文章を書いています。

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記事一覧

陰謀論的夏のわくわく

「何かの気配がする」 夏の間中、私の心はそのような曖昧な言葉とわくわくで響き渡っている。 夏という季節は、隠蔽の気配に満ち溢れていと思うのだ。 家を出る。すると…

瞳
1か月前
9

1UP毎日

この間散歩をしていたら、愉快な男子中学生を見た。 その日、私は川沿いを歩いていた。 川幅は5メートルくらいで、流れは穏やか。深さはくるぶしくらいだろうか。これぞ…

瞳
2か月前
11

カレーの灯火

そのアパートでは、毎晩必ずカレーの匂いがしていた。 私が小さい頃に住んでいたアパートは、白タイル張りの長方形に、各階4世帯ずつ家庭が押し込まれている、いたって…

瞳
3か月前
17

机上の街

私の部屋の机は、割と汚い。 机の大きさに対して、モノが多すぎるのだ。 大体右端には積読がいくつも積み積みしてあって、階層ごとに角度が少しずつズレた、前衛的な建築…

瞳
4か月前
11

靴の中

平日の昼間の電車って、ちょっと不思議な空間だと思う。 私はよく電車を利用する生活を送っているのだけれど、普段乗るのはいわゆる「通勤ラッシュ」の時間帯だ。 通勤や…

瞳
6か月前
10

私について

生息しているサイトのURLをまとめました。 ○カクヨム 短編小説やエッセイや詩集がいくつかあります。 ○note ゆるいエッセイを書いています。 ○BOOTH 詩集の販売を…

瞳
6か月前
17

シークレット天窓

最近、よく使う駅の構内に、天窓がついていることを知った。 その駅は人通りが比較的多い、乗り換えの中継地点になるような駅だった。 毎日コンコースに次々人が現れては…

瞳
7か月前
9

個性的プリン

この間、実家の冷蔵庫を開けたらプリンがあった。 瓶に入っているようなものではなく、スーパーやコンビニでよく見かける、プラスチックパック三個セットのプリンだった…

瞳
8か月前
11

ティッシュというブラックボックス

箱ティッシュって、使いやすい。 ティッシュという難儀な物体を箱から引き出すたび、そんな風に思う。 ティッシュは人間が扱うには、薄すぎると思うのだ。 広げれば向…

瞳
9か月前
13

鳥人間

この間、大阪の街を歩いた。 私が歩いたのはいわゆるビル街で、スーツを着た大人や、黒光りのタクシーや、キリッとした髪型の大人たちがたくさん歩いていた。 子供は全然…

