【状況創作】空き巣に感謝した話

あり得ない状況を創作してみました。

ちょっとコンビニで夜食でも買おうと家から出ました。出払っていたのは15分ほどだったのですが、帰ってきてから私は妙な感じを覚えました。靴のアングルが出かけた時と少しズレていたのです。私だけは大丈夫、そう油断していたわけではありません。施錠はしっかりしていたのに、どうやら空き巣に入られたようです。でも、私がミニマリストだったことが幸いしてか、何ひとつ物は盗られていませんでした。

私は台所からする異臭の方が気になりました。誰の気配もなく、近づいていくとスリッパが滑って思わず頭から転びそうになりました。床がそこら中、水浸しになっていたのです。そして、真っ黒く変色したガスコンロの周りが目に入りました。私は、はっとしました。激辛カレー鍋を火にかけたままだったことを、今の今まですっかり忘れてしまっていたのです。家を出た後に空焚き状態になって、そこから火の手が上がってしまったみたいです。

マンション全体が火事にならなかったことは不幸中の幸いでしたが、消防署に通報されてないまま、消火作業がなされていたのは大きなナゾでした。この状況で考えられるのはひとつしかありません。空き巣が侵入した際にたまたまこのボヤに鉢合わせした……。そうとしか考えられません。まだ住人のことを心配することができるほど、空き巣は人の心を失ってはいなかったのでしょう。私は顔も名も知らぬその空き巣に感謝しました。

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