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スタッフの定着率を上げるには

前回のコラムでは、スタッフが入職する理由と退職する理由について触れました。

労働集約型のサービスにおいて、また施設と違ってご自宅に訪問するような介護や看護のサービスにおいては、需要を満たすための供給量が重要であり、多くの人材が必要となります。

不況の状況下において、採用がままならない中で人を増やすとなると、採用以外に打つ手は何かというと退職者を減らすことしかありません。

あまり良い例えではありませんが、バケツに水を貯めたければ、バケツの底に空いている穴の大きさを小さくしていく努力が必要となります。

今は、「離職率防止のため」という名目で様々なツールを提供している会社があります。

従業員に定期的なアンケートをとって、彼ら彼女らのおかれた状況を客観的に分析していくもの。

そして、その解析内容をフィードバックすることもあるでしょう。

ところが、問題はこのフィードバックをどのように実施するかということですよね。

前回のコラムでも述べましたように、拠点の環境をつくり出しているのは、その拠点の責任者である上長その人です。

前向きな上長であれば、今ある環境をより良いものに変えていこうと、常に改善させるための方策を打ち出して落とし込んでいくことでしょう。

また、悪い環境が一向に良くならない拠点であれば、その状況で良かれと何の方策も打ち出さないまま放置している上長の在り方がそのまま反映されていきます。

従業員が、今の環境に対してどのように思っているかというのを、こうした上長たちにフィードバックしたところで、良い拠点と悪い拠点の差は広がるばかりです。

こうしたアンケートは、拠点の上長の更なる上長である経営陣が見ることで、悪い環境を放置している拠点長を入れ替えるためには活用できると思いますが、そうした拠点長の在り方を変えるためにはあまり活かされないような気がしています。

その職場の居心地の良い理由も悪い理由も、上長の存在によるところが多いわけですから、会社がその理由を把握してくれたところで上長を変えてくれない限りは、わざわざ問題提起をした部下たちの置かれた環境は変わるはずがありません。

話が変わりますが、「ビジョナリー・カンパニー」というビジネス書のベストセラーがあります。

「優れた企業の本質とは何か」とその要素を抽出していくために、多くの優れた企業を調査してそこに共通する特徴を見える化しています。

優れた企業の部分を「スタッフが定着している拠点」に変えて考えた時に、そうした拠点に共通する要素は何なのか。

おそらく拠点長たちは、自分たちは当たり前だと思ってやっていることが多くあることでしょう。

ところが、その「当たり前」は他の人たちにとっての当たり前ではないことの方が多い気がします。

ですから、スタッフが定着している拠点の上長の取り組みをヒアリングしていったり、スタッフたちには「なぜこの営業所に長く勤務してくださっているのか」と普段あまり考えたことのないような問いかけをしていったりすることで、暗黙知であった「人が辞めない本質」を可視化する必要があるのだと思っています。

ここで抽出された本質を、上長が自らの在り方を振り返るためのチェックリストとして活用することで、これまで考えてもみなかった数々の自身の言動の問題をあらためて認識できるようになるのではないでしょうか。

また、チェックリストとして見える化していれば、部下たちが上長を評価するためにも流用できます。

部下から高評価の上長とそうでない上長の違いがどこにあるのか、チェックの入っている項目の可否によって他の人との比較も可能となりますし、自らの日頃の行いを振り返るきっかけにもなることでしょう。

優れた拠点の環境のフィードバックは、その反対の環境をつくり出している上長の言動をあぶり出すために活用してこそ、はじめて意味のあるアンケート集計やヒアリングになるのではないかと考えています。

今日も読んでくださいまして、ありがとうございます。

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