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ファースト・インプレッション
経験的に見て、第一印象というものはたいてい当たっている(もちろん全てのことに例外はある)。
これと同様で、人が思わず口にする最初の言葉というのは、往々にしてその人の本音の発露だ。もちろん、世の中には元来にしてまわりくどい話し方をする人もいるから、例外はある。
僕は人がとっさに発した言葉を聞くのが好きだ。
みずみずしくて、飾り気がなく、とても美しい。表現技法やボキャブラリーの巧拙なんてものはど
ある美容師と客の会話
「ひと通り、ほんの少しだけ切ってください」
「いいんですか?
この仕上がりは、ものすごく腕のいい方のカットだとお見受けしますけど。」
「構いません。
上書きしてください。」
「消去ではなく、上書きですね。
わかりました。任せてください。」
Melodies of Nishiogikubo
薄ぼんやりとした、形容しがたい淡い色の空の下で、僕は歩く。
街から街へ。
歩いても歩いても、記憶が追いかけてくる。
許したはずのことや、手放したはずのことたちが。
それなりの手応えの仕事をやり遂げて、心にゆとりができたときに限ってこうなる。
呼んでなんかいない。
勝手に向こうからやってくるのだ。
西荻窪の、品の良さそうな焦茶色のマンションを右手に見る活気に満ちた通りにさしかかるころ、僕
シガレット アンド コーヒー
高校の卒業式の夜に行われた「クラスコンパ」で初めてタバコを口にしたとき、僕はこの嗜好品をどう味わうか、その方法を全く知らなかった。ただくわえてみて、吸ったり吐いたりしてみるのだが、手応えのようなものがない。くわえたあと、そこから先にどうしたらいいか知らなかったのだ。
野球部の仲間で、別の店でコンパをしていた他クラスのある友人が、渋谷の路上でそんな僕のことを見かけて声をかけてきた。
彼は僕のぎこち
花は咲かないが、咲く。
自分を含め、多くの人が、決して咲くことのない花を咲かせようと、もがくようにして生きている。
もちろん誰もがその気になれば心の中に花を咲かせることはできるのであるから、たいして悲観するようなことじゃない。
とはいえ、空模様が暗ければ気持ちも沈む。
そんな日に、どうせ今日も行列だろうとダメ元で通りかかったラーメン屋さんに、奇跡的に空席があったので、思わず吸い込まれてしまった。
ここの若き店主の先
友よ…(埼玉県熊谷市にて)
半年ぶりに、3年ほど前に他界した親友の墓参りに行った。
東京の僕の自宅は多摩霊園が近いので、気を利かせたのか、コンビニにも墓参りの人をあてこんだお花の数々が並んでいたりする季節である。
それを見て、いてもたってもいられなくなり、彼が眠る熊谷まで出かけたのだった。
久しぶりに訪ねた熊谷の空は、相変わらず悲しいほどに碧い。
彼の墓石には「絆」と刻まれているだけで名前は端っこの方の別のところを見