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消雲堂自分史 阿武隈川

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駄目な人間の私が、どうやって生きてきたのかを再確認するマガジンです。自分のためのものですが、興味のある方はどうぞご覧下さい。
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2021年3月の記事一覧

選挙野郎!!衆議院議員選挙 肆

選挙野郎!!衆議院議員選挙 肆

正直言うと、僕も50歳を過ぎるまで投票なんかに行ったことがない。政治というか政治家が嫌いだからだ。僕は世の中で威張っているイメージの職業の人間が嫌いなのだ。しかし、その実、何も知らない。だから知人の市会議員に半分欺されて選挙の手伝いをすることになったのが絶好の機会だと思った。

「ほな、清弘さん、団地に行きまひょか」

「はい」ヨーカドーで買った埃が付きやすいダッフルコートを羽織って首にマフラーを

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福島県双葉郡葛尾村

福島県双葉郡葛尾村

僕の故郷は福島県である。といっても、都合11年の生活であった。実家がある神奈川に7年、東京が5年、今住んでいる千葉が一番長くて28年になる。あとは他県である。

鉄腕DASHという番組の中でジャニーズアイドルグループのTOKIOが小さな地域のなかで「DASH村」と称して農業経験を行なっていた。しかし、2011年の東日本大震災時の原発事故で、やむなくその地域から引き払い、「DASH島」「DASH海岸

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選挙野郎!!衆議院議員選挙の参

選挙野郎!!衆議院議員選挙の参

「清弘さん、今日は、ポスターへの両面テープ貼りとチラシへの証紙シール貼りをしてくださいね。夕方の駅頭で撒きますから。あ、緑の団地へのポスティングも頼んますわ。あとで団地まで送りますから」村野が僕の前にチラシの山をどかっと置いた。

それが聞こえたのか「村野さん、もう証紙シールがないからね!!」事務室の中から秘書の田村伊智子が叫んだ。地獄耳なのだ。

「ええええっ!ほんまですかぁ。ほな、このまま撒か

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伊豆堂ヶ島紀行4

伊豆堂ヶ島紀行4

書くのを忘れたが、僕たちが案内された部屋は凄かった。4人で宿泊するので広い和室と洋室がくっついた、これまで貧乏な僕は泊まったことがない豪華絢爛な部屋だった。語彙力がないので上手に表現ができないのがもったいないくらいだよ。

洋室には大きなソファ…いや、マッサージチェアっつうの? 座るとグイッグインって機械が揉み揉みしてくれるアレ…。これが気持ちよかったなぁ。子どもの言葉で言うと「きもちかった」。

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湯河原温泉紀行(2009) 1

湯河原温泉紀行(2009) 1

乳がんで左乳房を失ったナマコを温泉に連れて行きたいと思った。

手術前にはふたりで温泉旅行をすることも多かったのだが、4年前に手術をした後、ナマコを温泉旅行に誘っても「温泉に行ってもお風呂に入れないから嫌だ」と言って寂しい顔をすることが多くなった。いつかは家族風呂があるとか貸切風呂がある温泉宿に連れて行こうと考えていたのだが、なかなかその機会に恵まれなかった。

最近になって僕は18年勤めた会社を

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伊豆堂ヶ島紀行3

伊豆堂ヶ島紀行3

 堂ヶ島のホテル「ニュー○○」に到着。

「荷物をお持ちします」なんて言って、数人に取り囲まれる。警官に取り囲まれる犯人の気持ちが少しだけわかった。

 「え、こんなボロイ荷物、自分で運びますよお…」とかグズグズ言ってるうちにボーイだかホテルマンの方々がおいらの汚い荷物を勝手に持っていっちゃった。恥ずかしいなあ…。ひとり、義妹だけが「ほいほい」と平気で対応している。

「本当にこのホテルでいいのか

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伊豆堂ヶ島紀行2

伊豆堂ヶ島紀行2

 さあて・・・伊豆である。目的地は堂ヶ島・・・である。しかしナマコが修善寺の桜が名物だというので修善寺まで行って、あとはバスなりタクシーなりで堂ヶ島に向かうことになった。

 ナマコもそう考えて4人分の切符を購入したのである。行きだけね。行きだけ…帰りは下田の隣の蓮台寺駅から乗る計画になっている。ナマコに行程の切符購入係を任せたのだ。ところが修善寺に到着してびっくり。修善寺の名物は梅であって桜では

