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カフェインに賛成する記事と反対する記事を両方書いた結果から見える、人間の思考のクセ

最近、カフェインについて正反対の記事を2つ書きました。

カフェインを摂取しよう!というポジティブな記事と、
カフェインをやめよう!というネガティブな記事

両方読んだ方の中には、
「カフェインは敵なのか味方なのかどっちやねん!」
と思った人もいることでしょう。

結局どういうことなのか、この記事で解説していこうと思います。


●危険を煽る記事のほうが反応されやすい

左から、2つの記事のアクセス数、コメント数、スキ数です。

カフェインをやめたい人向けのネガティブな記事のほうがアクセス数が多いことがわかると思います。
特にスキ数が圧倒的ですよね。これだけカフェインやめたいと思っている人がいたんだ…

実は、この結果になるだろうことは見る前から予想できていました。
理由は以下の3つ。

1.人間は、利益を得ることよりも損失を回避する傾向がある
(プロスペクト理論)
2.人間は、自分が持っている意見を強化するための情報を集める傾向がある(確証バイアス)
3.人間は、事実を客観的に評価できない
(FACTFULLNESS)

要は、危険を煽った記事のほうが明らかに反応されやすいんですよね。
これを理解できているかいないかで、情報を集める力、情報を分析する力に天と地の差がでてくると思います。

インターネットによってあらゆる人が大きな声で発言できるこのご時世。
正しい情報とそうでない情報を見分けるスキルは個人的に必須だと感じています。

さて、カフェインについて2つの相反する記事を読んだ読者は、どのように情報を処理していけばいいのでしょうか。


1.人間は、利益を得ることよりも損失を回避する傾向がある(プロスペクト理論)

プロスペクト理論は、経済学者のダニエル・カーネマン、エイモス・トヴェルスキーによって提唱されました。
この2名は、2002年にはノーベル経済学賞に輝いています。

簡単に言うと、人間は、利益を得ることよりも損失を回避する傾向があるということなのですが、具体的にどういうことかというと、
1万円貰えるときの喜びよりも、1万円取られるときの悲しみのほうが大きい
のです。

これは何故なのでしょうか。
原始時代に遡って考えてみましょう。

「おなかすいたな、、、なかなか食べ物が見つからない。
あ、、こんなところに木の実が落ちている。
この木の実がもし食べられるとしたら、美味しい思いができて嬉しいし栄養も採れる。
でももし毒をもっていたら、お腹を壊すかもしれないし最悪命を落とすかもしれない…」

こんな状況で、「生存確率が高い行動」を選択できるように私たちは進化してきたのでしょう。
損失を強く見積もる性質を持つ種が生き残り、損失を軽く見積もる種は淘汰されてきたと考えられます。

さて、勘のいい人はこのプロスペクト理論とカフェインの話がどう繋がるのかお気づきかもしれません。

つまり、
カフェインによって得られる集中力などのポジティブな効果よりも、中毒などのネガティブな副作用を過大評価してしまう
と考えられます。

仮にカフェインによる効果を数値化できるとしましょう。
得られるリターンの期待値が100で、リスクの期待値が80だとしても、80を必要以上に大きく見積もってしまうのです。
完全に数字化できる経済学の中ですら合理的な行動がとれないので、カフェインのリスクを過大評価してしまうのも仕方ありません。

これがネガティブな記事に注目が集まった1つめの理由。



2.人間は、自分が持っている意見を強化するための情報を集める傾向がある(確証バイアス)

確証バイアスとは心理学用語で、無意識のうちに自分に都合のいい情報、自分の主張を後押しするような情報ばかりを集める傾向のことをいいます。

例えば、「あなたの両親は親切?」という質問をすれば両親が自分に親切だったエピソードを思い出そうとし、「あなたの両親は厳しかった?」という質問をすれば両親が自分に厳しくしたエピソードを思い出そうとすることがわかっています。
(下記は別の実験ですが、わかりやすくするために例を変えました)

選挙においても、自分の支持する政党が推進する政策に有利な主張、情報だけを読みたがるといったこともあります。

つまり、プロスペクト理論によって、「コーヒーにはリスクがある!」と”信じたがっている”人は、この確証バイアスによって、
「コーヒーにリスクがあると主張している記事」を探そうとすると考えられます。

これがネガティブな記事に注目が集まった2つめの理由。


3.人間は、事実を客観的に評価できない(FACTFULLNESS)

質問1
現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了しているでしょう?
A.20%
B.40%
C.60%

引用元:FACTFULLNESS 日経BP 2019年
https://amzn.to/2XaILB6

「統計的な事実ベース」の問題に、人間は非常に弱いです。
このような世界の環境や貧困問題に関する12問の質問を世界中の医学生、大学教授、投資銀行のトレーダー、ジャーナリスト、政治家などいろいろな人間に出題した人がいました。

結果は、平均正解数が12問中2問
質問は全て3択なので、チンパンジーが当てずっぽうに回答しても4問は答えられる計算です。
つまり、「統計的な事実」と「人間の認識」が著しくズレているということになります。
このことから、人間がいかに自分の使いたいものさしで世界を見ているかがわかるのではないでしょうか。

実際、
カフェインのポジティブな効果をまとめた記事で引用した論文の数は6個。
カフェインのネガティブな効果をまとめた記事で引用した論文の数は1個。

あえて差をつけてみたのですが、皆さんも「書かれていることが事実かどうか」よりも「文章の雰囲気やなんとなくの説得力」で信じてしまっていないでしょうか?

これがネガティブな記事に注目が集まった3つめの理由。

例えば、一時期流行った水素水のように、科学的に効果があるかわかっていないものを「なんとなく効果がありそうだから」という理由で購入する人が多かったですよね。

これもあくまでも傾向であって、「水素水には効果がない!」と言っている訳でも、「論文最高!論文を信じない奴はバカ!」と言いたい訳ではありません。
一見正しいような情報でも、「事実はどうなの?バイアスかかってない?」
と一歩引いて考えるクセをつけたいと筆者は考えています。


●「事実」を捉える目を磨く書籍3選

この記事を読んで少しでも行動経済学や心理学に興味を持った方は、おそらく筆者と気が合うのではないかと思います。

そんな方向けに、最後におすすめの書籍を紹介しておきます!
筋肉だけでなく、頭も鍛えていきましょう!笑

・ファスト&スロー
行動経済学の父でもあるリチャード・セイラーに影響を与えた、行動経済学の祖父とでも呼ぶべき(?)ダニエル・カーネマンの名著中の名著。
私たちの脳には本能を司る「システム1」と理性を司る「システム2」がいて、それらが協力し合い、時には悪さをしながら生きているというお話。
冗談ではなく、読んだその日から行動が変わります。

・影響力の武器
社会心理学者であるロバート・チャルディーニが書いた、こちらも名著中の名著。
今までに「断りづらいなぁ…」や「気付いたら引き受けていた」なんて経験をされたことはありませんか?この本ではそんな現象に隠れている原理や法則を、大きく6つに分けて紹介しています。
余談ですが、某外資系生命保険のトップセールスマンにお会いしたとき、この本に書かれていることを嫌味なく完璧に実践されていて驚きました。

この本は電子書籍版がないのだけが残念。。。
出版社さん、どうかお願いします。

・FACTFULNESS
スウェーデンの公衆衛生学者のハンス・ロスリングが書いた、「事実に基づく世界の見方」がわかる一冊。
記事中でも紹介しましたが、コロナ禍においては特に、統計的に数字を読み解いて行動指針にするスキルが非常に重要だと思います。

『FACTFULNESS』に関してはこちらのnoteも非常に良い記事だったので併せてぜひ!



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