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超短編戯曲・小説

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超短編戯曲・小説を不定期に書き綴ります。
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【超短編戯曲】文化の日(300字)

【超短編戯曲】文化の日(300字)

文化について考える夫婦がいた。

夫「今日は文化の日だから、文化的なことをしよう」

妻「もうしてるわよ」

夫「何をしてるんだ」

妻「寝転んで、漫画を読んでる」

夫「漫画かよ」

妻「漫画も立派な文化よ」

夫「もっと芸術的なことだよ。美術館とか」

妻「美術館に行ってどうするの?」

夫「絵を見るんだよ」

妻「それから」

夫「何か美味しいものでも食べる」

妻「じゃあ、美味しいもの食べ

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【超短編戯曲】少年と海(300字)

【超短編戯曲】少年と海(300字)

少年は海を見たことがなかった
少年は母に尋ねた

少年「ねぇ、母さん海ってどんなもの?」

母「すごく大きいものだよ。」

少年「終わりはないの?」

母「どんなものにも終わりはあるさ。」

少年「他には?」

母「そうだね。しょっぱいものだね。」

少年「おっきいけど終わりがあって、しょっぱいものが海なの?」

母「そうだね。」

少年「なんだ、人生とおんなじだね。」

母「そうかもしれないね。

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【猫と帽子の創作】我輩は猫である(300字)

【猫と帽子の創作】我輩は猫である(300字)

吾輩は猫である。名前はまだない。

ずいぶん経ったが、未だに名前はない。

気分転換に、色々試してみることにした。

人間はよくオシャレをする。

最近だと、眼鏡か帽子だろう。

真似をしてみよう。

人間は、吾輩たちの真似をよくする。

こちらも真似をしてもいいだろう。

まず眼鏡。

悪くない。

悪くないが、耳が上にあるせいか、耳に眼鏡をかけられない。

ずっと上を向いていなければいけない。

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【超短編小説】劇作家の苦悩(300字)

【超短編小説】劇作家の苦悩(300字)

劇作家は悩んでいた。

台本がまだ1ページもできていないのである。

逃げようか?

駄目だ。家のローンも残っている。

書くか?

それができればこんなに悩むことはない。

私を苦しめているものはなんだ?

昔はこんなに苦労しなくても書くことができた。

たとえ朝まで飲んでいても、次の稽古までには台本ができた。

そうだ、明日の稽古の読み合わせを延期すればいいではないか。

駄目だ。初日まで

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【超短編戯曲】秋休みくん リターンズ(300字)

【超短編戯曲】秋休みくん リターンズ(300字)

春休み「ああ、毎日まだ暑いのに、夏休みくんはどうして楽しそうなの?」

夏休み「それは、暑いからさ。」

冬休み「いいな、僕なんていつも寒い思いをしてるよ。」

夏休み「もっと季節をエンジョイしちゃいなよ、ウィンターヴァケーション。」

秋休み「休みがあるだけマシだよ。」

夏休み「君たち、そんなことで悩んでないで、もっと輝こうじゃないか。」

秋休み「どうして?」

夏休み「だって、太陽がまぶし

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【絵から小説】リハーサル(300字)

【絵から小説】リハーサル(300字)

明日、笑わなくてはいけない。

私は、笑うのが苦手だ。

明日、彼氏からプロポーズされる気がする。

今朝「大事な話がある。」とのメールが来たのだ。

「結婚してください。」と、言われたら、上手に笑わなくてはいけない。

自然に微笑み、少し驚きとハニカミを加えながら一言、

「ありがとう。」

これは難しい。

いきなり出来る気がしない。

今から鏡を見ながら、たくさんリハーサルしておく必要がある

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【絵から小説】わたしとワタシ(300字)

【絵から小説】わたしとワタシ(300字)

私は、二人いる。

わたしとワタシ。

どちらも私。

ロングヘアーが、わたし。

ショートボブが、ワタシ。

仲は良い。

喧嘩はしない。

一度だけどちらが、わたしかワタシかで喧嘩をしたことがある。

理由は、些細なことだった。

ワタシの方が、タワシに似ているということから。

結局は、わたしも、たわしに似ていることには変わらないということで、喧嘩は収まった。

喧嘩の後、わたしとワタシは一

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