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僕色百景41〜50

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第五十景 ビールの話

第五十景 ビールの話

記録したクラフトビールの写真を改めて数えてみたら、ビアイベントやビアバーも含めて約300枚の写真があった。つまりそれだけの種類を飲んだということになる。それも今年だけで。

全く恐ろしい。金額的な事をいうと1本400円で均したとしても、10万円は超えている。ここまでどっぷりハマるとは思っていなかった。

元々ビールは好きだった。ご飯によく合うし、一日の疲れを癒すために飲んでいた。しかしビールといえ

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第四十九景 初めて付き合って学んだ事の話

第四十九景 初めて付き合って学んだ事の話

離婚をしてから初めて、彼女がいた期間がある。しかし1ヶ月ほどで別れてしまった。いつも付き合えば長いのに、これほど早くに別れてしまうのは珍しいことであった。

これにはいくつか理由があるが、いちばんは結婚に対する理想や付き合う人に求めるものが出てきたからだと思う。これまでは好きな人と一緒にいることができれば良いという感覚があった。

どちらかというと、自分の意見を言わずに無理してでも相手に合わせるこ

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第四十八景 隠し味の話

第四十八景 隠し味の話

僕は車を走らせた。空は厚い雲に覆われ、ワイパーの速度が降る雪に間に合わない。群馬に行くには三国峠を抜けるか、関越トンネルを抜けるか迷ったが峠道よりは高速の方が良いと思い、近くのインターから高速に乗った。

冬の高速は怖い。恐れ知らずの県外ナンバーがガンガン飛ばしている。雪道の恐ろしさを知っているなら、まずそんな事はしないだろう。命知らずにも程がある。

薄っすらと雪の積もる道路をスリップするギリギ

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第四十七景 マッチングアプリ大戦記 episode6

第四十七景 マッチングアプリ大戦記 episode6

「6人目 Nさん アラサー 上野樹里似」

紅葉を見るための待ち合わせ場所に向かう途中、スマホが震えた。「共通のコミュニティの人からいいねが届きました」とポップアップに表示されていた。

アプリを開いてみると、DYGLという日本人バンドのコミュニティだった。日本人離れしたサウンドで、全英語の歌詞を歌っている。めちゃくちゃかっこいいバンドだ。

彼女に一気に興味を持った。草原の上で歩いている姿の写真

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第四十六景 長い間思い出さなかった話⑤

第四十六景 長い間思い出さなかった話⑤

翌朝、宿を出て近くにある川床に向かった。彼女とどこかへ出かけるのは、これで最後だと、どこか確信めいたものがあったので、事あるごとに写真に収めた。

写真を多く撮るのが珍しかったのか、彼女は不思議がった。悲しい気持ちと不安な気持ちが混ざり合ったような表情で写真を撮り続けた。

そのあと、有名なお菓子工場に行き、お菓子をお土産に買った。暗くなった車内で、彼女の手が僕の太ももをとんとんとした。手を繋ぎた

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第四十五景 長い間思い出さなかった話④

第四十五景 長い間思い出さなかった話④

配属前に同期の顔合わせで飲むことになった。その帰り道、同期の女性に腕を掴まれ、腕を組む格好になった。彼女がいたので、どきまぎしたがそのままにしていた。

それがきっかけになり、次第にその女性のことが気になるようになっていった。単純な僕は、自分の性格を呪った。それでも想いを抑えきれずに、同期の女性とLINEでやり取りを重ねた。

環境が変わるのは恐ろしいことで、今まで当たり前にしていたことが出来なく

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第四十四景 長い間思い出さなかった話③

第四十四景 長い間思い出さなかった話③

東京での最後の半年は悠々自適だった。就職先も決まり、単位も取り終え安心した僕は、怠惰な生活を送った。近くのコンビニにバイト先を変え、彼女が仕事に行ったのを確認して起き、バイトに向かう。

夕方にはバイトが終わり、夕飯を作って帰りの遅い彼女をゲームをしながら待った。時には迎えに行った。仕事終わりに彼女と向かい合って飲むビールと食べるご飯は最高だった。あれを幸せと呼ばずに何を幸せと呼ぶのだろうか。

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第四十三景 長い間思い出さなかった話②

第四十三景 長い間思い出さなかった話②

同じ関東に進学することになり、僕は八王子、彼女は日野の大学だったが、同じ八王子に住むことになった。僕は大学近くの寮で、彼女は駅の発展していない方の入口側に住むことになった。自転車で20分くらいの距離だった。

彼女はアパートに両親とともに、引っ越しに来たが、両親が居なくなった途端に寂しくなり、号泣して電話をかけてきた。駆け付けたい気持ちはやまやまだったが、金土以外は外泊禁止だったので、なだめるしか

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第四十二景 長い間思い出さなかった話①

第四十二景 長い間思い出さなかった話①

英語の先生が隣の女の子に音読の順番がきたことを告げる。うつらうつらしていた彼女はハッとする。その前の女の子が振り向き「ここからだよ」と教え、彼女はたどたどしい発音で英文を読んだ。

彼女を意識し始めたのはその頃だろうか。だんだんと彼女のことが気になり、教室や廊下で彼女がいないか目で追うようになった。彼女は友達の中ではふんわりとした不思議な人として見られているようだった。

人見知りだった僕は、彼女

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第四十一景 マッチングアプリ大戦記 episode5

第四十一景 マッチングアプリ大戦記 episode5

「5人目 Mさん 20代半ば 片桐はいり似」

4人目の人と会った帰りに会う日が決まった人。この人も同じように顔が分からず、ぼかしてあった。

ただそれ以外の服装の雰囲気と、写真がオシャレに撮れていたので、やり取り中はちょっと期待していた。

写真を見せてくださいとは言えないチキンな性格の僕は、相手が写真を送りつけてくるまで、待つことが多かった。

この頃はマッチングアプリでやり取りが進むと、LI

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