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介護の言葉⑳「介護漬け」

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「介護の言葉」

 この「介護の言葉」シリーズでは、介護の現場で使われたり、また、家族介護者や介護を考える上で必要で重要な「言葉」について、改めて考えていきたいと思います。

 今回も、実はそれほど広く知られていない可能性はありますが、個人的には、かなりの違和感をおぼえた「言葉」でした。

「介護漬け」

 この言葉を知った時の、もやもやした感覚は覚えています。

 専門家で、高齢者医療、もしくは介護者支援にも影響力がある人が言っていたと思いますが、介護をする家族にアドバイスをする中で、使われている言葉のようでした。

「介護漬けにならないように、気をつけてください」。

 その専門家のオリジナルな表現ではなく、さらに以前から例えとして使われていた言葉のようでした。「仕事漬け」といった使われた方をしている言葉の転用ですし、善意で使用されているとは思ったのですが、それを知った時、少し異を唱えたくなりました。

「介護漬け」というのは、おそらくは24時間体制での介護のことをさしているのだと思います。ただ、今の時代では家族の介護をしている場合、一人で介護をせざるを得なくて、それは必然的に、外から見たら「介護漬け」としか言えないような状況になりがちです。

 もし、「介護漬け」を避けたいのであれば、そうしたアドバイスをする方が、1日3時間でいいので、家族介護者が完全に安心できるような介護を代わりにやっていただければ、というような、あまり誉められないのですが、やや攻撃的な気持ちにもなりました。

「一人で抱え込まないでください」との類似点

 この「介護漬け」という言葉は、「一人で抱え込まない」と、使われ方が似ているように思いました。

「一人で抱え込まない」も、これから介護に取り組む人まだ介護をしていないけれど今後可能性がある人にとって、とても有益なアドバイスであり、助かる情報であるのは間違いないのですが、実際に介護を一人で行わざるを得ない状況にある介護者にとっては、ただ気持ちが重くなるような言葉にもなり得ます。

 それと同様に、「介護漬けを避けてください」という言葉も、これから家族介護者になる人にとっては、心に刻むべきことでもあるのかもしれませんが、実際に、24時間体制で介護せざるを得ない家族介護者にとっては、ただでさえ大変な毎日なのに、より追い込まれる言葉になりかねません。

支援者の言葉の力

 どれだけ工夫をしたとしても、一人しか介護をする人間がいなくて、介護保険も「改正」のたびに「サービス抑制」が進んでいる、としか思えない介護環境の中で、「介護漬け」としか思えない状況で介護をしている人は、多数派ではないかと想像できます。

 それは、個人では避け難いことで、その家族介護者個人に責任を被せていいとは思いませんし、何ら非難されることでもなく、ただ厳しい介護環境ということだと思います。

 もし、「一人で抱え込むこと」や「介護漬け」を避けたいのであれば、社会的な支援を充実させる必要があります。

 その考慮なしに、ただ「介護漬けを避けましょう」と言い続けることは(その言葉自体は正しいとしても)、場合によっては、家族介護者を追い込むことがある事実を、専門家、特に家族介護者に関わる支援者は知っておいた方がいいと思っています。


 同じ言葉でも、その使う場合やタイミングによっては、人を助けたり、逆に人を追い込んだりするなど、全く違う作用を引き起こすことがあるのは、日常的にも経験があるのではないでしょうか。

 いつも、文句ばかりを言っているように思われるかもしれませんが、専門家や支援家の言葉は、より重く、その一言によって、介護者は救われもしますし、逆にダメージが甚大になることも少なくありません。

 そういう意味では、言葉の使い方に対して、より慎重になっていただきたいという思いから、この「介護の言葉」シリーズを続けています。

 疑問やご意見などがありましたら、コメント欄などでお伝えくだされば、ありがたく思います。

 よろしくお願いいたします。



(他にも、いろいろと介護のことを書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。




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