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タクンタ・エスコバル3
タクンタは大宮と横浜を往復するようになった。毎月入ってくる1000万円を使って、建築事業を立ち上げ、路頭に迷っているゴロツキ達を吸収していった。金にならないシノギだったが、タクンタは手を抜かなかった。彼には経営の才覚がないし、建設業の知識もない。ただ、タクンタはその弱い部分をさらけ出すことで、人望を得ていった。
「ヒロキ、海幸会のやつらの尾行に気をつけろよ。園森が尾行されている」
「兄弟も気
タクンタ・エスコバル 2
「園森、ダーウィンの進化論って知ってるか?」
ベントレーの後部座席に乗った柴山が、ネオンにきらめく街を眺めながら尋ねた。
「知りません。自分、まともに学校に行ってなかったので」
「いままで、地球にはいろんな種類の生物がいただろ?人間はもともとサルだったっていうし、ペンギンはもともと、空を飛べたらしい。つまり、生物は等しく進歩しているわけだ。何億年という歴史の中で、自然界の生き物たちは殺し合いを
ゴールデンウィークはゆっくりと
4月30日、午後22時、流行りの邦ロックが流れるカラオケ店のフロントで突如として吐き気に襲われた。アルバイトをしていた私は、客数の少ない店内で、もう一人のバイトの女性と世間話をしているところだった。何か悪いものでも食べたのかなと記憶を掘り起こしてみたが、思い当たる節はなかった。どうせ、一時間もすれば治っているだろう。そう思っていたが、秒速で吐き気は増していった。ただ、心配をかけたくなかったので平静
もっとみる危険と煙草を呑みながら
日本航空の空の旅は快適だった。Netflixと睡眠を交互に繰り返しながら、およそ八時間のフライトを乗り越えた。ジャカルタの国際空港である、スカルノ・ハッタ空港に到着したのは午後六時だった。はじめての海外旅行だったため、日本語がどこにも見えず、どこからも聞こえない空間に興奮した。
これが海外か。
一人で来ていたものの、心細さはなかった。新しいものに刻一刻と触れている状況に気持ちが高揚しているだけだっ