大泉凌平

人生のどん底なんてねぇよ、人生は底なし沼なんだよ

大泉凌平

人生のどん底なんてねぇよ、人生は底なし沼なんだよ

記事一覧

ある夏の出来事

 あなたはいつから神を信じていますか。そう聞かれたとき、人はなんと答えるのだろう。おそらく、多くの人がそんなものは知らないと言う。人には神を信じるようになったき…

大泉凌平
1か月前
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タクンタ・エスコバル3

タクンタは大宮と横浜を往復するようになった。毎月入ってくる1000万円を使って、建築事業を立ち上げ、路頭に迷っているゴロツキ達を吸収していった。金にならないシノギ…

大泉凌平
1か月前
1

タクンタ・エスコバル 2

「園森、ダーウィンの進化論って知ってるか?」 ベントレーの後部座席に乗った柴山が、ネオンにきらめく街を眺めながら尋ねた。  「知りません。自分、まともに学校に行っ…

大泉凌平
1か月前
2

タクンタ・エスコバル

マフィア大学の犯罪コミュニケーション学科の拳闘サークルに通うタクンタはサークル活動の一環で暴力団組織を立ち上げた。組員の数は少ない駆け出しの暴力団だった。タクン…

大泉凌平
1か月前
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ゴールデンウィークはゆっくりと

4月30日、午後22時、流行りの邦ロックが流れるカラオケ店のフロントで突如として吐き気に襲われた。アルバイトをしていた私は、客数の少ない店内で、もう一人のバイトの女…

大泉凌平
1か月前
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危険と煙草を呑みながら 最終回

バリからジャカルタへと飛び立った。地球の青さを感じさせるような雄大な空の足元を飛行機で駆け抜けた。窓からみえるエメラルドグリーンの海が、床に散らばったガラスのよ…

大泉凌平
1か月前
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危険と煙草を呑みながら part6

もうどれくらい歩いたのだろう。2.3時間は歩き続けている気がする。硫黄の臭いが強くなってから時間が経つ。周りの人間によると、まだ火口にはつかないらしい。雨は降り続…

大泉凌平
1か月前
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危険と煙草を呑みながらpart5

インスタントコーヒーを飲みながら、煙草を吸った。煙草とコーヒーを啜ることが毎朝の日課になっていた。今日はイジェン火山に向かうツアーの初日であった。リュックサック…

大泉凌平
2か月前

危険と煙草を呑みながら part4

14時5分にテンバサール国際空港に足を着けた。窮屈な座席に二時間も乗っており、肩こりと腰痛に悩まされていた。ジャカルタの空港でタクシーにぼったくられた私は、拙い日…

大泉凌平
2か月前
2

危険と煙草を呑みながら part3

モナスを後にすると、軍事博物館や東南アジア最大のモスクである、イスティラクルの大モスクを通って、ガンビル駅に向かった。モナスにいるときに、三人でモスクに入ってみ…

大泉凌平
3か月前
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危険と煙草を呑みながら part2

起きたのは朝の十一時だった。ホテルの朝食サービスは終了しており、空港で買っておいたパンを食べると、リュックを背負って外に出た。昨夜、ふっと湧き出てきた、友達を作…

大泉凌平
4か月前
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危険と煙草を呑みながら

日本航空の空の旅は快適だった。Netflixと睡眠を交互に繰り返しながら、およそ八時間のフライトを乗り越えた。ジャカルタの国際空港である、スカルノ・ハッタ空港に到着し…

大泉凌平
4か月前
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寿司、強欲、大麻

寿司というものは魚介類を余すことなく、使った飲食業である。そのため、チェーン店では価格競争を制するために、いかに安価な魚を仕入れるかということに力がそそがれてい…

大泉凌平
8か月前

ディストピア3-4

我々は気づくと、購買の常連客のようになっていた。何かを買うわけではなく、ただ購買のおばちゃんと話すためだけに我々は訪れていた。どうしてかと聞かれるがわからない。…

大泉凌平
10か月前

ディストピア3-3

一日のすべての授業が終わった。やっと終わったという感じである。中学の授業は退屈である。大学のように自分で学びたいものを学ぶわけではない。文科省が指定した教科を粗…

