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シリーズ かくれ念仏

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2023年1月の記事一覧

【連載】かくれ念仏/No.7~甑島の一字一石経~

【連載】かくれ念仏/No.7~甑島の一字一石経~

甑島の一字一石経

愛川欽也がナレーションを務める、鹿児島県庁フィルム『太陽の旅(9)伝説の島〝甑島〟』によると、鹿児島県薩摩川内市甑島では、海岸沿いに真宗の聖教の一文字一文字が写経された小石が落ちているという。

映像を見てみると、どうやら正信偈を書いているようで、この石を勤行や説教に用い、法座が終わると、石を裏返して隠したという。

これは、史学的に分類すれば、「一字一石経」というものになる。

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【連載】かくれ念仏/No.5~琵琶・ゴッタン・荷方節~

【連載】かくれ念仏/No.5~琵琶・ゴッタン・荷方節~

琵琶・ゴッタン・荷方節

鹿児島には「薩摩琵琶」という琵琶がある。

吹上の伊作にあった常楽院の第31代渕脇了公と、伊作領主の島津忠良(日新斎)とが協力し、従来の琵琶を改良して作ったと言われている。

この琵琶は分類上、「地神琵琶」という、宗教的祭具としての琵琶がルーツであるが、雅楽や語り物の楽器としての「芸能的琵琶」としての性質も持っている。芸能的琵琶の代表は、平家物語を音曲に載せて語る「平家琵

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【連載】かくれ念仏/No.4~朝倉のかくれ念仏洞(怨念)~

【連載】かくれ念仏/No.4~朝倉のかくれ念仏洞(怨念)~

朝倉のかくれ念仏洞(怨念)

2018年、鹿児島教区大隅組の第5期推進員養成講座の折、受講者の方がご講師に「かくれ念仏について知りたい」と言われた。

しかし、ご講師はかくれ念仏がご専門ではないし、指定の講義もあることから、かくれ念仏については、各寺の自主学習の場にて取り扱うこととなった。

そこで自坊のお寺では、推進員の受講者を対象に、本堂のスクリーンでかくれ念仏のDVDを観賞し、その後、車で鹿

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【連載】かくれ念仏/No.3~ブラジル移民とかくれ念仏~

【連載】かくれ念仏/No.3~ブラジル移民とかくれ念仏~

ブラジル移民とかくれ念仏

『【編集復刻版】仏教海外開教史資料集成』(2009年/不二出版)という本がある。これは日本仏教の海外布教についての資料を蒐集し、解説したものであり、ハワイ編、北米編、南米編のシリーズが刊行されている。

本書収録の『伯国仏教篤信功労者名鑑』には、鹿児島や熊本からの移住者も紹介されており、片っ端から読んでみると、人吉や鹿児島の地の真宗禁制について言及されてる方が5名いらっ

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【連載】かくれ念仏/No.2~『大石兵六夢物語』に言及される一向宗~

【連載】かくれ念仏/No.2~『大石兵六夢物語』に言及される一向宗~

●『大石兵六夢物語』に言及される一向宗

鹿児島銘菓に、ボンタンアメと兵六餅がある。
いずれもセイカ食品株式会社の商品で、ボンタンアメは1924(大正13)年、兵六餅は1931(昭和6)年に販売を開始した。

ボンタンアメは名前そのままボンタンの果汁を練りこんであるのだが、兵六餅の味は何味とも形容しがたい。それは、このお菓子が『大石兵六夢物語』という物語の世界観を味で表現しようと創られたからだ。

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