りっちー

10年近く母親の介護をしました。 昨年3月にその母が旅立って、ぽっかりと心に穴が空いた…

りっちー

10年近く母親の介護をしました。 昨年3月にその母が旅立って、ぽっかりと心に穴が空いたような感覚です。 時間も出来ました。 昔好きだった「書く」、またチャレンジしてみようかと思います。

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自己紹介です 3月まで10年近く母の介護をしていました

はじめまして 母親を介護してきたこの10年(後半4年ほどは施設でお世話していただきましたが)。 3月にその母が旅立ちました。勿論悲しく寂しいのですが、大往生と言うや…

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文芸部 副部長

高校時代。 必修クラブを文芸部に選んだ私は(今は必修クラブってないのかな)、調子に乗って放課後の部活動も文芸部に入部した。 なんで調子に乗ったかと言うと、顧問のK…

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湯気の向こう側に

台所の流しの下に、かなり幅をとっている四角の蒸し器がある。 母が使っていたものだ。 私が物心ついた時からあったので、ひょっとしたら私よりも年季が入っているかもしれ…

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個性的な女の子 2

最初は、しゃーなんて言っていたまんちゃんだけど、最近はちょっと慣れて、遊んでくれるようになった。 でもやっぱり怖がりだね。 いいよ。 ゆっくり仲良くなろうね。 小…

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個性的な女の子 1

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介護生活 後半戦part4

ある日、晩ご飯を食べた後。 母はため息をつきながら、言った。 もうきつい、行きたくない。 デイサービスのことを言っているのだ。 何と返したらいいか、暫く言葉が見つか…

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介護生活 後半戦part3

発熱、血尿、足の浮腫、尾てい骨あたりの褥瘡(床ずれ)。 色んな不調が母の体に起きるようになった。 特に、原因不明の発熱が度々あった。 原因不明の発熱は、前触れも…

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介護生活 後半戦part2

神経質になり過ぎていたとは思うが、毎日、いつも目で、耳で、母の動きを追っていた。 夜中、母がトイレに起きる小さな音にさえ、目が覚める。 毎日眠りは浅く、身体が重か…

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介護生活 後半戦part1

母のトイレでの転倒が、介護生活後半の始まりになった。 勿論、後々に思えば、の話である。 トイレでの転倒以来、母も私もやはり神経質にならざるを得なかった。 トイレは…

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介護生活の転機 part2

トイレが怖い トイレでの転倒をきっかけに、母はトイレを怖がるようになってしまった。 リハビリで1週間入院した後に帰宅したが、家のトイレに入ろうとすると、トイレの入…

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トイレで何が? 「お母様がお家のトイレで倒れられていて」 デイサービスの、お迎えの介護士さんからの電話を受けたのは、仕事中だった。 「今、救急車を呼んでいます」 …

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還れなかった子たちへ

いつか会えなくなる運命なら 出会わなければよかったのだろうか 別れの痛さに身を捩る 慣れることのない痛みを もう味わいたくなければ 目を閉じるしかない 心を閉じてし…

りっちー
3か月前
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自己紹介です 3月まで10年近く母の介護をしていました

自己紹介です 3月まで10年近く母の介護をしていました

はじめまして

母親を介護してきたこの10年(後半4年ほどは施設でお世話していただきましたが)。
3月にその母が旅立ちました。勿論悲しく寂しいのですが、大往生と言うやつ故に、そこは微妙な心持ちではあります。
認知症にもならず寝たきりでもなく、あっぱれと申しますか…。

自宅で介護をしていた時は、時間に追われきゅうきゅうとした毎日でした。私一人。年の離れた姉は遠方に嫁いでいます。近くに縁故者もおりま

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文芸部 副部長

文芸部 副部長

高校時代。
必修クラブを文芸部に選んだ私は(今は必修クラブってないのかな)、調子に乗って放課後の部活動も文芸部に入部した。
なんで調子に乗ったかと言うと、顧問のK先生から書いた詩を褒められたからである。

