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#運命を変えた出会い
#1 バンコクじゃない、東京だろ
2018年3月1日。
今日はこのうえなく忙しい。
いつもならこの時間にはメールも片付いて、お昼休憩も終わっているのに今日はまったく先が見えない。
午後三時までにメールを片付けないと・・・。
大きく背伸びをして、目を閉じてみる。
そうだ。そうだった。こういう時こそまずは休憩を取らなきゃだ。
そう思って立ち上がる。
「お昼に行ってきます。」
ぼそり独り言のようにそういって、駆け足で階段を下り
#2 もはやそれはアイスブレイクではない
2018年3月30日。
年度末。
いよいよ忙しい。
子どもがいるとなおのことだ。
やれ、役員の引継ぎだ、やれ新学期までに何をしろだのと、お便りがたくさん来る。
あれどこに書いてあったっけ?
いつまでの提出だっけ?
と、お便りの山から必要な情報を探し出すだけで一苦労だ。
朝からいそいそと散っていく庭の桜の花びらを見て、私みたい、とつぶやいた。
まるで、どこか行きたいところがあるのに、それ
#3 って、再検査が何だよ
2018年11月。
低い冬空から落ちてくる雨が、私には一段と冷たく感じる。
普段ポジティブな人、つまりは私が落ち込むと手に付けられない。
今、私、相当落ち込んでいるのだ。
あー、開けなきゃよかった。
会社に送られてきた健康診断の結果書類のことだ。
いつも通り「所見なし」のオンパレードだとたかをくくって開封したら、乳がん検診のところに要再検査とある。
せめて帰宅してから開ければよかった。
#4 ”ふつう”へのリセットボタンが見つからない。
2018年12月。
物事にはすべてタイミングがある。
いいタイミング、悪いタイミング。
タイミングのいい人、悪い人。
タイミングが合う、合わない。
そして、それらはたいていの場合、「○○さんはいつもタイミングが悪い」とか、「こんな時に限って」と、ある人・ものに限定されて起こることが多い。
まさに彼とのアポイントがそうだった。
この数日ずっとやり取りしているがどうにもこうにもまとまらない
#5 生きたいのなら言い訳をやめろ。
2019年1月。
乳がん再検査からしばらく経つ。
今日は結果をききに行く日だ。
朝から体に力が入らない。
もうすでに、乳がんに侵されているのだろうか。
最悪な気分だ。
灰色の冷たい空を眺めて、また大きなため息が漏れた。
ため息をつきすぎて、体重が軽くなったんじゃないかと言うぐらい、ため息ばかりだ。いや、今日はむしろ、ため息という行動しかしていない。
今日帰宅するときはどんな気持ちなんだろ
#6 桜はあと39回しか見られない
2019年2月。
あっという間に2月だ。
ついこないだ、新年を迎えたばかりなのに、きっとこうして1年があっという間に終わっていくのだろう。それが、「忙しすぎるから」だということはよくわかっている。
1年のはじめには、毎日をもっと丁寧に過ごしていこうと思うのだが、2月にもなるとそんなことを思っていたこと自体忘れている。通勤電車に乗って、会社に行って、家に帰ってばたばたとご飯を作る、ただただそ
#7 アイドルとは一緒になれない
2019年5月。
私のアイドルが突然、結婚発表をした。いや、正確に言うと既に結婚していた、という事実だ。
いや、わかってはいたんだよ。彼だって人間だもの。恋愛はしますよ。だけどやっぱりしばらく受け入れられない。だって憧れだったんだもん。
「私のアイドル」とは、例の、バンコクと東京を間違えた営業担当のことだ。いつの間にかアイドルになっていたのは後で説明する。
彼が3月に再訪してくれた際はよも
#8 この感覚をどう説明しろと
2019年5月30日。
彼との個人的なやり取りが始まって1か月が経とうとしている。今日は天気もいいし、なんだか気分もいい。仕事のメールが落ち着いているのとは反対に、私の心の中は浮足立っていた。
不覚にも40過ぎてまた恋に落ちたのはどこの誰だ。まるで私、10代の乙女だ。すっかり忘れていた恋心。しかも、相手は旦那でもない、あまりよく知らないアメリカ人だ。突っ込みどころ満載だ。
私にはかねてから抱
#9 やり場のない怒りは涙に変わる
2019年6月15日。
太陽が眩しい。日射しはもう夏だ。
しかし、空気はねっとりとじっとりと重く、まるでサウナにでもいるかのように、地面から熱を帯びた空気が上がってくる。息をするのがおっくうになりそうになったところで、私は空を眺めた。雲一つない青空を見て、そんなサウナ気分をチャラにする。
私は今日、Cさんと久々に再会する。
Cさんは私の地元で知り合ったスピリチュアルカウンセラーさんだ。つい
#10 灰色の空に何があるというのか
2019年7月15日。
あの日、私が見た私とアメリカ人の彼の過去世。それは心臓をえぐるような後悔の念を伴うものだった。
愛する人を手放さなければならない後悔。
何もできなかった後悔。
何もしてあげられなかった後悔。
そして、自分ではどうすることもなかった「身分の差」。
過去世を見たことは、間違いなく私の人生を変える出来事だった。人生だけでなく、ものの見方、考え方、捉え方、すべてを変えてしまう