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きのう、なに読んだ?

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日々読んだ本や長文記事などの、読んだ部分について紹介と感想をメモします。
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#読書感想文

日本語と英語、日本社会とアメリカ社会 | 『不機嫌な英語たち』(吉原真里)イベント | きのう、なに読んだ?

日本語と英語、日本社会とアメリカ社会 | 『不機嫌な英語たち』(吉原真里)イベント | きのう、なに読んだ?

旧友の吉原真里さんの著書『不機嫌な英語たち』刊行記念イベントのモデレーターをつとめました。めちゃめちゃ刺激的で面白かった!せっかくなので印象に残ったところを簡単にメモしておきます。

吉原さんはハワイ大学教授で専門はアメリカ研究、日本エッセイストクラブ賞を受賞した『親愛なるレニー』の著者です。学生時代からの旧友でして、今回のモデレーター役も大喜びでお引き受けしました。

『不機嫌な英語たち』は、日

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25年前に見えていた資本主義の未来|「文化資本の経営」|きのう、なに読んだ?

25年前に見えていた資本主義の未来|「文化資本の経営」|きのう、なに読んだ?

『文化資本の経営』は1999年に世に出た本だ。著者の福原義春さんは、1997年まで10年間、資生堂の社長をつとめ、その後も同社の会長、名誉会長であった。本書は絶版になっていたが、このたび復刻出版された。(私も推薦の言葉を寄せた。)

25年前の経営者が書いた本にいま、私たちが注目すべき理由はなにか?

25年前に提言されていたパーパス、ESG、人的資本いま本書に注目すべき理由、それは、パーパス、E

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身体、心、考え、言葉 | 「編めば編むほどわたしはわたしになっていった」(三國万里子) | きのう、なに読んだ?

身体、心、考え、言葉 | 「編めば編むほどわたしはわたしになっていった」(三國万里子) | きのう、なに読んだ?

三國真理子さんは人気のニットデザイナーだ。編み物の本を出版したり「気仙沼ニッティング」の商品デザインを手掛けている。その三國さんのエッセイ集「編めば編むほどわたしはわたしになっていった」の内容は、ニットとほとんど関係ない。新潟で育った子供の頃のエピソード、家族のこと、そして最近の暮らしのことまでがつづられているが、自伝とも違う。

三國さんは、記憶にある場面をショートフィルムのように読み手に見せて

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人生100年時代の社会に対する創意工夫  ("The New Long Life" 『LIFE SHIFT 2』リンダ・グラットン) | きのう、なに読んだ?

人生100年時代の社会に対する創意工夫 ("The New Long Life" 『LIFE SHIFT 2』リンダ・グラットン) | きのう、なに読んだ?

リンダ・グラットン&アンドリュー・スコットの新著「The New Long Life」を読みました。2016年に出版された「ライフ・シフト」(The 100-Year Life) の続編です。

「人生100年時代」というフレーズは、もはや目新しくもないほど、頻繁に耳にするようになりました。その発端となったのが、リンダさんたちの前著「ライフ・シフト」でした。リンダさんは2017年には安倍首相の諮問

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この状況は私たちに何を問うているのか(「夜と霧」) | きのう、なに読んだ?

この状況は私たちに何を問うているのか(「夜と霧」) | きのう、なに読んだ?

緊急事態宣言が出るのか出ないのかヤキモキしていた2020年3月末から4月上旬にかけて、「夜と霧」を読んだ。

ちゃんと読むのは初めてだ。これまで、本書の内容についてきく機会は数多くあったが、何となく手にとらずにいた。新型コロナウイルスの影響で外出を自粛するようになり、初めて自分ごととして読もうという心構えができたのだろう。

本書の前半では、収容所の過酷な様子、収容された人々が身体的・精神的に追い

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名もなき家事の最たるものは(「名もなき家事に名前を付けた」) | きのう、なに読んだ?

名もなき家事の最たるものは(「名もなき家事に名前を付けた」) | きのう、なに読んだ?

数ヶ月前、いつものように漫然とツイッターを眺めていたら、これが目に飛び込んで来て、思わず拍手喝采した。

ツイートを発信した梅田悟司さんは、コピーライターだ。育休取得中に「名もなき家事、多すぎ!」と実感し、それらに名前をつけることが「コピーライターである自分にできる、家事をがんばる人に対する最大限の敬意の示し方なのではないか。」と、名付けを開始。それらを1冊の本にまとめた。名付けた家事、70個。

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リーダーの行動は練習から(「0秒で動け」) | きのう、なに読んだ?

リーダーの行動は練習から(「0秒で動け」) | きのう、なに読んだ?

中竹竜二さん(日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター)と「ティール・ジャーニー・キャンパス」というイベントで一緒に登壇させて頂いた。そこで印象に残った中竹さんのことばに

「しっかりした会社は、『練習』と『試合』の区別がしっかりついている」

というものがある。スポーツとビジネスは違うと言うけれど、結構似てますよ、とスカッとおっしゃっていた。

伊藤羊一さんの「0秒で動け」は、1年以上

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『奇跡の職場』:「創意工夫にあふれた現場」には「徹底した規律」が必要な理由 | きのう、なに読んだ?

『奇跡の職場』:「創意工夫にあふれた現場」には「徹底した規律」が必要な理由 | きのう、なに読んだ?

JR東日本テクノハートTESSEI、通称「テッセイ」という会社がある。東京駅の東北新幹線ホームで列車を整列して待っているお掃除部隊の会社だ。テッセイは、ハーバード・ビジネス・スクールの教材となり、CNN, NHK など内外のメディアに取り上げられてきた。清掃という3K(きつい、汚い、危険)の職場だけれど、透明性と従業員のモチベーションを引き出す仕掛けがちりばめられ、7分で新幹線を清掃する技術と明る

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統計的正しさ、個人にとっての正しさ(「家族の幸せ」の経済学) | きのう、なに読んだ?

統計的正しさ、個人にとっての正しさ(「家族の幸せ」の経済学) | きのう、なに読んだ?

「『家族の幸せ』の経済学」を読んだ。母乳育児や保育園の「効果」についてデータで検証した本だ、とSNSで紹介されていた。それはまさに私の関心事ど真ん中だわ!と早々に購入してあった。

本書は「結婚、出産、子育てにまつわる事柄について、経済学をはじめとした様々な科学的研究の成果をもとに、家族がより「幸せ」になるためのヒントを紹介」している。「経済学は、人々がなぜ・どのように意思決定し、行動に移すのかに

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『モモ』は傾聴とリーダーシップの書だった | きのう、なに読んだ?

『モモ』は傾聴とリーダーシップの書だった | きのう、なに読んだ?

『モモ』を久し振りに再読した。

『モモ』を初めて読んだのは小6の時。中学入試の面接の待ち時間に読む本を買おうと、書店で偶然手に取ったものだ。以来約40年、大切にしてきた。今も本棚のトップポジションに置いてある。

この物語の世界では、人々はゆったりと生活を楽しんでいた。世間話をし、自然に親しみ、子どもたちは空想にふけっていた。しかし、時間泥棒がいつのまにか人々の間に忍び込み、「時間を節約して貯蓄

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