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【連載】かくれ念仏/No.4~朝倉のかくれ念仏洞(怨念)~

朝倉のかくれ念仏洞(怨念)

2018年、鹿児島教区大隅組の第5期推進員養成講座の折、受講者の方がご講師に「かくれ念仏について知りたい」と言われた。

しかし、ご講師はかくれ念仏がご専門ではないし、指定の講義もあることから、かくれ念仏については、各寺の自主学習の場にて取り扱うこととなった。

そこで自坊のお寺では、推進員の受講者を対象に、本堂のスクリーンでかくれ念仏のDVDを観賞し、その後、車で鹿屋市輝北まで移動し、実地踏査を行う研修会を行った。

実地踏査は、当地の朝倉の念仏洞の参道入り口と、鹿屋市輝北歴史民俗資料館に寄贈展示されているご本尊等を見学し、帰路には垂水市牛根の道の駅に立ち寄った。

垂水の牛根から輝北への古道、および大隅や諸県一円には「薩州内場仏飯講」という巨大な講があった。このことは宮崎県三股町の研究や、浄土真宗本願寺派西本願寺講社係製作の『薩州内場仏飯講必携』に詳しい。

奇しくも実地踏査を行った年の少し前、私は土地の郷土史家にお話しを伺いに、足繁く輝北に通っていた。朝倉の念仏洞へも二度ほど行ってみた。件の念仏洞は天然の穴ではなく、人工に掘削された洞である。

洞のすぐ近くに古い看板があって、「この念仏洞には弾圧を受けた人々の怨念がしみ込んでいる」といった紹介文が書かれていた。悲劇の史跡という意味だろうが、私の受け取りとしては、何だか心霊スポット然とした紹介文だなと思った。

その時もうすでに洞を管理されてる方はおられないとのことで、私は洞の入り口に詰まった落ち葉を掻き分けて中に入ってみた。

中は結構広い。空気はひんやりとして、壁に着いた粘菌がキラキラしていた。そして、何かは分からないが気配を感じる。

私はスマホで壁を照らした。すると壁の表面がざわざわと揺れだした。「これは怨念によるものか⁉」と一瞬思ったが、よく見てみると、壁一面のゲジゲジであった。

もう右も左も天井も一面ゲジゲジ。

二、三百匹はいたと思う。あまりの光景に私は絶叫した。

普段なら平気な虫だがこの時は腰を抜かした。

朝倉のかくれ念仏洞には先人の念仏と私の絶叫がしみ込んでいる。



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