記事一覧
『徐々に部屋を暗くして入眠、バスタオルは干す前にピシッ。白米は少し硬めに炊いて、たわいもなくサミる。』
電話で話すことをパートナーとの間で「サミる」と呼称している。
語源は、付き合う前から「今日の夜、寝る前にサミットしようよ」と電話をする約束を取り付けていたことにある。次のデートでどこに行くか話し合ったり、当時パートナーが抱えていた悩みをどのように解決していくか一緒に作戦を考えたりしていたので、我々にとってその時間は"サミット"と言っても決して過言ではなかったのだ。ちなみにいつの日からか「サ
『やけセブンティーンアイス』
通勤で利用している職場から最寄り駅の改札を出たところに、セブンティーンアイスの自動販売機がある。夏の時期に残業で帰りが遅くなった時は、吸い寄せられるようにしてそこでアイスを買ってしまうことが多いのだが、(まんまと江崎グリコ株式会社 御中の手のひらで踊らされている)それは決して頑張った自分へのご褒美だとかそのような優雅で余裕のあるものなんかではなく、クタクタな身体への糖分摂取とまだ半押し状態で
『スパイ疑惑におののいてビトイーン』
栄に引っ越してきてから近所にずっと気になっているこぢんまりとした八百屋があったのだけれど、ずっと足は遠のいたままだった。引っ越してきた当初から既に日用品や食品の買い物は、近隣のドラッグストアや隣町のスーパーマーケットまで出向くことが定着していたし、その八百屋が日曜日定休で土曜日しか行けるチャンスがなかったためである。しかし、引っ越してきてこの一年半の間、明らかに時代錯誤かつ異彩を放っているこ
もっとみるDUSTY-I / 『DUSTY』 リリース記念インタビュー
「綺麗じゃないが汚くもない」
今作『DUSTY』をその名の如く「埃っぽくて泥臭い」と形容し、自分自身を曝け出したアルバムであるとも本インタビューで語っているDUSTY-I。
アルバムを聴けばそのラッパーとしての地力の高さは一目瞭然だが、そこに魅せられた充足感だけに飽き足らなかった筆者は、作品の随所に確かに垣間見えるこだわりにもっと踏み込むべく、今回このインタビューを敢行した。
本インタ
『Dragon Ashが流れると気後れしてしまう』
同世代の友達の車のBGMでふとDragon Ashが流れると、どうしても気後れしてしまう。Dragon Ashがオリコンチャートを賑わせていたのは中学生の時で、年齢的に恐らくど真ん中の世代に当たるからこそ「当時、熱心に聴いていなかった」その呪縛は、より色濃くなってしまうのだろう。
「懐かしい」と遠い目をしている運転席の友達の横で「う、うん」と、連れない相槌を打ってきまりが悪そうにしている自分。
『全てへ捧ぐ愛はない』
五年ほど使っていた腕時計を失くした。スポーティーでタフなアナログ式の黒色のG-SHOCKで、気取らずに身につけることができていたのでオンオフ問わず何かと重宝していた腕時計だった。「必要なくなったものは自然と離れていく」みたいなことをどこかで聞いたことがあるけれど、仮にその法則に当てはめるのなら、これは「時間に縛られるな」とか「生き急ぐな」という天からのメッセージなのだろうか。心当たりがないことも
もっとみる『一行も書き進めることができていなくても』
仕事から帰ってただ疲れて眠るだけの日々が続く。酷い時などは、帰宅してそのままジャケットも脱がずにソファで眠ってしまっている。そのような時は結局、電気も点けっぱなしなままのため夜中に目が覚めてしまうという悪循環を連日繰り返している。台所に溜まっていく数日分の洗い物を今日も片付けることができず、何とか回すだけ回して結局干すところまで辿り着けていないタオル類の山が洗濯機にはぶち込まれたままだ。
『いっていた年きていた年』
目が覚めたら夜中の2時だった。年越しで起きていられなかったのなんて、いつぶりだろう。また今年も一年が終わろうとしているこの今の気持ちを書けるのは今しかなく、それを書きたいと思って夕方から筆を取ったものの寝不足で頭がボーッとして全く言葉が出てこなかったので、少し眠ることにした。すると、この十二月の忙しさがフラッシュバックするかのような仕事の夢を見てうなされ、更には胃から喉元までムカムカと迫
『心ここにあらず 今を生きたく』
「何か、おじいちゃんと話してるみたい」
最後に映画館で観た映画を聞かれて「何だったっけなぁ」と即答できないでいると、助手席の君はそう面白がるようにして笑った。ようやく一年以上前に『竜とそばかすの姫』を映画館で観たことを思い出したものの『そばかすと竜の姫』と言い間違えてしまい、君は「竜とそばかすの姫でしょ」とそれを訂正した。電話で何度か話した時も、そうやって何か聞かれたことに対して「何だった