッションについて:個性と匿名性のジレンマ

ファッションについて:個性と匿名性のジレンマ

ファッションについて書いてみる。

服のことを大きく捉えると、それは「ファッション」と呼ばれるので、その言葉を使うけれども、「服をどうするか」ということ。それについては中学高校からいろいろ経緯があって、黒歴史的なものもあるが、自分の家族が服をどうでもいいとは思わず、工夫するし、良し悪しを語る人たちだったので、そのなかで一定の考えができていったと思う。

まず、ファッションについて考え、語るというと

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哲学の考察

哲学の考察

これまで様々なテーマを扱ってきたが、多くの場合で、何かを「限定する」ことについて考えてきた面が大きい。それが、哲学に関わる者としての、主要な論題なのだと思う。それについて、哲学史的にとか、精神分析との関係でとか、いろんな角度から展開できるだろう。そうしたものを書いてみたいと思っている。

歴史について(京都新聞連載14)

歴史について(京都新聞連載14)

初出:京都新聞夕刊、連載「現代のことば」、2023年12月。



今年は、ChatGPTが登場したことにより、AIが社会を変えていく元年として記憶されるだろう。戦争が起きており、コロナ禍も続いているし、この5年で世界は大きく変わっていった。AIなどより、相も変わらぬ人間の権力闘争こそが真に問題だとも言える。だが、長期的に、AIはこれから人間のあり方を変えていくだろうと予想している。

それを通

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