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音楽史9『後期のバロック音楽』


スカルラッティ

 中期バロックの頃には初期バロックの奇異さがなくなり精密な音楽へと変化し、ヴァイオリン系の楽器やフルートやオーボエなどの楽器が定着した時代であったといえる。

 そして17世紀末、イタリアではカンタータやオラトリオ、オペラなどではナポリ出身のアレッサンドロ・スカルラッティにより三部形式、つまり3つの部分からなる楽曲や、金管楽器ホルンの利用が広められたことで、オペラの様式は大きく変化し、彼から「ナポリ派」が誕生、その後にはホルン以外にもオーボエなど現在のオーケストラで用いられる様々な楽器が使われるようになっていた。

ヴィヴァルディ

 その後の18世紀初期のヴェネツィアでは世界で最も著名な曲の一つである『四季』などの作曲者として、やはり世界で最も著名な音楽家の一人となっているヴァイオリニスト・司祭のアントニオ・ヴィヴァルディが活躍しており、ヴィヴァルディは多くのジャンルを手がけ協奏曲(コンチェルタート)では独奏楽器をより強調した作風の曲を作り協奏曲を発展させた。

 このヴィヴァルディによって「急-緩-急」という協奏曲の流れの形式が確立され、それはそのままクラシック音楽で長く使われ続けることとなりり、ヴィヴァルディ作品では600以上の協奏曲と50以上のオペラなどが現存しているだけでも存在し、ヨーロッパ各地を周って、オランダから『調和の霊感』や『ラ・ストラヴァガンツァ』、『和声と創意の試み』、『ラ・チェトラ』などの協奏曲集を出版、教皇の御前演奏や皇帝への謁見も行った。

アルビノーニ
タルティーニ

 ヴィヴァルディと同じくヴェツィア出身の巨匠としては器楽曲、特にオーボエ協奏曲の作者として知られるヴァイオリニストのトマゾ・アルビノーニと、『悪魔のトリル』などの作者のヴァイオリニスト・音楽理論の学者ジュゼッペ・タルティーニがいる。

D・スカルラッティ

(猫のフーガ)

 ナポリではスペイン宮廷で活躍し民族色豊かな作風で『猫のフーガ』などを作曲したドメニコ・スカルラッティやレオナルド・ヴィンチが巨匠と言える。

 また、ヴェネツィアではアントニオ・ロッティとその一門のドメニコ・アルベルティ、ベネデット・マルチェッロ、フランチェスコ・ガスパリーニなどや、オペラ作曲家ニコラ・ポルポラ、ルッカではヴァイオリニストのフランチェスコ・ジェミニアーニ、ミラノでは近年再評価が進んだジョヴァンニ・バッティスタ・サンマルティーニなどがおり、この世代で作曲技法も後の時代の古典音楽に近づいていっていた。

ラモー

 この頃のフランスではリュリから続く高尚な叙情悲劇というオペラ様式から、演技、音楽、舞踏を一体化させた「オペラ=バレ」も誕生、叙情悲劇とともにジャン=フィリップ・ラモーなどの作曲家によって多く作られた。

 このラモーはオペラだけでなくクラヴサン音楽の作品も多く、古典派の先駆的な面もあり、また、ルート音や転回形などの概念を作いて機能和声法や調性を体系化してその仕組みを説明した人物で、音楽理論の創始者であると言える音楽史上では非常に重要な人物である。

テレマン

 ドイツでは、中年以降にハンブルクを拠点に活躍しドイツとフランスで名声を誇ったゲオルク・フィリップ・テレマンらにより従来のドイツ音楽に加えてイタリアやフランスの舞曲など新しい潮流・技法が盛んに取り入れられて作曲され、様式の融合がより盛んとなり、また、テレマンはクラシック音楽で最も多くの曲を書いた作曲家であり、その数は4000曲を超え、本人もヴァイオリン、オルガン、ハープシコード、リコーダー、リュートなどのマルチプレイヤーであった。

ヴァイス

 また、ドイツではバロック初期にはフランスなどで大きな人気を持っていたリュートという弦楽器はこの当時すでに衰退していたのだが、逆にドイツではシルヴィウス・レオポルト・ヴァイスなどによりリュート音楽の繁栄が続いた。

バッハ

  そして、この時期のドイツには世界史上、最も有名な作曲家で当時は傑出したオルガニストとして知られたヨハン・セバスティアン・バッハが居り、彼は『ブランデンブルク協奏曲』『G線上のアリア』などの管弦楽・協奏曲や、『トッカータとフーガ』『ゴルトベルク変奏曲』などの器楽曲、『マタイ受難曲』『ミサ曲 ロ短調』などの声楽曲も残し、ルネサンスの複数の旋律が独立して重なっている対位法のフーガなどのジャンルも和声法の曲も作曲、オペラ以外のバロック音楽のあらゆるジャンルを手掛け、『平均律クラヴィーア曲集』『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』『無伴奏チェロ組曲』『フーガの技法』『音楽の捧げもの』などの曲集も書いた。

ヘンデル

 18世紀のイギリスでは植民地の獲得によって貿易利益が生まれ経済的に豊かになった事で、富裕層が出現、裕福な市民の間でオペラの人気が高まり、ドイツ出身でイタリアで学んだ巨匠ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルによって『メサイア』などのオペラやオラトリオ、『水上の音楽』『王宮の花火の音楽』などの管弦楽、『調子の良い鍛冶屋』などの器楽が書かれたが、イギリス独自の様式などは無かった。

 その他にもドイツではフリードリヒ大王下のオペラ作曲家のカール・ハインリヒ・グラウンや、ザクセン選帝侯下のカトリック作曲家のヤン・ディスマス・ゼレンカやヨハン・ダーフィト・ハイニヒェン、オルガニストのヨハン・ゴットフリート・ヴァルター、ヨハン・フリードリヒ・ファッシュなども活躍し、チェコではボフスラフ・チェルノホルスキー、スウェーデンではユーハン・ヘルミク・ルーマンなどが活躍した。

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