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この職場にいる理由、辞める理由
私のいる介護業界というのは、保険制度に基づいた事業運営から報酬を得ているため、市場に合わせて値下げをする必要がないことからもある意味守られており、不況の際にはそれが強みとも言えます。
反対に、市場の状況と関係なく、一定期間において保険制度の報酬改定などがあると容赦なく事業全体に影響が出ることがありますし、また景気が良くなってきて他の産業が回復し始めますと人材もそちらに流れていくことから労働集約型の事業としてはとても苦戦を強いられがちです。
コロナ禍においても同じことが言えて、大変な状況の時が実は一番需要が高くあり、人も比較的多く集まり業績的にも伸ばすことができました。
ところが、コロナが落ち着き始めて5類感染症に移行してからは、採用活動がなかなか厳しい状況になってきています。
濃厚接触者という概念が無くなりましたから、街には再び人が溢れ出しましたし、これまで閉まっていたお店も再開し始めました。
やはりこうしたところに人材は流れていってしまいがちです。
施設系のサービスですと、定員がありますから配置する人員数にも上限がありますが、当社のように在宅系中心に訪問介護や訪問看護サービスに力を入れているところは、サービス提供の上限イコール供給量となりますから、需要がある限りは更に多くの人材を必要とします。
そして、社員数を増やしたければ、しないといけないことは二つしかありません。
ひとつは採用数を増やすこと。これは前述したようになかなか厳しいご時世となってきました。
2023年7月現在の全職業の有効求人倍率は1.3倍、それに対してヘルパーの有効求人倍率は過去最高の15.53倍です。16社でひとりの人材を奪い合っている状態です。
ですから、採用の手を止めてはいけませんが、他にもやらないといけないことがあります。
それがもうひとつしないといけないことである、退職者を減らすことです。
離職率を下げるという言い方もできますし、反対に定着率を上げるというのも同じ意味合いになりますよね。
もともとこの職業に向いていなかったというミスマッチで退職される方は仕方がないとして、この業界で働くほとんどの方は、おそらくは「人のために何かがしたい」「じいちゃんばあちゃんを元気にしたい」「自分たちが関わることで、より良い環境や状況になっていただきたい」こんな想いで志望されている場合が多いのではないでしょうか。
つまり、介護を志望される人は「介護がしたいから」、看護を志望される人は「看護がしたいから」こそ、そのサービスを提供している会社に入職されるのですよね。
ところが、辞めていく人の多くは、それでは「介護がしたくなくなったから」とか「看護がしたくなくなったから」というのが果たして辞める理由なのかというと、決してそんなわけではないはずです。
そうでなければ、なぜ辞められた方々は再び同業他社へと転職をされていくのでしょうか。
介護は好きなのに、看護は好きなのに、それら好きなことが出来る環境から離脱したいというのは、好きなこととは別の要素がそこにあるからです。
今の環境から出ていきたいのは、つまるところその環境が嫌だから。
そして、環境を構成しているのはそこにいる人たちです。
同僚たちとの関係性に問題が生じているということもあるでしょう。
ただ、そういった職場における関係性の在り方についても、方向づけをしていくのは会社の方針や目的がいかに示されているかが大切な要素であり、もっと言えばその方針を実践していく役割を担う上司の姿勢がどのようなものであるかというのが、その下で働く職員にとってはとても大きく影響していきます。
つまりは、上長との関係性ですよね。
どのような組織にするのかしたいのか。その組織の環境を決めてしまうのは社長の姿勢ひとつです。
同じようにひとつの拠点の環境を決めてしまうのは、その拠点の責任を預かる上長次第です。
その職場が居づらい環境なのだとしたら、その原因を作っている、もしくはその原因を放置している上長の責任ということになります。
本題に辿り着くまで話が長くなりましたので、続きはまた次回。
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