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Ike
2021年3月5日 07:36
「あの日、みんなの祈りが通じたのかもしれない。」ふるさとに300年以上信仰されている尾崎神社がある。海の神様が祀られ、漁師を嵐から守ってくれていた。海から20mほど離れたその神社は、地域の象徴として愛されてきた。頂上には神殿がおかれ、伝統行事の度にお供えものがされてきた。建立から300年以上経った2011年3月11日、未曾有の大震災が起きた。気仙沼の松崎尾崎地区も大津波に飲み込まれた。高齢者
2021年3月4日 13:49
「あれ、くじらじゃない?」海岸で弟が言った。そんな訳ないと、ぼくはあしらった。「でも動いてるよ。」たしかに動いていた。あれは、本当にくじらだったのだろうか。今から150年前、この海岸にくじらがうち上がったことがあった。記録によるとくじらは約5トンもあった。朝から解体作業をして、正午過ぎまでかかったらしい。冷凍設備や輸送機関がなかったため、地域の人で食べたのだった。食べきれない分は、町に持ち込ん
2021年3月4日 13:46
「この上にお宝があるらしいぞ。」「行ってみようぜ。」そう言って丘をかけ登った。石段を駆け上がり、生い茂る木のトンネルを抜けた。頂上に近づいたときに弟が言った。「海だ!」漁港と海が一望できた。頂上には、小さい神殿と石碑があり、石碑には「くじら塚」と書かれていた。もちろん頂上にお宝はなかった。いつものぼくなら穴を掘って確かめただろう。でもその日は直感的にダメだと感じた。とても神聖な感じがしたのだ。そ
2021年3月3日 21:25
提灯に灯りがともり、音楽が鳴りはじめた。盆踊りがはじまる。「はまらいんやー。年に一度のお祭りだから。時を忘れて声をからそうよ。」みんなが唄って踊った。はまらいんや、といえば気仙沼で踊れない人はいない。幼稚園児から高齢者まで、みんなに愛されている踊りだ。意味は、「入りませんか。」つまり、一緒に踊ろうという意味だ。ぼくが暮らした地区でも、毎年盆踊りをしていた。8月になるとみんなで集まり、踊りの練習を
2021年3月2日 13:09
うだるような暑さだった。セミの鳴き声も耳障りだ。炎天下の中、僕は重い装束をきて、ゆっくりと行進していた。「さらーにー。さらーにー。」大人たちは呪文のような言葉を叫んでいる。僕はずっと思っていた、「せっかくの夏休みなのに、こんなの罰ゲームだ。」夏休みが明けて、一夏の思い出を話していた。「Ikeは何してたの?」と聞かれ、「大名行列」と答えた。「だいみょうぎょうれつ!?」と友だちが叫び、爆笑が起きた。
2021年2月28日 23:50
ぼくたちは、川をとびこえた。毎日飽きることなく飛んでいた。「あぶねぇぞー。」すれ違う大人に何度も注意された。それでもやめなかった。通学路には幅2mほどの小川が流れていて、毎日小川を飛び越えながら帰っていたのだ。川に入って魚を手づかみしたこともあった。下級生が川に落としたものを拾って、得意げになったこともあった。ある日、「うおぁーー!!」と叫びながら、友達が川に落ちた。もちろん、川に落ちることもあ
2021年2月21日 15:18
「いしやーきいもー、やきいもー。」この声を聞くと思わず駆け寄りたくなる。心地よい響き、香ばしい香り、おじさんの笑顔を感じるからだ。小学生だった私は、焼き芋屋とすれ違うと、無料で焼き芋をもらうことがあった。「小さいのだけど、タダでいいから。」と。焼き芋屋のおじさんは、商品にならなそうな小さな芋をくれた。そして後日、私は祖母の手を引き、焼き芋を買ってくれるよう頼むのだった。祖母が「いつもありがとう
2021年2月15日 23:38
<ご挨拶>どうも。ビジネスマンIkeです。毎日PCとにらめっこして、数字に追われている皆さん。あなたの人生は、ドラマチックで、キラキラしていますか??「私の人生は平凡です。」そんな人生でも、1ページを切り取って文字におこすと、そこにはストーリーがありました。みなさんの人生にも、素晴らしいストーリーがあると信じています。<前書き>2013年3月11日に、ふるさとを思って書いた文章で