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宝探し

「この上にお宝があるらしいぞ。」「行ってみようぜ。」そう言って丘をかけ登った。石段を駆け上がり、生い茂る木のトンネルを抜けた。頂上に近づいたときに弟が言った。「海だ!」漁港と海が一望できた。頂上には、小さい神殿と石碑があり、石碑には「くじら塚」と書かれていた。
もちろん頂上にお宝はなかった。いつものぼくなら穴を掘って確かめただろう。でもその日は直感的にダメだと感じた。とても神聖な感じがしたのだ。そして、木漏れ日や海を一望する景色に胸が踊っていた。
後日、父が神社について教えてくれた。あの丘には尾崎大明神という神社があって、海の神様が祀られていること。300年以上信仰されていて漁師を守っていること。
そして、くじら塚の物語についても話してくれた。150年前にくじら塚が作られたこと。漁港にくじらが打ち上がり、それを売って村に利益をもたらした記念碑であること。
その話を聞いて、お宝がないことが少し残念だった。ただ、あの丘がずっと大切にされてきた場所だと聞いて、妙に納得することができた。

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