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福田花が書いたもの

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記事一覧

春-福田花

春-福田花

ドラッグストアで買うわけでもないアイシャドウのテスターを手に塗ってみる。緑や青など、似合わないことを確認する。

ベースのアイシャドウを使い切っていたことを思い出し、テスターを、今回はちゃんとテスターとしてテストしようとする。左手にはちょっと春に浮かれてるんじゃない?というようなグラデーションができていた。もちろん余白はない。

左の人差し指で薄橙のアイシャドウを取り、右手の甲に乗せるもののうまく

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本読みー福田花

本読みー福田花

最近の私はめっぽう読書にハマっている。
小さい頃はよく本を読んでいた気がする。図書室にもよく行っていた。中学生になり、本から離れてしまい、高校は映画を見るために図書室に行くだけで本を借りたことはないのではないか。
しかし、本を読み出すと、そういえば読書って楽しいんだったと思い出す。

店番をしながら、いそいそと本を読む。
この店は図書館みたいな色だと思う。
静かで薄暗い。植物はあるけれど生き生きし

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時間-福田花

ー新年のご挨拶
新年明けましておめでとうございます。
更新頻度をあげようと意気込んだ2023年でしたが不発に終わりました。
今年は大きなことは言わず、不言実行系で何を志していたか分からないまま達成していこうと思います。
今年も細々続けていきます。
どうぞよろしくお願いします。

今回は時間のお話です。
2023年は瞬く間に終わったように感じます。
だいぶ大きく変わった一年だったはずですが、また「あ

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お守りの話-福田花

お守りの話-福田花

車にかけられた交通安全のお守り。
親友の母が作ったターコイズ入りのビーズの指輪。
高円寺で買った羽にオパールが入ったちょうちょのネックレス。
姉が誕生日にくれたシルバーのネックレス。
チェコで買った紫色のちょうちょのブローチ。
オレンジ色のピースマークがついたブレスレット。
下北沢で買ったインドの刺繍ワンピース。
緑色のサンバ。
キャンバスのメリージェーン。
楮で編まれたカゴバッグ。
それにぶら下

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道ー福田花

道ー福田花

 車社会のこの町で、“道を覚える力”というのは結構重要なポジションにいるんじゃないかと思う。

 私はこの力がある方だと思う。幼い頃に走った道路もなんとなく覚えている。それに方向感覚もある。たまにとんでもない間違い方をする時もあるけれど。

 ゆっくり走っているから、景色を覚えているというのは全くなかった。祖父は自動車学校の教習所の先生だったので努めて安全運転だったと思うが、父も母も割と飛ばし屋。

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別れ際ー福田花

別れ際ー福田花

別れ際の挨拶がどうにもうまくいかない。

すぐに会える人ならば簡単に「またね」と言うべきか。いやしかし、近所に住めどすぐに会えるとは限らないとなると丁寧に言うべきか。
いつだって挨拶は丁寧にしたほうが互いの気持ちがいいのは間違いないが、仰々しくなってしまうのも避けたいところだ。

特に遠方から足を伸ばして会いに来てくれた友人に対しての挨拶の正解がわからない。
別れを惜しみ、できることならもっと一緒

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湿度-福田花

 あっという間に6月を迎え、初夏といえるような気候。関東では梅雨入りが宣言され、街に湿度が帰ってきたように思う。

 湿度というものはなぜこんなにも気持ちが良くないのだろう。
 見えないはずも肌に張り付き、数字通りの気温が感じられない。密閉されていた車に戻ると空気の出入りがないはずなのに想像以上のもわっと感を生み出す。
 押し入れにしまいこんだ服はカビて、洗い立ての服たちは嫌な匂いを残される。

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夏-vol.1 福田花

雷都
水平線の見えない街にも
夏はくる
湿度が溶けた空気に体がほどけ
木陰に避暑を望むばかり

暮れなずむ空は
雷光に阻まれ
瞬く間に大きな水溜まりを作る
夏がくる
ここはこうして海がなくとも暑さにかまけた湖が光る

トカゲ
アスファルトには動きの鈍いトカゲがひとり
路頭に迷っているようだ
焼けた地面に漕ぎ出す二歩目を
踏み出せないでいるようだ

風そよぐ中
影はどこか いそいそと走る私の自転車

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夏-vol.3 福田花

サンバレー

逃げるようにサンバレーへ
風は縫うように近づいてくる
氷は黒い池にぽしゃりと落ちて
私も足を滑らせる
心だけ はやらないように
ゆっくりと腰を下ろして

夏でもここは私を冷やす小さな山

花の喫茶日記
宇都宮市 「サンバレー」

 東武宇都宮駅の東口を出て、東武馬車道通り(通称一番通り)を駅を背に步く。1つ目の路地を右に曲がると、雰囲気が一変して朝でも昼でも毎度なんとも言えない緊張感

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夏-vol.4 福田花

夏のサイド

 高く上がった打球が真っ青な空に吸い込まれる。一瞬それを見失って、ボールの影がグラブの位置を確かめさせる。夏のグラウンドは乾いた砂のほこりっぽい匂い。汗で滑るボールを握りなおす。帽子をかぶっても焼ける真っ赤な顔。べた付く足に長いソックスを2枚も履いている。Tシャツの上にはボタンの付いた通気性の悪い白の厚手のシャツ。白いズボンにベルトを通してそれらをしまう。どれだけ暑くても変わらない練

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夏-vol.7 福田花

夏-vol.7 福田花

花の喫茶日記
釜川沿い 「朴花」

 ひと昔前は街のホットスポットだったオリオン通りはいつのまにか居酒屋だらけの商店街になってしまった。昔ながらのお店もちらほら見かけるが、目に飛び込むのはシャッターが閉まった店と派手な入り口のチェーン店ばかり。私より10年以上も早く歳を重ねている人は皆、昔はすごかったんだと口を揃える。

 そんなオリオン通りが一年に一度、一気に華やぐ日がある。それが毎年8月に開催

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秋-vol.1 福田花

秋-vol.1 福田花

セプテンバー

 街の匂いが金木犀に包まれる。風は一気に涼やかに、湿り気のあった8月が過ぎていった。青々としていた稲は金色の穂をたっぷりとつけて重たそうに首をかしげる。なんとなく空が高く、吸い込まれそうになる。寒くも暑くもない肌なじみのよい気温。太陽がギラつく夏のパキっとした鮮やかさから、なんとも力を緩めた光が差し込んで、からし色や臙脂、茶色を纏いたい季節になってきた。

 窓を開けて車に乗るのが

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冬-vol.1 福田花

街が煌めく
白色金色
だんだんと近づく
一列に並ぶオレンジ色が
タタタンとリズムを打って
私の好きな夜の光

緑色 私の靴が踊り出し
赤色 私の靴は小さなステップ

月明かりがしんとする夜に
ベイビー、イッツコールドアウトサイド

イブの街日記

 だいぶ更新が滞ってしまいました。バタバタと過ごし、なかなか書き物をする時間が取れませんでした。またゆったりとやっていきますのでよろしくお願いします!

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冬-vol.2 福田花

冬-vol.2 福田花

 あけましておめでとうございます。年が明けてからあっという間に1か月がたっていました。毎年、1月の過ぎゆく速さに体がついていけていない気がします。心がはやらないように、ゆったりと過ごしていきたいです。本年もヘリポートをよろしくお願いいたします。

花の巨木あつめ 前編

 ここ1年は、喫茶店や映画館に行くことと並んで、“巨木あつめ”と題して大きな木を見に出かけることを楽しみとしている。

 巨木と

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