創作昔話 妙安寺の化け太鼓(1)

昔々 現在の新潟県にあった話でな 

妙安寺という法華のお寺さんがあった

とても大きなお寺でお坊さんも小僧さんも

たくさんいたんだが 戦で焼かれ坊さんも

小僧さんもみんな散り散りになってしまったんだ


そこにはかの日蓮上人が題目を書いた 

題目太鼓という立派な太鼓があってな ご法会

の時は題目に合わせて どん どん どんと

鳴っていたんだが 誰も鳴らさなくなってから

長い時が経った頃 廃寺になった妙安寺から


どん どん どん たたけや たたけや 

どん どん どん わしを忘れて なんになろ

どん どこ どん なむみょうほうれんげきょう


と声が聞こえるようになったんだと 

最初は子どもが忍び込んでいたずらをしたのか

と思ったんだが 日に日に大きくなっていく

名のある法華行者が幾人も現れて化け物を

調伏せんとしたがみんな怖がって逃げていってしまったんだと 近くの村の衆が困り果てていると


これもまた法華行者で名を日緑と言った

よれよれの法衣を着た年寄りの坊さんだった

村の衆は今までの経緯を話すと 日緑は

にっこりと微笑んで よろしいと応じた

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