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帰省するということ。2023.3.25-27
桜は、人は有り難がって酒を飲みながらそれを見たりするそうであるが、白く咲いたそれは、どうにも、咲き乱れ満開であるというよりも、ぼそぼそと、ぼやけているように見える。
物悲しい、侘しい、といった日常に纏わりつく感情が、並木道の上から散りゆく花弁となって降り注ぐような、そんな気さえする。
一昨日まで、旅行と呼ぶには個人的な、いわゆる帰省というものをしていたのであった。
飛行機で上空から見たり、国道沿い
コインランドリーと葡萄(短篇小説)
夏が終わり、秋も始まらない、その九月七日の午後に、西陽が部屋に入り込み、冷房をまだつけていて窓を開けていないのに、カーテンが少し揺れる、気がする。
君は朝起きた時、季節の変わり目の雨を見ながら、僕に、「洗濯物が溜まっているのよ」とだけ言った。僕は「コインランドリーに行ってくるよ。銭湯の隣の」と言った。君は「そのまま入ってくるの?」と言った。僕は少し迷って、
「それは贅沢すぎるな」
と言った。