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「《絶対》に縛られるな」
カレル・チャペック著・「絶対製造工場」を読んだ。
著者のカレル・チャペックは「ロボット」という言葉をはじめて作った人。
個人的に今まで読んできたSF作品で一番好きな小説。
まじで、圧倒的にダントツで面白い。
舞台は1940年代の欧州。
ある男が、わずかな燃料で膨大なエネルギーを放出する器械「カルブラートル」を発明する。
しかし、この器械はエネルギーだけでなく副産物として「絶対=人造神」をも解放してしまう恐ろしい器械だった。
「絶対」が作られ、「絶対」が溢れかえってしまった世界はどうなるのか?
を描いたSF作品。
もしかしたら、簡単なあらすじを読んでも
「絶対=人造神」を開放するってどういうこと?
「絶対」が作られるってどういうこと?
と思うかもしれないけど、
大まかな内容は、
人間が勝手に発明した器械が「絶対」となり、「絶対」が神格化し、
大衆が崇めるようになり、人を救い、
「絶対」がより絶対的な存在になっていく。
しかし、「絶対」がきっかけで争いが起こり
その争いにはカネ儲けや権力者の自己保身も絡んでいたりする。
といったもの。
俺はこの小説を読んで、
世界が「絶対」を作ることで、
人は「絶対」に縛られ、
さらに、「絶対」を求めて生きてしまう。
世界はこうやって作られているんだ。
と思い、世の中の見方が変わった。
例えば、お金だって「絶対」だ。
お金がないと生きていけないほど絶対的なものになっている現在、
確実にお金がもらえて安心できる「会社員」を多くの人が選ぶ。
そうすると、会社員も「絶対」になってしまう。
会社員じゃないと生きていけないと思ってしまうほど絶対的なものになった結果、
異常なブラック企業でパワハラクソ上司の下で働いていても辞めることができなくなる。
なぜなら、お金=会社員=絶対
だから。
そして、辞めたくても辞めれない状態が続き精神的に狂いだし自殺する。
もちろん会社や上司に責任はあるが、原因は「絶対」に縛られたことだ。
もう一つの例えは宗教だって「絶対」だ。
俺は神を信じていないからよくわからないけど、
宗教によって、救われる人はいると思う。
救われるから宗教が「絶対」になる。
良いことが起きた時には「絶対」である神に感謝し、
不幸が起きた時には「絶対」である神に祈りを捧げる。
だけど、今世界で起きている戦争は
キリスト教対イスラム教のように宗教戦争だ。
それってある人たちの「絶対」と違うある人たちの「絶対」が争っているってこと。
「絶対」と「絶対」が殺しあってるんだ。
人を救うはずの神同士が人を殺しあってるんだ。
どう考えたっておかしいだろ。
原因は、自分たちの「絶対」である神に縛られているから他の神は認められないんだ。
「絶対」に縛られることで全部が全部悪い方向に行くわけじゃないけど、
縛られたことで選択肢を無くしたり、人を殺し合うのは怖いことだなと思う。
信じているものは何でもいいけど自分の信じているものを他人にも強制させたり、
信じているものを一つだけにさせて他を見せないようにすることは人としてナンセンスだ。
そうならないために、柔軟な多様性を持つことだ。
人を見ないで信じているものだけで判断して差別する人間にはなりたくない。
自分の「絶対」は目の前の人の「絶対」ではないんだ。
お互いの「絶対」を認め受け止めることが大切なんだ。
縛られるな。
受け止める器を持て。
そう思える最高の小説だった。
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