湿度-福田花


 あっという間に6月を迎え、初夏といえるような気候。関東では梅雨入りが宣言され、街に湿度が帰ってきたように思う。

 湿度というものはなぜこんなにも気持ちが良くないのだろう。
 見えないはずも肌に張り付き、数字通りの気温が感じられない。密閉されていた車に戻ると空気の出入りがないはずなのに想像以上のもわっと感を生み出す。
 押し入れにしまいこんだ服はカビて、洗い立ての服たちは嫌な匂いを残される。

 毎年感じるはずの湿度のそれは、秋の清々しさ、冬のカラッと感、春先の心地よさで一気に体から抜けているため毎度新鮮にダメージを受ける。

 今年も夏がやってくる。

 夏は好きだ。寒いよりも暑い方がいい。暑さには強い方だ。冷房が苦手なため家や車でクーラーをつけることはほぼしない。しかし、湿度がそれを「本当にそれで耐えれるかな?」と言わんばかりに襲いかかる。

 イギリスは夏でも湿度が非常に低い。日向は日差しがとても強くジリジリと肌を焼かれているのを体感する。日陰に入ると日向の暑さが嘘のように涼しく、羽織りが欲しくなるほど。

 どうやら湿度が気温を管理しているらしい。

 湿度の高い日本では、湿度が気温をはらんで、日陰でも日向でも大した温度差はない。室内は冷房が効いているけど、やっぱり湿度はあるもんで、なんとなく体がそれを察知してなんとも暑くなっていく。
 風が吹いても気持ちがいいことは多くない。

 是枝監督の映画を見るたびに湿度を思う。日本に湿度がなかったら生まれてない映画はたくさんあると思う。そういう面では湿度があってよかった。


 だんだん体が湿度を思い出して、夏がくれば待ってましたと言わんばかりにワクワクする。はず。
 今年もそうであって欲しい。

 とりあえず、湿度に慣れる準備期間として梅雨を乗り越えていきたい。湿度たっぷりの外気に体を馴染ませて、来る夏を万全の状態で待つ。

6月 2023年

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