ヘリポート

福田花(詩人)、熊倉拓也(UNDER SOCKS)を中心に栃木在住の仲間たちによる同人…

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福田花(詩人)、熊倉拓也(UNDER SOCKS)を中心に栃木在住の仲間たちによる同人誌をもとにした読み物。詩、音楽、映画、漫画、スポットについて書いています。 twitter・instagram @heliporters

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「ヘリポート」について

 栃木県出身、在住の福田花(詩人)と熊倉拓也(from UNDER SOCKS)から始まった同人誌「ヘリポート」。  栃木県在住の20代を中心に県外在住のゲストを招きながら詩、音楽、映画、喫茶、自然などについて創作やエッセイ、レポートを更新していく。  田舎と都会の狭間で揺れる“栃木県”という場所に生まれ育ったからこそはぐくまれた、様々なものへの距離感と向き合い方。そして、そこから生まれてくる詩や音楽。そういったものを通してつながっていく関係など、多岐に渡って書いていく。

    • 春-福田花

      ドラッグストアで買うわけでもないアイシャドウのテスターを手に塗ってみる。緑や青など、似合わないことを確認する。 ベースのアイシャドウを使い切っていたことを思い出し、テスターを、今回はちゃんとテスターとしてテストしようとする。左手にはちょっと春に浮かれてるんじゃない?というようなグラデーションができていた。もちろん余白はない。 左の人差し指で薄橙のアイシャドウを取り、右手の甲に乗せるもののうまく乗らない。なぜ?とまじまじ見ると、酷くはないものの細かな幾何学っぽい皺に沿ってペ

      • 春-熊倉拓也

        どこにあるかは分からないが 確かにそこにある 目に見えないけどあるみんな待ってるそれを みんながそうかは分からないけど 分からないけど僕は待ってる 色んな色の春 抜けるのか抜け出せるのか凍りついた春を また迎えにいくのか夏を そしてサヨナラしてバイバイずっと先まで また会えるのはいつかな

        • 本読みー福田花

          最近の私はめっぽう読書にハマっている。 小さい頃はよく本を読んでいた気がする。図書室にもよく行っていた。中学生になり、本から離れてしまい、高校は映画を見るために図書室に行くだけで本を借りたことはないのではないか。 しかし、本を読み出すと、そういえば読書って楽しいんだったと思い出す。 店番をしながら、いそいそと本を読む。 この店は図書館みたいな色だと思う。 静かで薄暗い。植物はあるけれど生き生きした爽やかさがもたらされている気はしない。おそらくここにいる植物がどれも深い緑色を

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        「ヘリポート」について

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        • 福田花が書いたもの
          20本
        • 熊倉拓也が書いたもの
          4本
        • ゲスト回
          2本
        • 2本
        • 3本
        • 2本

        記事

          時間-福田花

          ー新年のご挨拶 新年明けましておめでとうございます。 更新頻度をあげようと意気込んだ2023年でしたが不発に終わりました。 今年は大きなことは言わず、不言実行系で何を志していたか分からないまま達成していこうと思います。 今年も細々続けていきます。 どうぞよろしくお願いします。 今回は時間のお話です。 2023年は瞬く間に終わったように感じます。 だいぶ大きく変わった一年だったはずですが、また「あっという間の一年」を過ごしてしまいました。 歳を追うごとに一年が短く感じるとい

          時間-福田花

          お守りの話-福田花

          車にかけられた交通安全のお守り。 親友の母が作ったターコイズ入りのビーズの指輪。 高円寺で買った羽にオパールが入ったちょうちょのネックレス。 姉が誕生日にくれたシルバーのネックレス。 チェコで買った紫色のちょうちょのブローチ。 オレンジ色のピースマークがついたブレスレット。 下北沢で買ったインドの刺繍ワンピース。 緑色のサンバ。 キャンバスのメリージェーン。 楮で編まれたカゴバッグ。 それにぶら下げたテト。 坊主の私。 ハロッズで買ったうさぎのぼて。 ハルさんが作った緑色の服

          お守りの話-福田花

          道ー福田花

           車社会のこの町で、“道を覚える力”というのは結構重要なポジションにいるんじゃないかと思う。  私はこの力がある方だと思う。幼い頃に走った道路もなんとなく覚えている。それに方向感覚もある。たまにとんでもない間違い方をする時もあるけれど。  ゆっくり走っているから、景色を覚えているというのは全くなかった。祖父は自動車学校の教習所の先生だったので努めて安全運転だったと思うが、父も母も割と飛ばし屋。運転に慣れてきた私もかなり飛ばす方だと気がついた。  飛ばしつつ、景色が目に飛

          別れ際ー福田花

          別れ際の挨拶がどうにもうまくいかない。 すぐに会える人ならば簡単に「またね」と言うべきか。いやしかし、近所に住めどすぐに会えるとは限らないとなると丁寧に言うべきか。 いつだって挨拶は丁寧にしたほうが互いの気持ちがいいのは間違いないが、仰々しくなってしまうのも避けたいところだ。 特に遠方から足を伸ばして会いに来てくれた友人に対しての挨拶の正解がわからない。 別れを惜しみ、できることならもっと一緒にいたいと思う反面、彼らの帰路を考えて早く帰した方がいいと思ったりもする。そのせ

