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54.留学ビザでも働ける

最初に移住を決意してローマに2ヵ月間住んでいたとき、インターネットで就職活動をしていました。
日本企業のローマ事業所やローマ支店のようなところをイメージして探したものの、あまりの数の少なさに驚きます。
それでも他に伝手もないし、時間さえあればひたすら検索していたところ、偶然、ある日本の会社の募集を見つけたのです。


Webライターという仕事

その会社ではWebライターを募集していました。
インターネット上でだけ公開されるメディアにむけて記事を書く記者のようなものです。

10年ほど前は今ほどネットメディアがなかったですし、認知もされ始めたばかり。
それでも企業は既存メディアに頼るだけではダメだと分かっていて、新たな広告戦略としてもっとネットを活用していきたいというようなタイミングでした。

そんな環境で私が見つけたのはWebライターという仕事です。
ある日本の会社が募集していたのですが、出社の必要はなくすべてがインターネットのやり取りだけで完結するというので、海外在住の私にはうってつけの条件でした。

そして、課題のようなテスト記事を書いて履歴書と共に送ったところ採用となります。
就労ビザが出るわけではありませんが、とにかくイタリアでもできる仕事だったので、とりあえずキープという感じでその時はあまり気にも留めていませんでした。

というのも、普通の会社員のように決まった時間働いて毎月のお給料が出る、というわけではなかったからです。

最初は時給100円だった

その会社では何人ものWebライターを抱えていて、ネット上に構築したシステムで一括管理していました。
事前に自分の得意分野や実績を登録しておくと、仕事の発生ベースで優先的に連絡が来ます。
気に入ればその仕事にエントリーして、またテスト記事を書いて、良ければ採用、という仕組みです。

さらに記事は1本あたり3000円。
2000字ぐらいの短い原稿ですが、目的に応じた内容に沿って書くには自分が持っている知識だけでは足りないことも多くとても時間がかかりました。
初めての原稿はブラッチャーノに移って落ち着いてからだったと思います。

ある商品のインナーマーケティング記事です。
インナーマーケティングとは表立って行われる広告活動ではなく、消費者がある商品についての情報を探しているとき、ネット上で見つけて読んでみるちょっとしたブログのようなものです。

ただし、広告規制に基づいた制約が多くあるので、一定のワードを避けつつ、逆に一定のワードを文章的にはおかしいかもしれないと思いながらもある回数は入れて行かなければいけません。
慣れてしまうとあまり考えなくても書けるようになりますが、最初のころは本当に時間がかかって大変でした。

何本目かの記事を書いたとき、いったいどれぐらいの時間がかかったのか記録しておいたらなんと3日間!
1本3000円の原稿を仕上げるのに3日間ということは、日給1000円、当時かかっていた時間で時給換算すると100円ぐらいでした。

限られた時間なら就労可能

ところで、私は留学ビザ、就学用の滞在許可証でイタリアに住むことになったので基本的に仕事をして収入を得ることは認められていません。
ただし、学業がおろそかにならない範囲であれば、それが許されています。
いわば学生アルバイトのようなものです。

2024年現在、留学のための滞在許可証を持っている場合、週20時間までなら働くことができます。
年間労働時間としては1,040時間になり、これを超えると違法です。

ローマでは音楽や美術専攻の大学生がけっこういますが、彼らが日本料理店でアルバイトしているのもよく見かけます。
週に20時間なら、たとえば月~金に19時~23時まで1日4時間ほどレストランでホールのアルバイト……日本の学生と同じ感じじゃないでしょうか。

そして、この観点からすると、私は1本の原稿を書くのに1日10時間ぐらい働いてしまってますが、これはイタリア企業ではなく日本企業の仕事なので違法にはなりません。
日本でしかるべき税金を納めていれば、両国の法に則って就労が出来ていることになります。

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