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『明日から仕事始めです』

『明日から仕事始めです』

 今年も、一瞬にして年末年始の休みが終わろうとしています。「これはもはや時空が歪んでやいまいか」と思うほどにそりゃもう一瞬のできごとで、地元に帰って過ごしたこの約一週間は、ひょっとして夢だったのではないかと。何か『千と千尋の神隠し』の最後の千尋です。ということで、すっかり陽が暮れた帰りの電車の中で、このどうしようもねぇメランコリックと友達以上恋人未満という複雑な関係。はぁぁぁ、楽しかったなぁぁぁ。

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『いっていた年きていた年』

『いっていた年きていた年』



 目が覚めたら夜中の2時だった。年越しで起きていられなかったのなんて、いつぶりだろう。また今年も一年が終わろうとしているこの今の気持ちを書けるのは今しかなく、それを書きたいと思って夕方から筆を取ったものの寝不足で頭がボーッとして全く言葉が出てこなかったので、少し眠ることにした。すると、この十二月の忙しさがフラッシュバックするかのような仕事の夢を見てうなされ、更には胃から喉元までムカムカと迫

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『トートバッグに目がない』

『トートバッグに目がない』



 マイブームや好きなものの一つとして急浮上してきていることを認めざるを得ないのが、トートバッグの存在である。所持しているトートバッグが増えてきたので改めてその種類を確認してみたところ、バナナレコードの特典や先日出品した文学フリマのノベルティでいただいた物も含めて現在八種類のトートバッグを所持していることが発覚した。内六種類は自発的に購入していることからも、やはり自分自身がトートバッグに目が

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『Re: 背番号1』

『Re: 背番号1』

 中日ドラゴンズの福留孝介選手が現役を引退した。

 本格的に熱を入れて中日を応援するようになった九十九年がちょうど福留のルーキーイヤーで、そのはつらつとした思い切りの良いプレーとスター性を秘めたフルスイングに当時小学六年生だった筆者が心を鷲掴みにされたのは必然のことだった。遊撃の守備で失策をしでかしてもバッターボックスで豪快に三振したとしても、やはり当時から福留は華のある選手だった。

 そ

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○○男

○○男

[紅生姜男]

 牛丼を食べた後にセルフサービスの紅生姜で締めがちです。空になった丼に紅生姜だけを盛りつけて、シャキシャキと楽しみます。口の中にパーッと広がる梅酢の爽快な酸味にすっかり病みつきなのです。もはや、潜在意識の中で紅生姜もお目当てに牛丼屋へ寄っています。イッツベニショウガタイム。


[白TとロンT着れない男]

 白Tが合わせやすいのは先刻承知のことです。でも、すぐに汚れが目立

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『Yuukyuu !!』

『Yuukyuu !!』

 久々に有給休暇というものをまともに取得した。転職後、有休の権利を得てから行きたかったライブのために有休を取ったはずがコロナに感染し、結果的に療養のための有休となってしまった。ちなみにその後にも午後半休を一度取得したが、それもコロナで仕事を休んだ期間の傷病手当の申請のためだった。しかもその時期には管理ポジションに就くことになったので業務量及び責任が増してしまい、気づいたら有休が取りづらい立ち場にな

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『重い腰』

『重い腰』



 何かを後回しにしたり、やろうと決めたことが見事に続かなかったりする度に、自分自身に対して嫌気がさしてしまう。
 
 袋麺のアレンジレシピや洗濯物の合理的な干し方を調べて生活を少しでも豊かにしたいとは常々思っているし、インスタでお気に入りに保存しまくって凄い数になっているレシピだってそのうち作ってみようとは思っている。もう何ヶ月も前から部屋の隅でそのままになっているダンボールの山を捨てるた

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『バタースプーンの魔術師』⁡

『バタースプーンの魔術師』⁡

 今住んでいる賃貸マンションに引っ越してもうすぐ一年が経過しようとしているわけであるが、この間にバタースプーンを既に二本紛失している。しかも、そのバタースプーン二本とも共通して洗った後にキッチンに元々備え付けられている水切りラックで乾燥させておいたのを最後に消息を経っており、不可解極まりない。この決して広くない1Kの一室でバタースプーンを二本も紛失してしまうなんて我ながらどうにも信じがたく、もはや

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移動フェチ

移動フェチ

 移動フェチであることをここに告白する。

 二十代後半にバックパッカーの真似事で東南アジアとインドを旅行した時、節約のために長距離バスや列車を利用する機会が幾度となくあり、丸一日掛けて移動することもざらにあった。しかしそのような時もそれを憂鬱に感じるどころか「今日は移動日だ!」と内心テンションが上がっていて、どこかで寺院や遺跡を見飽きてしまっている自分自身に対する罪悪感と強迫観念に苛まれていれ

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地に足をつけたい時にカネコアヤノを聴く

地に足をつけたい時にカネコアヤノを聴く

 カネコアヤノが好きだと公言していたら「ぶっちゃけ顔でしょ」と揶揄されたことがある。確かにそのルックスも魅力の一つであることに違いはないけれど、むしろ惹きつけられるのはその外見と歌っている時とのギャップだ。偶然YouTubeでライブ映像を初めて観た時、強面や長髪の男性たちの真ん中で、色白かつ華奢な黒髪のボブの一人の女性がエレキギターをかき鳴らしながら、時折鋭い眼光で歌っているその姿を見た時の衝撃は

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『始めてゆく』

『始めてゆく』

 仕事で管理ポジションに新しく就き、慣れない業務に加えてちょうどそのタイミングと重なって受注数が一気に増え、初日から目の前のタスクをこなすことで精一杯な日々が続いた。帰ってから自炊する余力はとてもではないけれど残っておらず、吉野家やすき家に寄って帰宅すると22時とか23時で、風呂に入って一息つこうとソファに座ってスマホを触っていると、そのまま寝落ちしているような一週間だった。そして、その心身の余裕

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練習は本番のように 本番は練習のように

練習は本番のように 本番は練習のように

 出番前のステージ裏で胸に手を当ててみたら心臓の鼓動が明らかに高鳴っているのが伝わってきた。何度か深呼吸をして「練習どおり」と自分自身に言い聞かせる。こんなに緊張するのはいつぶりだろう。しかし、この緊張状態の中でも早くマイクを掴んで歌いたくてウズウズしていた。リハーサルである程度の手応えを掴んでいたし、またそれはひとえに、ライブ当日も含めて計3回スタジオ練習をしたことや夜寝る前に歌い込みをするなど

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LINEスタンプにて時代錯誤

LINEスタンプにて時代錯誤

「失念防止のため、なにかスタンプ貰っていいですか? 明日まで未読にしておきます」

 保険会社の担当とLINEで手続きのやり取りをしていた時にそう言われ、思わずスマホの前で頭を抱えてしまった。これまでLINEスタンプを使うことから目を背け続けてきた心当たりならある。おかげでLINEでのやり取りを上手く切り上げることができず、結果的にどちらかが既読スルーしてやり取りが終わってしまうことが多々ある。

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ディンゴ

ディンゴ

 プロ野球シーズン開幕前のこの時期が好きだ。
 キャンプやオープン戦では熾烈なポジション争いが繰り広げられる中、どのチームのファンも好き勝手に先発ローテや開幕スタメンなどを予想して「今年はウチが優勝」と胸踊るのが開幕前というものではないだろうか。

 我らの中日ドラゴンズが99年にリーグ優勝を果たした翌年、リーグ連覇と日本一の奪還、そして強竜打線復活の鍵を握る男が入団した。その男の名は、ディンゴ。

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