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創作昔話 みのがし様(1)

昔々、今の埼玉県あたりにみのがし様という小さな社があった。この社は盗人勘三郎という名の知れた泥棒を神として祀っていた。盗人勘三郎とは、元の名を佐倉の勘三郎と言い、直訴し果てた佐倉惣五郎を信奉していた故に佐倉と勝手に名字をつけていた妙な盗人で、盗んだ銭を5両だけ残しては貧しく身売りをしなければならないような家に紫の布に包んで置いていくような処があった。

だが、勘三郎も歳をとり足がついてしまった。代官所で死罪を言い渡されたが、勘三郎は一つも弱音を吐かず、代官の柴田兵庫にこう言い放った。


「あっしは何一つ死罪も怖かァございやせん。ですが、捕まっちまったのが無念でしょうがねぇ。だからあっしのわがままを一つ、あっしがくたばった後、小さな社を建ててくだせぇ。そうしたら、訳アリの奴を助けてやりゃあしょう。」


と言い残し、刑場に引き出され、散った。68だった。その後、それを聞いていた百姓の治兵衛が首級をこっそり持ち帰り、近在の空いた土地に祠を建立し、首を埋めて、神主を説得し祀らせた。それがいわゆるみのがし様の源流という訳だ



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