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岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅

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昨年まで現地の大学院に留学されていた俳優の岩澤侑生子さんが、台湾をぐるりと一周した旅の記録を綴っていきます。心の赴くまま、行き当たりばったりの旅をぜひ一緒にお楽しみください!
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カツオのたたきと日本人移民村(花蓮)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(12)

カツオのたたきと日本人移民村(花蓮)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(12)

台湾一周旅の最終日。ずっと台湾鉄道の車内から外を眺めて気付くのは、台湾の西側と東側では景観が全く違うこと。西側では人々の生活を感じる風景が続き、東側では自然のダイナミックさに圧倒される。移り変わる景色に一秒たりとも飽きることがない。

花蓮駅に到着。せっかく花蓮にきたのなら、美味しい海の幸を食べたいと思い、インターネットで検索すると、少し離れた場所にカツオのたたきが有名なレストランを発見。

時間

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猫だらけの民宿と、台湾原住民族の今昔(台東)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(11)

猫だらけの民宿と、台湾原住民族の今昔(台東)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(11)

いよいよ台湾一周旅行も終わりに近づいてきた。高雄、屏東を通過して、台湾の南東部・台東へ向かう。台東に近づくにつれて、車内から見える風景が自然の色味を増していき、人工的な音が消えていく。

電車に乗りながら今日の宿泊先を検索する。台東で宿が見つからなければ、このまま電車に乗ってもっと遠くまで行こう。どうしても見つからなければ、そのまま自宅のある台北に帰ろう。自分でもちょっとどうかと思うくらい、最後ま

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台湾フルーツの甘い誘惑とタパニー事件(台南・玉井、新化)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(10)

台湾フルーツの甘い誘惑とタパニー事件(台南・玉井、新化)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(10)

台湾は言わずと知れたフルーツ天国。そのなかでも毎年誰もが心待ちにしているのは、マンゴーの季節だろう。太陽のエネルギーを果実いっぱいに濃縮した台湾のマンゴーは格別だ。より新鮮なマンゴーが食べたい!と、台南駅から路線バスに揺られて1時間半強、マンゴーの生産地として有名な台南の郊外、玉井へ向かう。

まずは青果市場(台南玉井区青果集貨場)へ。マンゴー、バナナ、ドラゴンフルーツなど、色とりどりの新鮮な果物

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文学に包囲されながら牛肉スープをすする(台南・葉石濤文学記念館、国立台湾文学館)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(9)

文学に包囲されながら牛肉スープをすする(台南・葉石濤文学記念館、国立台湾文学館)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(9)

台湾の大学院に在籍していたとき、よく学部の講義を聴きにいった。学生数の多い総合大学だったので、講義数が多く、あれこれ欲張った結果、気づけば週5日で学校に通っていた。

自分より一回り以上年下の台湾人学生にまぎれて分からない言葉をメモし、黙々と辞書を引いた。ときおり台湾語がまざり、その都度笑いが起きた。台湾に住んでしばらく経つのにこんな簡単な言葉も分からないのか、と絶望することはなく、ただその場にい

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狭き門をくぐって占い師とお茶する(台南・窄門珈琲)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(8)

狭き門をくぐって占い師とお茶する(台南・窄門珈琲)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(8)

台湾で「ちょっとどこかへ旅行しようかな」と口にすると、必ずといっていいほど名前があがる、台南。台湾人の友人たちは週末に時間ができるとよく台南に旅行する。台南には台湾の歴史が詰まっている。オランダ、鄭成功、清国、日本、そして現在に至るまで、幾層もの歴史が色濃く残る都市。行き当たりばったり旅6日目、台湾人が愛する台南に降り立った。

ホテルを出て太陽がギラギラ照り付ける台南の街を歩く。最初に目に留まっ

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姉妹鉄道は続くよどこまでも(阿里山森林鉄道十字路駅)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(7)

姉妹鉄道は続くよどこまでも(阿里山森林鉄道十字路駅)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(7)

奮起湖の朝。清々しい山の息吹とまばゆい光を放つ太陽を身体いっぱいに浴びる。絶好の散策日和だ。前方に広がる山並みを見渡しながら「阿里山はどの山?」と聞くと、阿里山は特定の山ではなく、台湾中南部にある玉山の西側エリアのことで、この辺一帯が全て阿里山なのだという。いつの間に、阿里山にいたなんて!

