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ニート・オブ・ダイハード
非難したいのは、とりもなおさず母だった。
またダークフォースに飲まれそうになっていた。
きっかけは件の障害年金の申請で役所に行ったことだ。
とてもとても煩雑な申請書類を一ヶ月以上かけて集めたのだが、なお役所でなければそろわない書類が二、三足りないというので、数時間かかることを想定して早めに出かけた。
足りない書類のうち、所得証明書があった。わたしの住んでいる市では住民課が発行しているというので住
出口を探してがんばる。
わたしにしてはしばらく忙しく、困っていた。
何がって、モノを買いすぎるのだ。
理由は分かっている。さみしいのに金があるからだ。
好きな人に二度もふられてしまった。しかも今度は結婚相手が見つかったという理由で。
遺産で暮らすニートだから倹約しなくてはならないのに、治りかけていた浪費癖がぶり返してしまった。
わたしにとって買うことにはふたつの意味がある。ひとつは買い物に出かけてわずかでも誰かと会話する
働けなくても働かなくてはいけない。
現在、働いていない。
一人で住んでいるが、一人で暮らしているわけではない。自分で稼いだ金で食っていないからだ。
つまるところ、親の遺産で生活している。
派手に使っているつもりはないが、今のペースなら半年はもたないだろう。少しでも長く今の暮らしを保てるように、次回の精神科の診察で障害年金の相談をするつもりだ。
わたしはうつ病患者だ。治療は今年で9年目になる。そしておそらく、先天的な障害もある。いわ
きみがいなきゃ生きていけない
明日ぼくは知らない世界へ旅に出る
もう留まれない、そんなに強くもない
平気なのは振り返るといつもきみが
そこにいて、ぼくを癒すから
あの虹の向こうへ行けなくても
このちっぽけな夢さえ叶わなくても
あの世界はいつもぼくを夢中にさせるんだ
でもきみがいなきゃ意味がない
何度だって言い聞かせて生きてきた
ひとりきり生きていくって
平気なのは目を閉じればきみが
笑ってる、それだけで
あの虹の向こうへ
明日はカルーアを買いに行く
突然、空想が舞い降りた。縁起のいい空想だ。
わたしは上気した頬で、やや興奮したようにインタビューに答えている。翌朝、実家にいつものローカル紙が届く。一面にはわたしの顔。見出しはこうだ。
“県人芥川賞受賞”
34歳で芥川賞を取る。
久々の落ち込みに見舞われ、洗う気力もなく立ち尽くした台所の、汚れた食器の山の前で、なぜかわたしはそんなことを考えた。
最近つまみ読みした本がある。
「こうして、思考
スタンド・バイ・ミー
夜のとばり落っこちて
灯りがあの月しかなくても
怖くない
怖くなんかないのさ
きみがそばにいれば
ダーリン、ダーリン
そばに来て
ぼくの隣にいて
きみが必要さ
必要さ
見上げた空がぶっ壊れて
あの山が砕けて流れても
泣かないよ
涙は一粒もこぼさない
きみがいさえすれば
ダーリン、ダーリン
そばに来て
ぼくの隣にいて
きみが必要さ
必要さ
そうダーリン、ダーリン
そばに来て
ぼくの隣にいて
アンコンディショナル・ラブ
きみの中へ落ちたい
きみが言うなら何でもなる
だけど、どうしたらなれるの
たとえ周りを失くしても
きみに逢うと思い出すの
アンコンディショナル・ラブ
何を言うかは関係ない
きみはいつもあげ足を取るから
だけどきみにバレるなら
こんなわたしは自分を殺し続けるよ
きみに全部あげるよ
アンコンディショナル・ラブ
切り立った崖に立つと
気が遠のくけど
そんなのなんてことないの、今は
きみの横で死
逆立ちして踊れそうな気がする
先日、「 ずっとやりたかったことを、やりなさい。 」を読んだ。
思わず、うめき声をあげた。続いて舌打ちした。
なぜって、実家で風呂を浴びている最中に、自分の家にお気に入りの石けんを忘れたことに気づいたからだ。
わたしはアトピーだから、美肌へのこだわりは人一倍で、なのに、なのに、なんてこった!と3分くらいパニックに陥った。しかし開き直り、実家でほこりをかぶっていた別の石けんの存在を思い出し、事
わたしを離れたあなたが、鋭く太く生きられますように。
“星の王子さま (新潮文庫) ”を読んだ。
ずっと読みたいと思いながら、読んでいなかった。今月始め、実家に帰ってなんとなしに共有スペースの兄の本棚を覗いたらあったので、手に取ったらあっという間に読んでしまった。
(余談だが、兄とは本の趣味が合う。わたしが読みたかった本を彼がとっくに読み終えて、古本屋に売るなり捨てるなりしてしまうことがしょっちゅうなので、わたしは不定期に兄の本棚をのぞいている)
1-4 アパートの前
カタバミがタンポポの陰で咲いていた。
春もそろそろ盛りを過ぎる。トンビがにぎやかだ。
彩りに満たされた世界に気づいたおれは、そろそろ工房に戻ってもいいか、そう思った。
しかし汚いアパートだ。若い女って、もっと無理してでもいい所に住むもんじゃないのか。学生だってのに。
とにかく、一度だけチャイムを鳴らそう。出なきゃ帰ればいいんだ。
唾を下げてから、かすれた八分音符を押す。
「うちになんか用す