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【感想】「リコリス・リコイル」のアニメ見たから感想書くよ

このNOTEは人気アニメランキングで第213位(2023/11/15現在)と高評価を受けている「リコリス・リコイル」の感想です。1回通しで見て、100点満点からの減点方式で個人的に引っかかったところを何点かピックアップしました。ネタバレを含みますので、未視聴の方はここでブラウザバックした方が良いと思います。それでは、行きましょう。


【構成】後半のクールダウンがないのがしんどいわ(-5点)

本作を大別すると、前半は喫茶リコリコチームが揃っていくパート、後半はバトルパートでした。前半はW主人公の邂逅と日常回、ちょっとしたドンパチをしながら残りのサブキャラが集まってくるなど、緩急のバランスがとても良かったです。この時は、後半への期待感に満ち満ちていました。でも、そこからはサスペンスフルなシーンばかりが続いて、緩急の「緩」がほぼ皆無でした。だから、見ている自分の心は息継ぎする暇がなくて、どんどんしんどくなっていきました。

おそらく、これは物語の構造上、後半が一塊としてガチガチに固まっていたことが原因と思われます。後半のどこかに日常回を挿し込もうにも、街中でドンパチやっている最中なのでスペースに余裕がありません。無理に入れようとしたら、お話の流れが破綻してしまいます。圧迫され、押し出される形となった箸休めの日常回は、前半の早いところに仕方なく配置された感じでしょうか。ただ、それ自体は悪いことではないんです。後半のどこかでそういう類の少し心をクールダウンさせるような部分があれば、息切れするような結果にはならなかっただろうって思うんですよ。

( 'ω' ).。oO( 単に自分の視聴体力が落ちただけなんかなぁ……

【脚本】千束の可愛さの暴力に頼り過ぎなんよ、はっきり言うて(-15点)

本作は千束ちさととたきなのW主人公で、この2キャラが物語の駆動力ドライビングフォースとなっていました。最初は千束がアクティブ担当、たきながナゾナゾ担当でしたが、中盤の千束の過去と秘密回ではその立場が入れ替わります。「HUNTER×HUNTER」のゴンとキルアの関係の描かれ方もこれとほぼ同じですね。アクティブとナゾナゾ、この2キャラが役割分担していずれかを演じないと、見ている側はすぐに退屈しはじめます。

これは個人的な偏見ですが、喫茶リコリコの中で千束がハイテンションで喋ったり動き回ったりしているときにどこか千束が千束ではないような違和感をたびたび覚えたんです。「そんなんしゃあ仕方ないやんか、アクティブ担当は基本千束しかおらんのやから」と割り切ってしまえば楽だったんですけれど、間を持たせるために千束が無理をさせられている嫌な感じを受けたんですよ。

これをキャラデザの可愛さの暴力がカバーしようとしていて「面白いことしますんで目を逸らさんといてください、お願いします何でもしますから!」と、必死に訴えているようでした。そんなわけで、千束はどことなく不自然と言いますか、脚本の甘さがキャラを殺したように感じられました。ここが個人的には最も大きな減点対象になりました。

( 'ω' ).。oO( そら(千束に肩の力を抜いてもらわんと)そう(喫茶リコリコで憩うシーンまでも心が安らげなくなるでしょう)よ

【キャラ設定1】W主人公の能力過多と関係性(-5点)

千束とたきなは共に身に余るほどの戦闘能力が与えられていて、なろう系の俺TUEEEキャラが2つ存在しているヤバイ感じがしました。能力過多はピンチがピンチに映らなくなって、お話に抑揚がつかない危険性を生みます。が、モブではないラスボス級の敵も同様だったのでこれは杞憂でした。しかしながら、二人が共闘をする感じにならなかったと言いますか、互いに背中を預け合うような相補的な関係性に発展しなかったのは個人的に予想外でした。

一つ心残りがあるとすれば、千束を最初めちゃくちゃに突き放していたたきなが飼いならされるまでが余りにはやすぎることでしょうか。ゆっくりと氷解するまで時間をかけた方が、なんなら無理やり仲良しこよしにしない方がエモ味は最大化して良くなるんじゃないかとも思いました。

【キャラ設定2】乙女サクラのネーミング(-3点)

乙女サクラの名前が「おばさんデカ」と丸被りです。脳裏から市原悦子が顔を出してきたせいで、物語から引きはがされて集中が切れてしまったのはアカンすよ。

( 'ω' ).。oO( そうはならんやろ…… ってなっとるやろがい!

【キャラ設定3】魅力に欠ける悪役、吉松シンジ(-5点)

シンジはアラン機関の権化でした。言葉遣いは丁寧でもやってることはえげつなく、「メイドインアビス」のボンドルドのイカれた父性に「スーパーダンガンロンパ2」の狛枝凪斗の無意識の悪意を一つまみ入れたような邪悪を感じるキャラです。ただ、ボンドルドみたいな魅力ある悪役かと問われればそうでもなく、単にいけ好かんおっさん止まりです。

その理由は、この「リコリス・リコイル」の世界観に対する善行を何もしていないからです。人間をやめてもいないのに人間性を喪失しているかのような狂人的振舞いも、その気持ち悪さを引き立てています。千束の人工心臓の件といい、その後味の悪さは拭い切れるものではありません。なので、どこか憎み切れない要素をシンジに持たせてあげた方がいいかもしれません。

【短評】面白いわけではない、面白くないわけでもない、でも見た方が良い作品(67点)

深く考えずに流し見するとか、百合を評価基準にするなら間違いなく80点オーバーです。でも自分は本作を一連の流れで追っていたので、結構疲れました。先述した後半の心のクールダウンが無かったことに加えて、「何がどうなったら良いのか?」っていう大まかな作品のゴールが最後まで明示されなかったのが原因です。今となっては、自分がそれに期待していたのがそもそもミスだったんですけれどもね。W主人公も、所属する喫茶リコリコチームのメンバーも目的はバラバラで、目指している方向性がよく掴めませんでした。

最も良かったところは、作画やキャラデザがポップでスタイリッシュだったこと、そしてドンパチ賑やかなガンアクションの気合いが入りに入っていたことです。ここは他作品には及ばないほど神がかっていたので、絶対に見た方が良いです。残念だったところは、脚本が喫茶リコリコにいる時の千束を可愛さの暴力に頼ってキャラの無理してる感がにじみ出てしまったことです。こういった何気ないオフの空気感の作り込みは地味ながら個人的に重要視しているので、それをしてくれれば自分は良作と判断していたでしょう。

物語を俯瞰して見てしまった結果、特別面白いわけではなく、面白くないわけでもない、でもビジュアルは素晴らしいっていう評価となりました。自分の見方が悪かったせいか67点になりましたが、点数ほど悪い印象はありません。素材自体は良いので、魅せ方を工夫しさえすれば初見でもスッキリと見られるストーリーになるはずです。もし2期があるなら絶対に見たい、そう思える作品でしたよ。

( 'ω' ).。oO( 肩の力を抜いて見た方が良かったのは自分の方だったかも……

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