アンディ(安藤英明)

1957年生 牡牛座 東海大学工学部卒。トラック運転手~米国半導体関連会社~キリンビ…

アンディ(安藤英明)

1957年生 牡牛座 東海大学工学部卒。トラック運転手~米国半導体関連会社~キリンビールを経て起業。PQB japan株式会社代表取締役 https://www.pqb-japan.co.jp/ 好きなこと…アマチュア無線、作詞作曲、小説書き、少林寺拳法、バイク

記事一覧

真珠のピアス

 昭和50年代の東京、若者たちの人生が足早に駆け抜ける青春ストーリー。強さと自由を求めて走り抜けるオートバイの疾風の後に香るロングピースの煙とカストロールの焼け…

短笑物語”究極の歯の磨き方”

”究極の歯の磨き方”  プッツン・バイオ株式会社の開発部長A氏は、夕食後いつものようにウィスキーのビール割を飲みながらテレビを見ていた。 「そっか、この番組のテ…

日常の切り取り”仕事帰り”

仕 事 帰 り 仕事を終え、自宅の最寄駅に着いたのは午後7時半。 改札を出て、右側の階段へ向かう途中、小さな女の子らしき声を聞いた。 「待ってぇ…ぇぇぇ」 涙の色に…

日常の切り取り”心のビブラート”

心 の ビ ブ ラ ー ト 人生を変える一言はそこら中に転がっている。 それは通りすがりの誰かが発した何気ないセリフかもしれない、 汚ない電柱に貼られたビラに書かれた…

短笑物語”不審な人物”

不審な人物 週末C氏の上司の壮行会が、東京銀座で行われた。 普段は生麦駅周辺で飲むことの多いC氏にとって、久しぶりの気晴らしになったようだ。 ビールから始まり、…

短笑物語”究極のバイオテクノロジー ドジョウの蒲焼”

究極のバイオテクノロジー 「ドジョウの蒲焼」  プッツン・バイオ株式会社の開発部長A氏は、夕食後ウィスキーのビール割りを飲みながら、テレビを見ていた。連続テレビ…

ファンタジーショートストーリー”伝説の薬”

伝 説 の 薬 ハーピスとは、「彼方にある永遠の幸せ」という意味である。 昔、もっともっと星が近くに見えた頃、ハーピスと呼ばれる小さな村に、マリオという名の若…

ファンタジーショートストーリー ”ネージュ”

ネージュ 「見てごらん、この下の世界を…わたしたちには何の苦しみもないの」 「母上、苦しみとは何ですか?」 「ごらん、彼らの動きを」 「母上、分かりません」 「彼ら…

真珠のピアス

真珠のピアス

 昭和50年代の東京、若者たちの人生が足早に駆け抜ける青春ストーリー。強さと自由を求めて走り抜けるオートバイの疾風の後に香るロングピースの煙とカストロールの焼ける匂い。愛情と友情が太く紡がれたその道は半グレどもの裏街道と何度も交錯し火花を散らす。誰もがかつて抱いた強さと自由への憧憬がずっと心に煌めき続けていることを教えてくれる秀作。
  石田ショーキチ・音楽プロデューサ
             

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短笑物語”究極の歯の磨き方”

短笑物語”究極の歯の磨き方”

”究極の歯の磨き方”

 プッツン・バイオ株式会社の開発部長A氏は、夕食後いつものようにウィスキーのビール割を飲みながらテレビを見ていた。

「そっか、この番組のテーマは『探求心』ということだな」
 呟いた瞬間、ビールの宣伝になった。
「それにしても、ビールの種類は多い。第2のビール? 第3のビール? 第4のビールはあったっけ? のどごし? キレ? ドライ? …私は今も昔もラガーいっぽんだ。それも

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日常の切り取り”仕事帰り”

日常の切り取り”仕事帰り”

仕 事 帰 り

仕事を終え、自宅の最寄駅に着いたのは午後7時半。
改札を出て、右側の階段へ向かう途中、小さな女の子らしき声を聞いた。

「待ってぇ…ぇぇぇ」

涙の色に染まった声が彼女の透き通る力強さも含んでいる。

我が子の幼かった頃の声と重なり、その響きだけで抱きしめていた頃の感触がよみがえる。

階段を見上げた。

小学校低学年と思われる女の子がふたり、階段を勢いよく駆け降りてくる。
彼女

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日常の切り取り”心のビブラート”

日常の切り取り”心のビブラート”

心 の ビ ブ ラ ー ト

人生を変える一言はそこら中に転がっている。

それは通りすがりの誰かが発した何気ないセリフかもしれない、
汚ない電柱に貼られたビラに書かれた宣伝文句かもしれない、
雨上がりの水溜まりに映った月の光の揺らぎかもしれない、
ふと鼻腔をくすぐった花のかぐわしさかもしれない。

遠い記憶、パリの地下鉄の駅。
天使のような女性が奏でるバイオリン。
哀しげな旋律のオペラ座の怪人

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短笑物語”不審な人物”

短笑物語”不審な人物”

不審な人物

週末C氏の上司の壮行会が、東京銀座で行われた。
普段は生麦駅周辺で飲むことの多いC氏にとって、久しぶりの気晴らしになったようだ。

ビールから始まり、彼の好きなバーボン、その後取締役のD氏の提案で老酒のロック、これがまた妙にいけるのだった。C氏の最大の好物「ウイスキーのビール割り」に勝るとも劣るほどの酔い心地なのだった。そのおかげでC氏は、普段のアルコール摂取許容量を遥かに越えてしま

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短笑物語”究極のバイオテクノロジー ドジョウの蒲焼”

短笑物語”究極のバイオテクノロジー ドジョウの蒲焼”

究極のバイオテクノロジー 「ドジョウの蒲焼」

 プッツン・バイオ株式会社の開発部長A氏は、夕食後ウィスキーのビール割りを飲みながら、テレビを見ていた。連続テレビ番組「あなたも尻過ぎた世界」でこわい思いをした後、気象情報を見ているうちにある戦略を思いついた。

翌朝A氏は、部下のB氏を会議室へ呼び出した。
「B君、突然なんだが、ドジョウをウナギにしてくれないか」
「A部長、お言葉ではございますが、

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ファンタジーショートストーリー”伝説の薬”

ファンタジーショートストーリー”伝説の薬”

伝 説 の 薬

ハーピスとは、「彼方にある永遠の幸せ」という意味である。

昔、もっともっと星が近くに見えた頃、ハーピスと呼ばれる小さな村に、マリオという名の若者がいた。
ある日、重たい雲が村に流れ着いた。
雲は動かず、村を覆った。
太陽の光を遮り、そして細い雨を降らせた。
雨はひと月の間降り続け、村人たちの身体を蝕んだ。
雨が上がると村の一割の人々が亡くなった。

マリオには家族はなか

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ファンタジーショートストーリー ”ネージュ”

ファンタジーショートストーリー ”ネージュ”

ネージュ

「見てごらん、この下の世界を…わたしたちには何の苦しみもないの」
「母上、苦しみとは何ですか?」
「ごらん、彼らの動きを」
「母上、分かりません」
「彼らは戦っているいるのよ。とても苦しんでいるの。武器と呼ばれる道具を使って命の奪い合いをしているの」
「そして、彼らはどうなるのですか?」
「彼らは死んでしまうの。でもわたしたちには死は来ない。永遠の命があるから」
「彼らは死んでしまった

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