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頼られることで部下は成長する/信頼が生む職場の力

私たちの多くは、リーダーシップとは「自分一人で全てを担うこと」と考えがちです。しかし、本当のリーダーシップとは、自分の力だけで全てを成し遂げることではなく、周囲の力を引き出し、共に成果を上げることではないでしょうか。

今回は論語に登場する孔子の弟子の一人である子賤(しせん)のエピソードを交え、他人の力を上手に借りることの大切さについてお伝えしたいと思います。

子賤流マネジメント

子賤は、師である孔子からその知恵と洞察力で一目置かれており、孔子よりも49歳も年下である子賤を「こういう人こそが真の君子である」と孔子に言わしめた人物です。『論語』では公冶長篇に一度だけ登場するためあまり知られていませんが、子賤のエピソードには「人の力を借りる」という教訓が含まれており、この重要性をよく示しています。

若くして聡明だった子賤は、魯の単父(ぜんぼ)という地方の長官に任命され、赴任します。子賤はその職務を非常に上手にこなしましたが、彼が単父をどのように治めたのかには興味深い逸話があります。

子賤は日頃は古琴を弾くという優雅な生活をしながらも、単父の統治をほとんど何もせずにうまく治めていました。

この様子を見た、自分が統治に非常に苦労していた前任者は子賤がなぜほとんど苦労せずにを単父を治められるのかを不思議に思い、ある日彼に尋ねました。

子賤はこう答えました。
「自分の力を使ってやろうとせず、人に任せるからです。」

つまり、子賤は周囲の人々の力をうまく引き出し、彼らに仕事を任せることで、自然と単父を統治することができたのです。

このエピソードから、真のリーダーシップは自分だけで全てを抱え込むのではなく、他人の力を引き出すことによって成り立つことがわかります。

アンドリュー・カーネギーの教え

同様のリーダーシップの原則は、近代のビジネス界でも見られます。アンドリュー・カーネギーは鉄鋼業で成功を収めた実業家として知られていますが、ご存知の通り、彼の成功の秘訣の一つは、人の力を借りることが上手だったことです。

カーネギーは、自身の墓碑銘に「ここに眠るアンドリュー・カーネギー。彼は自分よりも優れた人々を自分のために働かせる術を知っていた」と刻むよう指示したことも有名です。

この言葉は、彼がいかに周囲の才能を活かすことに長けていたかを物語っており、カーネギーの成功の背景には、彼が自分の力だけでなく、周囲の人々の知恵や才能を引き出し、協力することで大きな成果を上げたことにありました。

子賤の教訓とカーネギーの実践から学べること

この二人からから学べることは、私たちが日々の業務やリーダーシップにおいても、部下やチームの力を適切に借りることが重要であるということです。

現代のリーダーはプレイヤーとマネジメントを両立しなければならなく、その役割も複雑化、高度化しています。そんなリーダーにとっても日々の業務やリーダーシップにおいて、部下の力を適切に借りることは重要であると言えます。

部下に助けを求めるなど「この人、大したことないんじゃないか」と思われそうで不安になったり、プライドが邪魔をしてしまうかもしれません。

けれど、リーダーの仕事は、部下から尊敬されることではなく、チームのメンバーが活き活きと活躍できる環境を作ることです。そのためには、効果的で具体的な取り組みが必要で、それこそが「頼る」ということです。

リーダーとして部下に相談することなどないと思っていたり、頼るのが苦手な方も多いかもしれませんが、「頼る」ことでチームのムードは大きく変わります。

リーダーが感じている悩みや不安は、部下にはほとんど伝わっていないことが多いものです。これは立場の違いや情報量や見える景色の違いからくるもので、無関心や嫌悪感ではありません。

部下はなんで察してくれないんだと一人で悶々と悩んでいても仕方ありません。「こんなことで困っているんだけど」と相談することが何より大事ではないでしょうか。人は頼られ、認められることが嬉しいものです。特に「頼りにされている」というのはとても嬉しい関係性です。

相談されるということは「頼りにされている」ということであり、部下は一生懸命に頑張ってくれるかもしれません。部下は、あなたが思っている以上に能力も意識も高いのです。ただ、課題を察していたとしても聞かれてもいないことを進言したりすることに億劫なだけです。

リーダーだからといって一人で全てを抱え込む必要はありません。むしろリーダーは自分の悩みや問題を部下に相談してみてください。そこから、新しい関係性が始まると思います。そして、部下も自分には現状では対応できないと思う課題を上司から投げかけられた時に目線が上がり、成長も始まります。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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