宿に隣接している奮起湖老街を女の子と歩く。「南台湾の九份」とも呼ばれる奮起湖老街は、台湾でもっとも標高が高

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台北で髪を洗ってくれた台湾人女子と雲海を抜けて再会する(嘉義・奮起湖)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(6)

台北で髪を洗ってくれた台湾人女子と雲海を抜けて再会する(嘉義・奮起湖)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(6)

その女の子と初めて会ったのは、台湾生活のなかでも特に憂鬱な一日、修士論文の口頭試験の前日だった。順風満帆とは言えなかった大学院での研究の大きな区切りを目前に控え、少しでも楽な気持ちになりたくて美容院に入った。

席に座ると、髪を明るく染めた小柄な女の子が担当になった。髪を洗ってもらいながら、無事に卒業できたら台湾一周旅行にでるつもりだと話すと、「私の恋人の家族が奮起湖で民宿を経営していて、私もその

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宮原武熊の元邸宅で不老の夢をみる(台中)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(5)

宮原武熊の元邸宅で不老の夢をみる(台中)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(5)

台湾鉄道の台中駅近くに「宮原眼科」という煉瓦造りの建物がある。ここは元々、日本統治時代に日本人医師が開業した眼科医院だった。2011年末にパイナップルケーキで有名な日出グループが、しばらく使われていなかったこの建物を店舗に改装した。開放感のある吹き抜けの店内は、まるで絵本の世界に迷い込んだかのようだ。

3日間宿泊した台中から次の目的地に移動する日、たまたま通りかかった「不老夢想125号」という建

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夢見る汽車を横目にタイムスリップ(彰化・鹿港)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(4)

夢見る汽車を横目にタイムスリップ(彰化・鹿港)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(4)

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彰化名物のバーワンのお店から、徒歩で彰化扇形車庫へ向かう。ここ彰化には、日本統治時代に建造された扇形の車庫がある。ちょうどこの年は、彰化扇形車庫が運用され始めてから100年を迎えた記念の年だった。

扇形車庫は、車体の角度を変える転車台(ターンテーブル)を真ん中に置いた車庫、長旅を終えた機関車のおうちだ。1922年に6両の蒸気機関車が入る格納庫として建造され、その後

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バーワンを齧りながら台湾新文学の父に思いを馳せる(彰化)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(3)

バーワンを齧りながら台湾新文学の父に思いを馳せる(彰化)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(3)

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台中駅から台湾鉄道に乗っておよそ20分、台中に隣接する彰化に到着した。彰化駅は台湾鉄道の山線と海線の終着点。この旅で初めて降りた竹南駅から分岐した山線と海線が、ここで交差する。

駅の構内で「洪瑞珍」のお店を見つけたので、サンドイッチを購入。日本にもファンが多い「洪瑞珍」は、元は彰化で創業されたお店。ほんのり甘みを感じるサンドイッチは、シンプルなのに一度食べたらやみつきにな

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黄金に輝く巨大仏とともに、日本と台湾を繋ぐ鐘の響きを想像する(台中)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(2)

黄金に輝く巨大仏とともに、日本と台湾を繋ぐ鐘の響きを想像する(台中)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(2)

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移動しながらスマホで宿を検索すると、台中に清潔で値段も手ごろな宿を見つけた。台中を拠点にして行ってみたい場所がいくつかあったので、思い切って3日間連泊することにした。9日間のスケジュールの三分の一をひとつのエリアで過ごそうとするあたり計画性の無さが出ているけれど、この選択は正解だった。

宿に到着してテレビをつけると、米国連邦議会のナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪問すると

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適当に降りた見知らぬ街で、日本統治時代の建物と出会う(苗栗・竹南)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(1)

適当に降りた見知らぬ街で、日本統治時代の建物と出会う(苗栗・竹南)|岩澤侑生子の行き当たりばったり台湾旅(1)

2022年夏、台湾がゼロコロナからウィズコロナ政策に向けて動き始めたころ、修士論文の口頭試問を終えた私は、ひとり台湾鉄道に乗り込んだ。

論文のテーマは日本統治時代の台湾。審査員の先生から「資料だけを読むのではなく、自分の足を使って論文を書いてください」とアドバイスを受けて、論文の最終提出前に、過去の記憶が色濃く残る台湾を一周することにした。

日本の九州ほどの大きさの台湾は交通手段が豊富だ。電車

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