文芸部で、それらしい怪しげな詩やらエッセイやら小説(のようなもの)を書いて、もっともらしい註釈を述べてみたりしていると、なんだか頭が良さげに見えるらしい。ということに気がついた。
同じクラスの女

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祈り part3

祈り part3

1週間後、獣医さんに電話をした。
しろちゃんは食べたり食べなかったりで、点滴もしているけれど、なかなか風邪も治りきれないと獣医さんは言った。
おっぱいを吸わせた痕跡は、やはりないとのことだった。死産だったのか、うまく育たず死んでしまったのか。ひょっとして赤ちゃんを助けようと、ご飯も食べずに必死にお世話をしているうちに、自分が病気になってしまったのかも知れないとも思った。
外での悪い環境の中で、出産

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祈り part2

祈り part2

結局、獣医さんとの約束の時間まで、しろちゃんは姿を現さなかった。
ママさんと友人と三人で、付近を探し回ったが見つからず、ちょうど三十分ほど前に、獣医さんから遅れそうとの電話をいただいたので、その時点で一旦お断りをした。
翌日、私は仕事が休みの日なので、午後一番にまた来てもらうようお願いした。

ここ数日の、しろちゃんの辛そうな顔を思い浮かべると、切なかった。

前回の記事

翌日は、朝から激しい雨

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祈り part1

祈り part1

実はこの半年余りの短い期間に、いくつものお別れがあった。
お外猫たちとの、である。

お外猫たちの生きる環境は、厳しい。
短命は、外で生きる子たちの運命と言ってしまえばそれまでではあるが、信じ難いような出来事もあった。
そのことについては、気持の整理がまだついていない。ひょっとしたら、ずっとつかないかもしれない。私の記憶がある限り、忘れることはないだろう。
改めて人間の愚かさと、残虐さを知った。

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湯気の向こう側に

湯気の向こう側に

台所の流しの下に、かなり幅をとっている四角の蒸し器がある。
母が使っていたものだ。
私が物心ついた時からあったので、ひょっとしたら私よりも年季が入っているかもしれない。
母はこの蒸し器を使って、いろんな料理を作ってくれた。
ふかしいも、草餅、石垣餅(小麦粉と角切りのさつまいもの饅頭。ひょっとしたら全国区じゃないのかも)、お赤飯、そして蒸し餃子。
いろんな蒸し料理が、その蒸し器から母の手によって取り

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個性的な女の子 2

個性的な女の子 2

最初は、しゃーなんて言っていたまんちゃんだけど、最近はちょっと慣れて、遊んでくれるようになった。
でもやっぱり怖がりだね。
いいよ。
ゆっくり仲良くなろうね。

小学校3年の時。
その女性教師2人の顔は、まだ覚えている。
1人はHといって、学級担任だった。
その頃、40過ぎくらいだっただろうか。ひょっとしたら、もっと若かったのかもしれない。
他の生徒には笑顔を見せても、私に対する時には、いつも能面

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個性的な女の子 1

個性的な女の子 1

近くの緑地で見かけた子。
左耳をカットしてるから女の子。
にしても、ちょっと個性的な柄だねえ。
茶と黒と白と、だから三毛ちゃんね。
でも配置が珍しい。
まだら模様のまんちゃん。

個性的な女の子。

個性的。
私もずいぶん、そう言われたものだ。
「個性的」は気を遣ってくれた表現だ(私の場合)。
変わってる、独特、何を考えてるのかわからない。
よくそんなことを言われた。

個性的?だった、自分の昔話

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介護生活 後半戦part4

介護生活 後半戦part4

ある日、晩ご飯を食べた後。
母はため息をつきながら、言った。
もうきつい、行きたくない。
デイサービスのことを言っているのだ。
何と返したらいいか、暫く言葉が見つからなかった。

何日か前の朝、母に異変が起きた。
表情の無い顔つきでベッドに座ったまま、呼びかけてもぼんやりとして、反応がない。
母の身体を、ズボンのウエスト周りを握って引き上げようとしたが、ぐんにゃりとして立ち上がることが出来ない。

