穢れなき道

今ここに道は開かれた。
妙音マンジュシュリーの加護に賜りし。
かの仏陀の子。すなわち菩薩は。
諸々の所々から生じた功徳一切を。一切他。一切衆生の為に回向し奉る。

全ての者が平安寂静に至りますように。
全ての悪道に沈みし苦しみ多き衆生が。
我が功徳の雨によって安らかに救われますように。

静まりに沈みし。
声聞独覚の修行者が菩薩となれますように。

数多の無量の功徳水によって。
地獄の業火たる火の雷が花の雨に変わりますように。

数多の功徳を灯す如意宝珠の輝きによって。
餓えに苦しむ悪鬼羅刹。魑魅魍魎の心が安らかに満たされますように。

数多の難行によって修めた無量の功徳により。殺し合う動物達が安らかな慈愛の祝福に包まれますように。

数多の苦行によって修めた無辺の功徳により。情に火照る人間達が善福を覚え不断の善行を為せますように。

数数えきれぬ程受けたこの苦しみと浄化の果報が。無量の功徳水となり。争い競い合う阿修羅達の傲慢と嫉妬と闘争の火の全てを鎮めますように。

天にも満ちる程に積んだ善福の果報が。
一切天界の全ての喜びと至福に還元されますように。

今生過去世において積んだ全ての功徳が。
欲界全てに満ち足り速やかに苦しむ衆生が救われますように。

徳に満ちた者が。
諸々の悪業を滅し。
平安寂静に至らずとも。
心豊かに菩提の花を飾せますように。

親愛に満ちた者が心に大悲を抱き。
諸々の悪業を滅せますように。

心安らかなる者が。
更に功徳を積み続けれますように。

悪しき心に覆われ。
無量の苦しみを受ける者が。
大楽の宮に至れますように。

全ての悲しみを一身に受ける者が。
偉大なる仏陀の恩寵によって。
速やかに救われますように。

かの偉大なる菩薩は。
自らの難行苦行によって勝ち得た全ての功徳を衆生の幸福の為に回向し奉った。

非力なる私。
未だ涅槃を知らぬ私もかの菩薩に習い。
諸々の功徳全てを衆生の幸福の為に回向し奉る。

全ての衆生が幸福に栄えますように。
全ての衆生が苦しみから解放されますように。

一切衆生の心に菩提と功徳と花の如き甘美な雨が降り注ぎますように。

私は衆生と仏陀のしもべである。

この世でただ一人。
私だけが卑しく貧しい者であり。
他の一切は功徳の宝石たる衆生であり。
光輝く仏陀の現れである。

よって私はこの世の一切全てに奉仕し奉る。

私は仏陀のしもべである。
私は衆生の召し使いである。

喩えぼろぼろに使われ。使役され。
踏みつけられ。引き裂かれようとも。
喩え食が与えられず。餓え。渇き。
空腹に酷く苛まれようとも。
全てを明け渡した菩薩は満足を表す。

喩えあなたに罵られようとも。
喩えあなたに暴力の牙を向けられようとも。
喩えあなたが私の全てを奪おうとも。
喩えあなたが私の全てを否定しようとも。
私はただ満足である。
私という存在は衆生に明け渡されたのだから。
一体何を憂うことがあろうか。

一切衆生が私をどのように扱おうとも。
私はただ満足であり。
心は常に喜びで満ちている。

常に他の利益だけを考え。
自らの存在と行為と命とが他の幸福の為に役立つのなら。菩薩にとってそれは最高の喜びである。菩薩とはただ一心に他を想う者であり。他の喜びを自らの喜びとし。他の苦しみを自らの苦しみとする。

菩薩とは衆生と一心同体であり。
それと同時に一切衆生の召し使いである。

明け渡しとはこのような姿勢である。

自利の為に衆生は破滅し。
利他の為に衆生は栄える。

幸福は利他にこそ存在し。
自利は己を欺き破滅させる要因となり得る。

自利は私を獄卒の手に渡してしまう。
あたかも船頭が金を積まれて悪事を行うように。我が自利は私を地獄の旅路へと誘う。
人は自利によって破滅の道を歩かされている。悪魔の誘惑とでも言うべき。自利の囁きに耳を傾けてはならない。そして騙されてもいけない。自利はあなたを破滅へと導く。
まるで黄泉の旅路を案内する恐ろしい獄卒のように。あなたを言葉巧みに騙し地獄へ誘う。

私は自利を非常に恐れている。
何故なら自利という悪魔は私に無限に等しき罪悪を行わせ。無限に等しき悪業を積ませる。私は自利により生じた悪業の数だけ。
地獄で焼かれ。引き裂かれ。凍え。何度も何度も再生しては同じように苦の拷問にあう。

