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塔浪記〜或いはマサイの奮闘記〜

念願叶って太陽の塔の中を観た。

高校生の時にBOOKOFFにて百円で買った『自分の中に毒を持て』を読んで以来すっかり岡本太郎の虜である。

上京したての頃は、
TAROフリークの友人と共に “TAROめぐり”と称して関東各所にある岡本太郎ゆかりの地を巡ったりもした。

“芸術は爆発だ!”が最も有名な岡本太郎の言葉だが、僕が好きなのは“字は絵だろ”である。

“字は絵だと思う”
みたいなどこぞの広告みたいな無責任な言葉じゃなくって理不尽なまでに言い切っちゃうその強さに惚れる。

岡本太郎の作品には、生命の発露みたいな強烈なエネルギーをビリビリと感じる。
僕はそれに触れるたび「必死に生きろ!」と叱られたような気持ちになってハッと目が醒める。

太陽の塔は昨年春に
約40年ぶりに一般公開された。

それで、今年の夏にようやく
京都への帰省の合間を縫って
行けることとなった。

中には『生命の樹』と呼ばれる作品が
一部を除いて当時のままに展示されている。

真っ赤なセンセーショナルな空間に
圧倒され、そして階段を上りながら
人類の進歩を感じとってゆくアートに
感動を受けないわけがない。

しかし、結論から言うと
あまりよく分からなかった
というのが本音ではある。

1時間ごとの完全予約制という
こともあって社会科見学みたいな感じで
楽しまなければならない。

これではいつものビリビリを
感じるには難しいものがある。

何度も通ってじっくり見つめて、
何かが分かるような作品であった。

ようやく何かを感じることが出来たなら、
その時はまたその心をどこかに書き留めたいと思う。

その代わりと言っては何だが、
同じ万博公園内にある民族博物館の
話をしようと思う。

僕は大学で文化人類学を学んでいる。

理由は、岡本太郎がパリで芸術と
共に民族学を学んだことがのちの人生に
大きな影響を与えたという記述を
読んだことにある。

だから、“民族”なんてフレーズには
ある種のフェティシズムみたいに
体が勝手に反応してしまう。

1時間足らずで太陽の塔を追い出された僕は、
そのままの流れで民族博物館へと立ち寄った。

まぁ、ここが途轍もなくすごい。
世界各国の民族に関するありとあらゆる資料が集められている。

オセアニアにはじまり、
世界をぐるりと日本海まで。

1日かけても観きれない
くらいの充実っぷりである。

まず入り口側にある
映像資料の充実が半端ではない。

数週間かけて観るような
膨大な量の映像が収められている。

僕は何の気なしに、
マサイ族の豊作祈願の祭りに
関するビデオを観た。

これがなかなかに
ショッキングな内容であった。

映像は十数人のマサイの男たちが牛を取り囲み、その牛を窒息死させるところからはじまる。

そして、生き絶えた牛の首元を描き切って血溜まりの中に蜂蜜酒を混ぜてそれを村長が手を使わず飲む光景が映し出さる。

次に女性たちが牛のフンでサークルを作り、その中に牛のミルクを注ぎフンとミルクの池をつくる。

そして、その池の水を村長が村人たちの首元や腕などに付けるという儀式が行われる。

その後も先ほど殺した牛を村長が村人に食べさせたり、男たちがいかに高く飛べるかを競い合ったりと様々な儀式が執り行なわれる。

中でも興味深かったのは、
ケニアの中心部に住むクリスチャンが
マサイの村に街宣カーに乗って現れ、
「野蛮な祭りはやめろ!」と抗議をする。

そして、その車をマサイの男たちが
取り囲んで追い出すというシーンであった。

たしかに、普通に考えればこの
祭りは奇祭と呼ばれる類になるだろう。

しかし、野蛮と呼ばれる文化にも
しっかりと意味があって成り立っている。

例えば、
この祭りの象徴である牛は、
マサイ族にとっての主食である。

その肉も生き血もミルクも。

だから、それを食し、体に塗ることで感謝を表しているのだ。

その後も祭りはつづく。
今度は家内の安全を祈るために、
家中の椅子の脚を紐で縛る。

これは、「生活の安定」を意味するらしい。
ほらね、ちゃんと「勝つためにカツ丼食う」みたいにゲンを担ぐようなことをしているのだ。

野蛮と感じるのは、
自分の習慣と違うという
理由だけかも知れない。

無意味なようでそこに意味がある、
カオスなようでそこに秩序がある。

ケスクセクモアも、
丁度そんな作品に仕上がっている。

今日は青汁の宣伝みたいに
上手くいったかもしれない。

中川裕喜

P.S.
祭りの締めに行われる
村長が口に含んだ蜂蜜酒を村人に
毒霧みたいに吹きかける儀式は
どういう意味があるのかさっぱり
分からなかった。

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安住の地 第4回本公演
音楽劇『Qu’est-ce que c’est que moi?(ケスクセクモア)』

構成・演出:岡本昌也
音楽:バカがミタカッタ世界。

【公演日時】
2019年9月
13日(金)19:30
14日(土)14:00 / 19:30
15日(日)13:00 / 18:30
16日(月・祝)11:00 / 15:30

【会場】
THEATRE E9 KYOTO
住所:京都府京都市南区東九条南河原町9‐1

【チケット料金】
一般 3,000円 / U-25(25歳以下) 2,500円  ※当日料金+500円
高校生以下1,000円(前売・当日料金一律)
※受付にて学生証か年齢のわかるものをご提示ください。

https://ticket.corich.jp/apply/99747/
ご予約はこちらから。

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