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介護生活 後半戦part3

介護生活 後半戦part3

発熱、血尿、足の浮腫、尾てい骨あたりの褥瘡(床ずれ)。

色んな不調が母の体に起きるようになった。

特に、原因不明の発熱が度々あった。

原因不明の発熱は、前触れもなく訪れる。
ある日。
朝、起きたあと、急に母は寒いと言い出した。
寒い季節ではない。違和感を感じた。
母の身体が震え始めた。びっくりして母を寝かせる。
母は、寒い寒いと繰り返して言っている。歯がカチカチと音を立てるくらい震えている。

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介護生活 後半戦part2

介護生活 後半戦part2

神経質になり過ぎていたとは思うが、毎日、いつも目で、耳で、母の動きを追っていた。
夜中、母がトイレに起きる小さな音にさえ、目が覚める。
毎日眠りは浅く、身体が重かったが、それも当たり前の日常だった。

母の身の回りの世話も、大変だった。
母は、毎日丁寧に洗顔したがった。
古い家の洗面台は、タイル張りの風呂場の中にあって、使いにくく危ない。
台所の流し台で、歯磨きと洗顔をしなければならなかった。

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介護生活 後半戦part1

介護生活 後半戦part1

母のトイレでの転倒が、介護生活後半の始まりになった。
勿論、後々に思えば、の話である。

トイレでの転倒以来、母も私もやはり神経質にならざるを得なかった。
トイレはポータブル、室内の移動は杖と手すり。
1人の時間を極力無くすため、デイサービスの利用と、それ以外の時間は私が気をつけるしかない。
たちまち、時間に追われる生活になっていった。
古い家は水回りが不便で、何かと手間がかかる。湿気が多く、色ん

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介護生活の転機 part2

介護生活の転機 part2

トイレが怖い

トイレでの転倒をきっかけに、母はトイレを怖がるようになってしまった。
リハビリで1週間入院した後に帰宅したが、家のトイレに入ろうとすると、トイレの入り口で足が進まなくなってしまう。
足腰などの問題ではなく、メンタルの問題ゆえ改善は難しい。トラウマというやつである。
病院ではポータブルトイレを使用していたので、本人も抵抗はないようで、その方が良いと言う。
身体的には、トイレ使用はまだ

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介護生活の転機 part1

介護生活の転機 part1

トイレで何が?

「お母様がお家のトイレで倒れられていて」
デイサービスの、お迎えの介護士さんからの電話を受けたのは、仕事中だった。
「今、救急車を呼んでいます」
頭の中が真っ白になった。
倒れた?
「すぐ帰ります。5分で着きます」
慌てて電話を切った。
仕事場から家まで、自転車で5分ほど。
早退させてもらい、家に向かった。
心疾患。
脳疾患。
のようなものを想像した。
朝は特に異常はなかった。

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桜 さくら にまつわるエトセトラ

桜 さくら にまつわるエトセトラ

タイトル

写真は、つい最近の、家の近所の桜並木。
桜が散り始め、通路に花びらの絨毯が敷かれている。
綺麗。

日本人が大好きな桜。
桜にまつわる思い出話しは、多くの人が持っていそう。
ご多分に洩れず私にも、いくつか思い出がある。

母も桜が好きだった。
再び一緒に暮らし始めた、翌年の春だっただろうか。
桜が見たいと母が言い出した。
私は気乗りしなかった。
休日の時間は、自分のために使いたかったか

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還れなかった子たちへ

還れなかった子たちへ

いつか会えなくなる運命なら
出会わなければよかったのだろうか

別れの痛さに身を捩る
慣れることのない痛みを
もう味わいたくなければ
目を閉じるしかない
心を閉じてしまうしかない

私の魂は夜の海を彷徨った
そこにあの子たちが行き着いているのなら
会える気がして
冷たい風に晒されながら
あの子たちを探した
幾度となく

身体は灰色の街を歩いた
どこかにあの子たちが潜んでいたらと
ひたすら奇跡の邂逅

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