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「15歳の妹が家出したんだ」ある英語講師が抱える家族の問題

私は毎日セブ島にある英会話学校の先生から、オンラインサロン英会話のレッスンを受けています。今日は朝からなんだか浮かない顔。理由を聞いたら、彼の妹の1人が両親との関係がうまくいっていないとのこと。単なる反抗期とは違い、前から彼の家族はいろんな問題を抱えているからそれが原因かも。今度は何があったのでしょうか。

「こんな家にいたくない」。家を出た妹の心理とは?

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「実は家族の問題でね。僕に妹がいるの知ってるよね。上の妹は18歳で下の妹は15歳。今度上の妹が家を出るんだけど、下の妹も家を出るといっててね。家出しちゃったんだよ」

彼は、現在セブ島でシェアハウスに住んでいる。彼の実家は別の島で、セブ島から船などを乗り継いで5時間くらいいったところにある。彼は6人兄弟で、父親が一緒なのは彼を含めて18歳と15歳の妹だけ。ほかの3人は、異父兄弟になる。彼の義父は、彼を含め妹2人の面倒を見ないため、彼が働いたお金を母親に送り、そのお金で妹たちの教育費や食費を賄っている。

「15歳の妹は、義父とは口を聞かない。母親に対しても反抗的な態度を取る。18歳の妹は、母の立場もわかるから、そうでもないんだけど。下の妹は、まだ幼いから心に問題を抱えててね」

お母さんはどういっているんだろう?

「お母さんは、あなたの気持ちはわかるけど、お父さんを尊敬しなさいって妹に話すんだよ。だから妹はお母さんに対しても怒ってる」

「お母さんはどうしてお義父さんの味方をするの!私を見て」

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きっと彼女は、自分たち兄弟に対してずっと嫌な態度を取り続ける義父に対して怒っていて、そんな義父を尊敬しなさいという母親に対しても怒っているのだろう。

「なんでお母さんは、いつもお義父さんの見方をするの!? 彼は私たちのことは全然面倒を見てくれないし、学費も払ってくれない。最初にお兄ちゃんが家を出て、今度はお姉ちゃん。2人とも私のことを守ってくれていたけど、今度は誰も守ってくれなくなる。2人も家を出たら、私だけこの家でひとりぼっちになる。だって、私以外の下の兄弟たちはみんなお義父さんと血がつながっている本当の家族なんだから。自分の家なのに、私の居場所がない。だからこの家を出て、どこか別の場所に住みたい。これ以上ここにいたくない……」

15歳の妹はそんなふうに思っているのかもしれない。15歳といえば、多感な時期で、血のつながった家族であっても、親に対して不満をかかえる時期。彼女の場合は、義父と血がつながっていない上に、ずっと虐げられてきたからよけいにだと思う。自分を守ってくれるはずの母親は、父親の見方ばかりする(ように感じられる)。このまま学校を卒業するまでこの家にいるのは耐えられない。だから一人で別の場所に住みたいのだと思う。

「もし、僕がこのままセブにいたら一緒に住むことはできる。でも、僕は10月にはタイに行ってしまう。妹を連れていくわけにはいかない。

お母さんは泣いてるし、妹は問題を抱えている。彼女はまだ幼いから一人暮らしもできない。どうしたらいいんだろう。お母さんからも妹からも話を聞くし、それに対してアドバイスもするけど、だめなんだ」

「早く家を出たい。誰かに気持ちをわかってほしい」

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こういうときは、はっきりいってどうしようもない。妹が家を出る以外は解決する方法はないと思う。ただ、家を出ても住むところがないから、彼女は結局、卒業するまでは家にいるしかないんだろうけど。

彼が妹にするべきことは、アドバイスではなく、ただひたすら話を聞くこと。それによって妹は思考と感情の整理ができる。いつ家を出られるのか、なにをがんばったらいいのか、彼が妹の話を聞きながら、少しでも未来に希望をつないであげられたら、毎晩眠りにつくときに最高の未来を想像しながら眠れたら、少しは気持ちを前向きに保てるかもしれない。それに、彼が妹のやりたいことを聞くことで、妹が自分の可能性を信じて、少しずつ夢を実現させることができたら、彼女自身が変わってくる。彼の妹は、賢いからできると思う。