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伊豆堂ヶ島紀行

伊豆堂ヶ島紀行

 2008年4月2~3日の土日に伊豆の堂ヶ島まで旅行した。義母の7回忌を兼ねて家族旅行したのだ。兼ねて旅行ちゅうのも変だが、ナマコの家族が言うのだからしかたがない。弔い旅行のつもりなのだろうか? 理解できないが、そういうところが義理家族の文化の違いなのだと諦めて同行した。

 ところが当日早くに義妹から「父が行方不明だ」という電話があった。

 そこで義父の携帯電話を呼び出したが応答がない。それで

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選挙野郎!!第2話「衆議院議員選挙の弐」

選挙野郎!!第2話「衆議院議員選挙の弐」

投票日まで残すところ2日となった日の朝。早朝の駅頭活動を終えて冷凍庫のように冷えきった事務所内を石油ストーブ4台で暖めていると、「まだ折られだっ!」と、牛久から通っている労連の金井芳雄が強い北関東訛りで叫びながら事務所に入ってきた。

「えええ!」金井と同じ労連の松井貢太郎は、それを聞いて驚いて座っていた椅子から立ち上がった。

金井は牛久から印西を通って事務所に通っているのだが、その通り道にある

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選挙野郎!!第2話「衆議院議員選挙の零」

選挙野郎!!第2話「衆議院議員選挙の零」

4時にセットしておいた目覚まし時計が鳴る。布団から手を伸ばしてもなかなか時計を掴めない。それだけ覚醒しているのだろう。ようやく時計を探し当ててアラームを停めると、妻の翔子を起こさないようにゆっくりと布団から抜け出た。

僕は4年前に会社を辞めて独立したが、商才がないために仕事がなく、せっかく買ったマンションも手放すことになっていた。いつ引越ししても良いようにとベッドは廃棄できるように分解してある。

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選挙野郎!!第1話 「参議院議員選挙の肆」

選挙野郎!!第1話 「参議院議員選挙の肆」



「ほい、コーヒーです。田辺さん、砂糖とミルクいらないんでしたよね」村野が両手にコーヒーが入ったカップを持ってきた。

「あ、はい、覚えていてくれたんですね」

「当然でんがな」村野が僕の肩をポンと叩いてニッカリと笑った。

「田辺さんってネットが得意なの」稲田がズズゥっとコーヒーをひと啜りながら、また睨んだ。怖い。ん、ネットが得意?何だか変な質問だなと思いながら、「いや、僕はネットもパソコン

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選挙野郎!!第1話 「参議院議員選挙の参」

選挙野郎!!第1話 「参議院議員選挙の参」



鉄製だろうと思われる事務所のドアが僕の額を直撃すると、ギャグ漫画の登場人物のように目から火花が出るほどの衝撃に襲われた。危うく倒れそうになるのを僕はなんとか踏みとどまって耐えた。

「痛ててぇ…」額を押さえて呻いていると、村野の妙に明るい声が聞こえた。

「ああああ、すんまへん、田辺さん、大丈夫でっか?」どうやら彼が勢いよくドアを開けた犯人らしい。

「そのドアは危ないね、ドアの前に注意を促

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贅沢懺悔(焼き肉の食し方)

贅沢懺悔(焼き肉の食し方)

(2013年12月15日に書いた焼き肉感想文、千葉市の焼き肉店「大将軍」にて)写真でかみさんが食べているのは、うどんです。本分の内容とは全然関係ありません。

さて、今日は千葉市にある焼肉店「大将軍」で昼食であった。千葉市に構えられた某党の選挙事務所までボランティアとして通っていた際に、凄く気になっていた店なのだ。外観は古色蒼然とした古城のようで、夜な夜な吸血鬼やオオカミ男なんかがパーティを開催し

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選挙野郎!!第1話 「参議院議員選挙の弐」

選挙野郎!!第1話 「参議院議員選挙の弐」



船橋の海老川は、かつて日本武尊が東征の際に、地元の漁師たちがこの川に船を並べて橋を作り日本武尊の一行を渡したという謂れがある。船で橋を作ったことから船橋の地名の由来ともなっているらしい。海老川沿いにはソメイヨシノと八重桜など500本の桜の樹が植えられ、毎年桜の季節には多くの花見客が訪れる。海老川を船橋駅から船橋大神宮に向かってしばらく歩くと宮本という地区があり、この一角には太宰治がパビナール

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