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妙安寺の化け太鼓(2)終
日緑は村の衆から貰った握り飯を四つも頬張り
風呂に入れて貰った後に 寺へ向かった
蜘蛛の巣が張って床には茸が生えている始末だ
日緑は 題目を唱えた後 軽く掃除をして
そこで横になったと思えばそのまま寝入ってしまった
夜更けになった 日緑の耳に入ったのは
やはりどん どん どん と鳴る音だ
日緑は数珠を握りしめ 題目をぽつぽつと
唱え出した 邪魔するように音がより騒がしく
なるが日緑は全く動じない
ぼた餅ァいらんかえ(3)
痛みなんぞは怖さで忘れてしまった だが
走る喜左衛門の姿を見る佐一の眼球は怒りと悲しみをたたえながら息たえた
喜左衛門はその晩は眠れず 江戸に帰った後も役宅で魘され続けたのだ ある時 役宅の仲間内で酒をのもうと言って幾人かで集まった
その時は同じ仲間の妻女が拵えたぼた餅が振る舞われた 喜左衛門は酒に酔っていたのか ぼた餅をかるく齧ったとき ぼた餅の中から真っ赤な血が滴り落ちた 仲間も目を丸く
ぼた餅ァいらんかえ(2)
作ったぼた餅が全く売れず佐一はため息をついて帰ろうかと思ったとき
旅の武士で 名を喜左衛門と言った男がまとめて買い上げた 喜左衛門は着いた旅籠でぼた餅を
ムシャムシャと食べたが 一時ほどすると
豆が悪かったからか腹持ちがあまり良くなかったのか腹が痛みだした 腹の痛みと悪いものを食わせたぼた餅売りを許せなかった喜左衛門は
村の外れに住んでいた佐一を呼びつけ
激怒し 餅の代金を返せと言ったが
創作怪談昔ばなし ぼた餅ァいらんかえ (1)
昔 江戸も中頃に差し掛かった頃 ある村の入り口で ぼた餅売りの佐一が旅ゆく人々に声をかけていた
ぼたー餅ァーいらんかえー
ぼたー餅ァーいらんかえーと
味は小豆の味が濃く なんとも甘い味付けで
旅の人々は喜んで買っていった だがいつまでも良いことは続かず 不作の年が続き質の悪い小豆ばかりしか使えなくなってしまった 佐一も
食わねばならない 作りはしたが味の不味さを知ってしまった故か誰も見向
創作小説 影女刀(9)終
この一件の一部始終を聞いた火付盗賊改の長官 長谷川平蔵はポツリと 「女の執念は恐ろしいものよ 執念が刀に乗り移り 手にした者を不幸に 周りさえも巻き込んだ 米原殿の采配がなければ お前も只ではすまなかったろうよ…」と神妙な面立ちであった
事件から2日後 惣太郎は牢内で衰弱死していた
そして 惣太郎の妹にあたる二人は山端の養子として迎え入れられたのだ そして近田は役宅内で祝言を挙げた 近田は兄
創作小説 影女刀(8)
惣太郎は先ほどの亡者のような顔つきから
黄土色の顔つきになり倒れ伏した 刀はより
禍々しく光り近田を刺さんとした時米原が
念仏を唱えながら刀を叩き落とした
米原は叩き落とした 影女刀を紐で縛り
近田を連れ 近在の寺の住職が護摩行をしている
場所まで来た すると住職はより一層強く
念じると護摩の火中から倶利伽羅竜王が飛び出し
刀を飲み込んだ 刀は悲鳴のような音を立てながら火の中に