これは想像でしかないからわからないけど、きっと義父は、彼の母親に対しても怒っているのかもしれない。

「お前が3人の子どもたちを甘やかしてばかりいるから、子どもはわがままになるし、自分になつかない。だから俺はそいつらの面倒を一切みない。だいたい前の旦那の子どもなんだからよけいにいやなんだよ。子どもたちを見ているお前の目が前の旦那の事をみているようで嫌だ……」

彼の義父はそんなふうに感じているのかもしれない。

ちなみに、彼を始め、彼の妹たちは亡くなった実の父親にものすごく似ていると思う。少なくとも彼は亡くなった父親にとてもよく似ている。しかも、兄弟そろって美形揃い。彼の義父も顔が整っているかもしれない。でも、それ以上に、兄弟3人とも全員モデルのように顔立ちが整っていて、スタイルも良くて、実の父親に似ていたら……。多分、義理の父親の立場としては、子どもたちを通して感じる実の父親にかなり嫉妬するんじゃないかと思う。

彼のお母さんは、大らかな人だからいつも人のいいところを見ようとする。だから、彼女の新しい旦那さんが子どもたちにひどい態度をとっても「でも、あの人(現旦那さん)にもいいところがあるのよ」ということを子どもたちにいう。だから子どもは「なんでママはそんなことをいうの。あいつは私たち兄弟に対してもママに対してもひどい態度を取るのに。おかしいよ」となる。

お母さんは、彼を含め子どもが6人いるし、一番下の子はまだ小さいからそんなに簡単には離婚できない。それになによりも、一度旦那さんを失って悲しい思いをしているから、もう二度と家族を失いたくないだろうし。

「自立したい。誰にも迷惑をかけたくない」

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18歳の妹が進学しないで結婚の道を選んだのは、早く家を出たかったからというもあるだろうけど、兄である彼に学費のことで負担をかけたくなかったのかもしれない。自分が進学したら、その分の学費を兄が負担することになる。今一緒に住んでいる家族は、兄が送ってくれたお金を全部使ってやっと生活できるから、自分が進学するためにかける費用を出す余裕はない。奨学金があれば進学できるかもしれないけど、生活費もかかるから一人暮らしは難しい。だったら結婚して家を出て、それからなにか自分にもできる仕事を見つけた方がいい。彼女はそんな風に考えているのかもしれない。

お母さんからしたら、18歳の長女は結婚して遠くに行ってしまうし、頼りにしていた長男はタイに行ってしまう。15歳の娘は家出をするわで、ものすごく大変なときだと思う。本来相談相手になるはずの旦那さんには相談できないだろうし。

「家族に会いたい。会って直接話をしたいのに……」

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「妹たちと直接会って話したい。でも、仕事があるから休めないし、新型コロナウイルスのために移動も控えなければいけない。家族に会いたいけど、会えないんだよ。どうしたらいいんだろう。

話を聞いてくれてありがとう。問題があっても人生は続いていくからね。頑張るしかないか」

「あ、それから最後にいっておくけど、悲しみが深い時でも美容は忘れちゃだめだよ。美はいつも気にかけていないとね。じゃあ、また月曜日の授業でね」

彼はそういながらリップクリームを塗り、そのあと手をふった。

最後はちょっと笑っちゃったけど、問題は深刻。どうしようもできないから、彼の妹や家族が解決するしかないかもしれないけど。

彼ができることは、今はただ妹の話とお母さんの話を聞いてあげること。彼はきっと問題を解決しようとするから、そのうちに何かいい解決策が出てくるかもしれない。それに、妹もお母さんも、彼が話を聞いてくれることで物事を客観的にみられるようになる。そのぶん賢い判断もできるようになる。

どこの家庭でも、思春期の子を抱えた家庭はなにかと大変。大人になってから反抗期を迎える人もいるけど。

彼は家族のことで悩みを抱えていて、それは今後も続いていくだろうけど、少しでも家族と笑顔で話せる時間が多く取れるといいな。



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