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還れなかった子たちへ


いつか会えなくなる運命なら
出会わなければよかったのだろうか

別れの痛さに身を捩る
慣れることのない痛みを
もう味わいたくなければ
目を閉じるしかない
心を閉じてしまうしかない

私の魂は夜の海を彷徨った
そこにあの子たちが行き着いているのなら
会える気がして
冷たい風に晒されながら
あの子たちを探した
幾度となく

身体は灰色の街を歩いた
どこかにあの子たちが潜んでいたらと
ひたすら奇跡の邂逅を求めて
歩き続けた
何度も
何度も

どうせ損なわれてしまうのなら
創られなければよかったのだろうか

森羅万象
与えられた形に命を宿して
ただそれを全うするために
邁進する
すべてが宇宙の一部
私も
あの子たちも

雨が降る
雪が舞う
風が吹く
焼くような日が照りつける
痛みも
恐怖も
空腹も
悪意も
また
宇宙の一端

森羅万象の坩堝の中に
私もいる
あの子たちもいる

どのみち叶うことなどないのなら
夢など描かなければよかったのだろうか

救えなかった後悔も
愛し足りなかった心残りも
どんなに嘆いてみても
取り返せるものは
何もなくて

せめて
思い出の欠片を拾い集め
宝石箱に入れよう
私とあの子たちが一緒に生きた短い時間が
たくさんの結晶物となって
きらきらと光っている

夜ごと
宝石箱を開けてみる
私は忘れないよ
ずっと

暖かい春の陽だまりに
還れなかった子たち
ありがとう

君たちのいない世界で生きる私の
宝物になってくれて
ありがとう












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