          別れ際ー福田花

          湿度-福田花

           あっという間に6月を迎え、初夏といえるような気候。関東では梅雨入りが宣言され、街に湿度が帰ってきたように思う。  湿度というものはなぜこんなにも気持ちが良くないのだろう。  見えないはずも肌に張り付き、数字通りの気温が感じられない。密閉されていた車に戻ると空気の出入りがないはずなのに想像以上のもわっと感を生み出す。  押し入れにしまいこんだ服はカビて、洗い立ての服たちは嫌な匂いを残される。  毎年感じるはずの湿度のそれは、秋の清々しさ、冬のカラッと感、春先の心地よさで一

          お外に出ると…ー清水

          おはようございます。 ExtraVirginというバンドでドラムを叩いております、清水と申します。 今回は私がお話させていただきます。 何卒よろしくお願いいたします。 書を捨て町へ出よ、と敬愛する歌人は言いましたが— 寒くて、体力がなくて、物理的にできませんでした。 でも、暖かくなってきたので、たくさんお外に出ようと思い立ち… この間は、『奴』と公園に縄跳びしに行きました。 少しだけ寒かったけど、歩いているうちに慣れたんです。 そんな気温でした。 見上げればもうすぐ夕

          お外に出ると…ー清水

          自然、逃避ー福田花

           自然を感じる瞬間が今のところ何より好きだ。  ひとつの動物として、その世界に入り込んだつもりになれること、それから自然の中で人間という自身の異物感に気づくこと、自然に対し、絶対に勝てないと思えることが好きだ。 山 藍色の空に真黒い山の輪郭が近づいていくる 雲に集まった光が 森にすっと吸い込まれ 私だけが反射している 木々が確かめる 私の正しいはずの命を ―2021 年 8 月 17 日 福田花  大きな木を見に行って、人気のないあぜ道を歩いて、空気をこれでもかと吸

          自然、逃避ー福田花

          本ー福田花

           今日もまた、お気に入りの喫茶店に休憩をしに来た。  いかにも常連らしく「また来ちゃった。」と言い店に入る。「今日もありがとうね〜。」とお母さんに声をかけてもらっていつも座る1番奥の2人がけのテーブル席に向かう。  途中、カウンターのいつもの花柄灰皿を勝手に取って「ホットで。」なんて言う。  ここは今の働く場所から徒歩5分ほどの喫茶店。  おしゃべりをしにも来るし、本が読みたい時にも来るし、物書きにもうってつけ。  タバコをぷかぷかふかしながら、強めの暖房の風をあびて、

          本ー福田花

          まちー福田花

           山奥までの通勤から一転、私は街中への出勤が始まった。いわゆるポップアップというやつで、私の勤める店は街中に期間限定出店を始めた。  電車で行くこともあれば、バスで行くこともある。 それらに間に合わないと、10月に買ったばかりのピカピカの黄色の車で出勤する。  着ていたお洋服も山に合うアースカラーの季節に負けないようなものから、ちょっとおしゃれをするようになった。  でも、本気のおしゃれは休みの日に取っておきたいから、仕事の日は少し不満が残るような格好をした。  8時間

          まちー福田花

          夏の音ー福田花

          ラジオ体操と子供たちの声、蝉の大合唱、夕立と雷の音、遠くに聞こえる花火の音、夏には夏の音がある。  家から聞こえるこれらの音の他に、私の庭からは1時間に2回鳴る笛の音が夏にあった。  7月から2か月ほどだけ開かれる屋外の市営プールから1時間に2回笛の音が鳴る。毎時50分になると大きな笛が一度鳴り、もごもごとした放送のあと、少し静かな10分がある。そのあとまた大きな笛が鳴り、にぎやかな様子が聞こえてくる。  2回の笛は、プールで遊ぶ客に休憩を促すものと、その休憩の終了を知ら

          夏の音ー福田花

          春-vol.2 福田花

          春の詩 ホコリ 部屋に差し込む光が 私の背中をあたためる 目の前で小さなほこりが浮遊して キラキラ光っている 私の吐く息に沿って漂う 集まればきらめきはなくなって これは何色 その前の彼らの自由を 私はどれだけ許せるか ひとりででかける ひとりででかける 歩く速さも考えないから 植木を見つめる時間があるから 通り過ぎても戻って苦笑いができるから そうして、古い化粧品店に我が物顔で入れるから へんてこなビルヂングを見つけられるから 石畳の色に沿って歩いていけるから 夕焼けの

          春-vol.2 福田花

          春-vol.1 福田花

          春の手紙 拝啓  こちらは冬の厳しさが和らいできました。いかがお過ごしですか。  元気ならばいいのですが。   「便りがないのはいい便り」なんて言葉がありますが、頷きたい一方で、納得いかない部分もあります。  手紙には返事が欲しくなるものです。それは別の話ですか。  春が来るように思います。  あぜ道を通ってたどり着く、田んぼの横に流れる小川をよく見に行きます。天気がいい日だけです。自転車で行きますから。  そこで色褪せた草の間に、確かにいぬふぐりを見ました。色を落と

          春-vol.1 福田花