瞳
11か月前
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陰謀論的夏のわくわく

陰謀論的夏のわくわく

「何かの気配がする」

夏の間中、私の心はそのような曖昧な言葉とわくわくで響き渡っている。

夏という季節は、隠蔽の気配に満ち溢れていと思うのだ。

家を出る。するといたるところでセミが鳴いている。

どこへ行っても何をしていても、私の歩行は蝉の声で埋め尽くされてしまう。

これではセミの大合唱の裏で何かがひっそりとささやき合っていていても、気付くことができない。

外を歩いてみる。道にはいつも以

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1UP毎日

1UP毎日

この間散歩をしていたら、愉快な男子中学生を見た。

その日、私は川沿いを歩いていた。

川幅は5メートルくらいで、流れは穏やか。深さはくるぶしくらいだろうか。これぞ小川、というような、大変川らしい佇まいの川だ。

小さな川ではあるが、向こう岸に渡れるように、ところどころ小橋が架かっている。

が、部活を終えて帰宅中と見られるその彼は、あえてその橋を渡らず、水面から顔を出している小さな岩々に向かって

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カレーの灯火

カレーの灯火

そのアパートでは、毎晩必ずカレーの匂いがしていた。


私が小さい頃に住んでいたアパートは、白タイル張りの長方形に、各階4世帯ずつ家庭が押し込まれている、いたって普通のアパートだった。

近くに小学校がある立地だからか、同じくらいの年の子がたくさん住んでいて、当時そこに入居していたのは子育て世代ばかりだった。

私の住んでいた部屋は一番奥にあった。だから必然的に家に帰るまでいくつもの部屋の前を

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机上の街

机上の街

私の部屋の机は、割と汚い。

机の大きさに対して、モノが多すぎるのだ。

大体右端には積読がいくつも積み積みしてあって、階層ごとに角度が少しずつズレた、前衛的な建築物のようになっている。

その奥にはスマホの充電器やエアコンのリモコンが微弱な電波を発する化学施設のようにカクカクと配置され、その右隣には白いふわふわのカバーに包まれたティッシュが雪山のように鎮座する。

ティッシュ山の左側の花瓶には大

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靴の中

靴の中

平日の昼間の電車って、ちょっと不思議な空間だと思う。

私はよく電車を利用する生活を送っているのだけれど、普段乗るのはいわゆる「通勤ラッシュ」の時間帯だ。
通勤や通学など、乗客の個人情報を深く知らなくても電車を利用する目的が一目でわかるような時間に電車をよく使う。

だからお昼間の、目的を隠した乗客(もちろん本人たちにはその気がないだろうけれど)の割合が圧倒的に多い車内は、なんだか不思議な空間に感

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私について

私について

生息しているサイトのURLをまとめました。

○カクヨム

短編小説やエッセイや詩集がいくつかあります。

○note

ゆるいエッセイを書いています。

○BOOTH

詩集の販売をしています。

○X(Twitter)

主な発信はXで行っています。

○Instagram

画像を投稿しています。

【私について】
こんにちは。瞳です。
詩を中心に文章を書いています。
公募では村沫瞳名義で活

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シークレット天窓

シークレット天窓

最近、よく使う駅の構内に、天窓がついていることを知った。

その駅は人通りが比較的多い、乗り換えの中継地点になるような駅だった。

毎日コンコースに次々人が現れては、川みたいにひっきりなしに改札口へと流れ込んでいる。そして滝みたいにホームに向かっていく。みんなそれぞれの目的地を保有したまま思い思いに漂流していく。駅はなんだか巨大な流れるプールみたいだ。

駅に向かうたくさんの人たちが、流れるプール

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個性的プリン

個性的プリン

この間、実家の冷蔵庫を開けたらプリンがあった。

瓶に入っているようなものではなく、スーパーやコンビニでよく見かける、プラスチックパック三個セットのプリンだった。

三個のうち二個が既に食べられた状態で冷やされている。一つだけ残されたプリンと、ビリビリに破けた薄い透明のビニールと、プリンの底の型がついた、長方形の台紙があった。

きっと私より先に家に帰った家族の誰かが食べたのだ。

冷たく

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ティッシュというブラックボックス

ティッシュというブラックボックス

箱ティッシュって、使いやすい。

ティッシュという難儀な物体を箱から引き出すたび、そんな風に思う。

ティッシュは人間が扱うには、薄すぎると思うのだ。

広げれば向こう側が透けてしまうほどの薄さ。昔はこれをスカートの生地にしたら光の加減が綺麗だろうなぁとか考えていたが、雨の日なんかは大惨事になること間違いなしの発想である。私は思いつくとなんでもやってみたくなる「やってみたがり病」に罹っているの

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鳥人間

鳥人間

この間、大阪の街を歩いた。

私が歩いたのはいわゆるビル街で、スーツを着た大人や、黒光りのタクシーや、キリッとした髪型の大人たちがたくさん歩いていた。

子供は全然いなくて、まるで年齢制限のある街みたいだった。

都会での歩行は、なんだか落ち着かない。それは、都市には強い「流れ」が敷いてあるからだと思う。

たくさんの車や人間が常に決まった方向に流れていて、見えないけれど、道には川みたいに流れが生

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