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福島県双葉郡葛尾村

僕の故郷は福島県である。といっても、都合11年の生活であった。実家がある神奈川に7年、東京が5年、今住んでいる千葉が一番長くて28年になる。あとは他県である。

鉄腕DASHという番組の中でジャニーズアイドルグループのTOKIOが小さな地域のなかで「DASH村」と称して農業経験を行なっていた。しかし、2011年の東日本大震災時の原発事故で、やむなくその地域から引き払い、「DASH島」「DASH海岸」などの企画に引き継いだ。しかし、長期で農業を経験してきただけに、また視聴者もDASH村のイメージが強すぎて新しい企画にはいまひとつ馴染めなかったのではないだろうか?

DASH村があるのは福島県のどこかであることは知っていたが、それがどこであるかにはあまり興味がなかった。原発事故で引き払ったのだから、その封鎖範囲内にあったのだけは確かだと思っていた。

それが先ほど葛尾村であることがわかった。葛尾村には縁がある。出版社時代に写真好きな僕が中心となって「仕事で使えるデジタルカメラ」というムックを作った。まだ100万画素デジカメの時代である。その時代に仕事でデジタルカメラを使っている事例を集めた。

ホテル、病院、建設会社、中古車販売、美容室などの企業や店舗に取材した。僕の担当は、全体の広告営業と専門家への執筆依頼と、岐阜の総合病院(画像の電子カルテ保存)、三軒茶屋の美容室(ヘアスタイル見本保管)、中学校(授業での写真保管)の取材だった。取材も制作も、かなり大変だったが、苦労の末に完成したムックは結構評判がよかった。

僕が取材した中学校が、葛尾村の葛尾中学校だった。葛尾村は阿武隈高地のなかにある山間の小さな村なのだが、葛尾中学校は、いち早く授業にインターネットを取り入れた先進的な中学校だった。授業にデジタルカメラを使ったのも全国初だったと記憶している。取材に応じていただいた担当教師も教頭先生も丁寧に接してくれた。

(Wikipediaから)2011年の原発事故によって、葛尾村内全域が警戒区域または計画的避難区域に指定され、全村民が村外に避難した。その後、2013年3月22日に避難指示解除準備区域・居住制限区域・帰還困難区域に再編されたが、2016年6月12日には帰還困難区域を除いて避難指示が解除された

その葛尾村にDASH村があったのだ。驚いた。

そして、本日の「鉄腕DASH」を観ていたら、葛尾DASH村を再開するようで、原発事故から10年が経ち、すっかり荒れ果ててしまった、かつてのDASH村を整備する映像が流れた。それが良いことなのか悪いことなのかは僕にはわからない。

住んでいたのは都合11年だけだが、福島県は僕が生まれたところだ。そこで生まれたという事実は、そこが自分の故郷であるということを強烈に示している。何故なら、人生の中で一番強く記憶が残っている場所だからだ。故郷よりも長く住み続けている千葉県も、それに実家(今は妹が一人で暮らしている)がある神奈川県も、僕の故郷ではない。

僕は、遠い異国の地から故郷に思いを馳せる人のように福島を思うのだ。





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