そのような自利の働き。
すなわち悪業の因たる自己中心主義を野放しにすることは破滅に等しき罪悪である。

私は破滅を恐れる。
私は悪業を恐れる。
私は地獄を恐れる。

ゆえに私は自利を嫌悪する。

正しき恐れは正しき智慧を生み。
正しき智慧は正しき行いを生み。
正しき行いは正しき心を生む。

諸々の悪事は正しき見解によって消滅する。

ゆえに正しきを学ぶは必須であり。
正しきを培う修練と矯正は定石である。

教学により間違いを正し。
修練により正しさを増大させ。
自己の矯正により正しき己を保つ。

菩薩とは常に勤め励み。教学を怠らず。修練を怠らず。自己の矯正を怠らず。正しき自我を以て慈悲行に邁進する。このような者こそ真の菩薩である。

禅定の効果は甚だ大きく。
数多の幸福を顕とし。
心は平安寂静に満たされる。

これら全て菩提行の果報であり。
菩提行なしに禅定が完成することはあり得ない。

もし汝が菩提行を疎かとし。ただ禅定だけに励むというなら。その道は薪のない焚き火のようなものである。平安寂静という聖なる火の粉を起こすには薪が必要である。

その薪こそ菩提行である。

実りなき種子は花を咲かせることが出来ない。焼いた炒り豆から芽が出ることがないように。菩提行という実りある種子がなければ如何なる修行の霊的果報も望めない。

正しき知識と正しき見解を以て。
菩提行がいかに重要であるかを知りなさい。菩提行なしに何事も成立することはない。

かの偉大なる菩薩。
寂天・シャーンティ・デーヴァは次のように説かれた。

諸々の事柄は初善を離れて生じ得る。
善を為すこと水の如しと捉え。
川の流れのように止めどなく不断の善福を為せ。

善の流れを止めてはいけない。
心が善を為そうと思う力の何倍も強力な魔の力。すなわち自利が汝の心に生じるがゆえ。
怠け心を菩提に沈め絶えず善福を為せ。

あたかも川の流れに逆らうのが難しいように。自利の流れにある者が善福を為すのは難しい。それは川の流れに逆らうに等しい行いであり。川の流れを押し戻すほど強力な善の力が必要となる。

ゆえに菩薩の道に入ろうとする汝は。力強い善福の心を以て。菩提行に邁進しなければならない。それが出来ないというならば。汝の心はたちどころに自利に押し流され。人生が終わる頃には。悪業と地獄の海に辿り着いている。

自利の川は必ず地獄の海へと繋がる。
自利に生きた者が悪趣に赴くのは火を見るより明らかである。

よって菩薩の道を行こうとする汝。
すなわち仏陀の子は。
自利の撲滅と利他の顕現の道を行くがよい。

それは如来が求めた道であり。
如来が歩んだ道であり。
限りない真理の正道である。

来たれ。修行者よ。汝仏陀の子。すなわち菩薩は限りない御宝を有している。その宝は三界全ての衆生を救い。全ての衆生を無量無辺なる虚空さえも越えて。平安寂静に至らしめる。一切衆生を救わんと願い。一切衆生を永遠の安らぎに引き上げようとする。勇ましく慈悲に満ちた功徳の結晶たる心。すなわち菩提心は値が付けられない程の価値であり。引き換えられるものもなく。またそれ以上に価値あるものも存在しない。

汝仏陀の子。すなわち菩薩は素晴らしく値の付けられない宝をその御心に有している。それゆえにこの先何があろうとも菩提心を捨ててはならぬ。決して決して捨ててはならぬ。菩提心を自らの命と想い。また自らの命よりも重いものだと捉え。大切に大切に菩提心を育てなさい。あたかも我が子のように。あたかも愛する仔犬のように。あたかも恋人を愛でるように。何よりも大切に菩提心を保持し。それをより一層育てなさい。それが菩薩たる者の勤めである。

汝仏陀の子。
すなわち菩薩は三界の宝である。

無量の衆生の群れを安らかに引き上げようとする菩薩は他に代わりがいない。

菩薩が菩提心を捨て。
仏陀の子であることから下落したのなら。
それは三界全ての損失となる。

ゆえに苦しむ衆生の為に。
苦しむ世界の為に。
また親である仏陀の為に。
汝は決して菩提心を捨ててはならぬ。

菩薩が菩提心を捨てることは。
自分だけの問題にあらず。
世界と衆生全ての損失に繋がる。
そのことをよく吟味し念正智に留め。
自他の利益となる行動を取り続けなさい。

それが菩薩の勤めである。

限りない御宝は汝の心に刻まれた。
それすなわち仏陀の祝福であり。
汝の限りない過去世からの功徳である。

来たれ。
祝福の子よ。
数多の難行を乗り越え。
数多の苦行を修め。
数多の苦しみを滅し。
数多の幸福を享受し。
諸々のカルマの浄化を済ませ。
平安寂静の境地へ速やかに至れ。

来たれ。
恵まれし子よ。
数多の功徳を備え。
数多の慈悲を生じしめ。
数多の智慧を有し。
数多の方便を用いて。
数多の衆生を救い上げよ。

来たれ。祝福の子よ！
来たれ。恵まれし子よ！

汝にアムリタの扉は開かれた！

かの偉大なる菩薩に栄光あれ！！
かの偉大なる仏陀に栄光あれ！！

愛すべき全ての衆生に恩寵と祝福あれ！

一切衆生安らかに救われよ！
一切衆生清らかに満たされよ！

汝にアムリタの扉は開かれた！

法の耳を持つ者よ！
法の眼を持つ者よ！

汝に不死の扉は開かれた！

八つの正道をくまなく進み。
六つの蜜をくまなく味わい。
不死の甘露を体験せよ！

汝にアムリタの扉は開かれた！
汝に不死の扉は開かれた！

来たれ。祝福の子よ！
来たれ。恵まれし子よ！

不死の甘露を体得せよ！