大泉凌平
11か月前

ある男の話

ヒロキの家庭は決して裕福な家庭ではありませんでした。彼の両親は海賊をやっていて、あまり良質な育児をされずに育ちました。五歳になったヒロキは世間のことを冷めた目で…

大泉凌平
11か月前

ある夏の出来事

 あなたはいつから神を信じていますか。そう聞かれたとき、人はなんと答えるのだろう。おそらく、多くの人がそんなものは知らないと言う。人には神を信じるようになったきっかけも無いし、神が本当にいるかどうかの証明すらもできない。それなのに、多くの人が困ったときには神頼みをするし、年の瀬には神社を訪れる。かくいう私も神を信じる。ただ、こんなことを言って理解してもらえるかは分からないが、私には神を信じるように

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タクンタ・エスコバル3

タクンタは大宮と横浜を往復するようになった。毎月入ってくる1000万円を使って、建築事業を立ち上げ、路頭に迷っているゴロツキ達を吸収していった。金にならないシノギだったが、タクンタは手を抜かなかった。彼には経営の才覚がないし、建設業の知識もない。ただ、タクンタはその弱い部分をさらけ出すことで、人望を得ていった。
 「ヒロキ、海幸会のやつらの尾行に気をつけろよ。園森が尾行されている」
 「兄弟も気

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タクンタ・エスコバル 2

「園森、ダーウィンの進化論って知ってるか?」
ベントレーの後部座席に乗った柴山が、ネオンにきらめく街を眺めながら尋ねた。
 「知りません。自分、まともに学校に行ってなかったので」
 「いままで、地球にはいろんな種類の生物がいただろ?人間はもともとサルだったっていうし、ペンギンはもともと、空を飛べたらしい。つまり、生物は等しく進歩しているわけだ。何億年という歴史の中で、自然界の生き物たちは殺し合いを

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タクンタ・エスコバル

マフィア大学の犯罪コミュニケーション学科の拳闘サークルに通うタクンタはサークル活動の一環で暴力団組織を立ち上げた。組員の数は少ない駆け出しの暴力団だった。タクンタは喧嘩が弱かった。細身で同じ極道を生きる者たちにしばしば下にみられていた。しかし、彼の忍耐力と行動力だけは裏社会の誰にも負けないほどのものであった。
「それで、シノギはどうしていくつもりなの?」
 「ガンジャを密売しようと考えています」

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ゴールデンウィークはゆっくりと

4月30日、午後22時、流行りの邦ロックが流れるカラオケ店のフロントで突如として吐き気に襲われた。アルバイトをしていた私は、客数の少ない店内で、もう一人のバイトの女性と世間話をしているところだった。何か悪いものでも食べたのかなと記憶を掘り起こしてみたが、思い当たる節はなかった。どうせ、一時間もすれば治っているだろう。そう思っていたが、秒速で吐き気は増していった。ただ、心配をかけたくなかったので平静

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危険と煙草を呑みながら 最終回

バリからジャカルタへと飛び立った。地球の青さを感じさせるような雄大な空の足元を飛行機で駆け抜けた。窓からみえるエメラルドグリーンの海が、床に散らばったガラスのように日差しを反射させて、キラキラと光っていた。
 日本に帰るための便まで八時間くらいあったため、空港でお土産を買ったりご飯を食べたりして過ごした。料金が高かったのがちょっと難儀だったものの、余ったインドネシアルピーを消費するにはもってこいだ

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危険と煙草を呑みながら part6

もうどれくらい歩いたのだろう。2.3時間は歩き続けている気がする。硫黄の臭いが強くなってから時間が経つ。周りの人間によると、まだ火口にはつかないらしい。雨は降り続けていた。高度が上がったからか、風が強くなってきた。四方八方から、体を揺らしてしまうほどの風が吹いた。私は一生懸命に歩いた。泥水の上に釘でも打ち込むかのように、しっかりと足をつけた。あと少し歩いたら休憩しようと思いながら急な坂道を上り続け

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危険と煙草を呑みながらpart5

インスタントコーヒーを飲みながら、煙草を吸った。煙草とコーヒーを啜ることが毎朝の日課になっていた。今日はイジェン火山に向かうツアーの初日であった。リュックサックに二日分の着替えと煙草と軽食などの最低限の荷物を詰めると、タクシーをチャーターして待ち合わせ場所のカフェへと向かった。カフェには既に、同じツアーを申し込んでいるドイツ人の男性が待っていて、ものの十分もしないうちに残りの外国人とガイドも集まっ

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危険と煙草を呑みながら part4

14時5分にテンバサール国際空港に足を着けた。窮屈な座席に二時間も乗っており、肩こりと腰痛に悩まされていた。ジャカルタの空港でタクシーにぼったくられた私は、拙い日本語で観光客をだまそうとしているキャッチをしている人たちを無視し、事前に予約してあったタクシーに乗って、レギャンにあるホテルに向かった。雨季が迫っているバリ島の湿度は高く、じめじめとした暑さだった。日差しが強いわけではないが、一時間も歩け

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危険と煙草を呑みながら part3

モナスを後にすると、軍事博物館や東南アジア最大のモスクである、イスティラクルの大モスクを通って、ガンビル駅に向かった。モナスにいるときに、三人でモスクに入ってみようと言っていたものの、金曜礼拝の日であったため、非ムスリムである私たちは、入ることができなかった。私も、フアンも、ケイも行きたい場所がなかったため、とりあえず電車に乗ろうということになり、汗の臭いが充満した満員電車に乗って、コタ駅で降りた

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危険と煙草を呑みながら part2

起きたのは朝の十一時だった。ホテルの朝食サービスは終了しており、空港で買っておいたパンを食べると、リュックを背負って外に出た。昨夜、ふっと湧き出てきた、友達を作りたいという欲望を叶えるためには、まずは人がいる場所に出なければならなかった。そのため、タクシーに乗って、ホテルから最も近い、路線バスの停留所に行った。中心街に近づいていくごとに、ビルが増えていった。しかし、そんな近代化した街の様子とは逆に

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危険と煙草を呑みながら

日本航空の空の旅は快適だった。Netflixと睡眠を交互に繰り返しながら、およそ八時間のフライトを乗り越えた。ジャカルタの国際空港である、スカルノ・ハッタ空港に到着したのは午後六時だった。はじめての海外旅行だったため、日本語がどこにも見えず、どこからも聞こえない空間に興奮した。
これが海外か。
一人で来ていたものの、心細さはなかった。新しいものに刻一刻と触れている状況に気持ちが高揚しているだけだっ

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寿司、強欲、大麻

寿司というものは魚介類を余すことなく、使った飲食業である。そのため、チェーン店では価格競争を制するために、いかに安価な魚を仕入れるかということに力がそそがれていた。大手回転ずしチェーンの「シャブ三昧」は売り上げ状況が芳しくないことに頭を悩ませていた。主に、東南アジアから代用魚を仕入れていることが業界ではマストであったが、シャブ三昧の代表 ベロベロはアフリカルートの開拓を狙っていた。

「社長、アフ

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ディストピア3-4

我々は気づくと、購買の常連客のようになっていた。何かを買うわけではなく、ただ購買のおばちゃんと話すためだけに我々は訪れていた。どうしてかと聞かれるがわからない。純粋におばちゃんとの会話を楽しんでいたという理由でもある気がするし、セントラルエリアという自分たちのたまり場にたまたま、購買があったという理由でもある気がする。
私はこの日も、放課後になるとおばちゃんと話をした。すると購買のあるスペースにこ

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ディストピア3-3

一日のすべての授業が終わった。やっと終わったという感じである。中学の授業は退屈である。大学のように自分で学びたいものを学ぶわけではない。文科省が指定した教科を粗雑に学ぶため、時として厳密性に欠くことがある。そのため、私にとっては中学のときの勉強が好きになれなかった。
 同じクラスの嶋立や原島たちと自動販売機があるセントラルエリアに向かった。セントラルエリアにはもともと、学食があったのだが、現在は取

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ある男の話

ヒロキの家庭は決して裕福な家庭ではありませんでした。彼の両親は海賊をやっていて、あまり良質な育児をされずに育ちました。五歳になったヒロキは世間のことを冷めた目で見るようになり、自分のことを助けてくれる人はいないという考えに陥ってしまいます。そのため、彼はキムチを売ることで生計を立てようと考え、ある日から町の一角で大麻のキムチを売り始めます。そのような生活を5年ほど続けていた、ある夏の日に、「うんこ

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