第五十景 ビールの話
記録したクラフトビールの写真を改めて数えてみたら、ビアイベントやビアバーも含めて約300枚の写真があった。つまりそれだけの種類を飲んだということになる。それも今年だけで。
全く恐ろしい。金額的な事をいうと1本400円で均したとしても、10万円は超えている。ここまでどっぷりハマるとは思っていなかった。
元々ビールは好きだった。ご飯によく合うし、一日の疲れを癒すために飲んでいた。しかしビールといえば、大手のものしか思い浮かばなかった。大体はのどで飲んでいた感はある。
周りでも、ビールの優劣を決めるときは、アサヒ、サッポロ、キリン、サントリーが選択肢に挙がり、その中で選ぶ感じになっていたと思う。きっかけはなんだったのだろう?
僕にとってお酒を飲むといえばビールだった。飲み会ではひたすらビールを飲んでいたし、とりあえずビールから、最後の締めまでビールを飲んでいることが多かったと思う。前提としてビールが大好きだったのだ。
去年の暮れごろから、理由は分からないが、なぜか全国のビールを飲みたいと思ってしまった。そう思いついた時は、旅行に行くついでに、ビアバーで飲もうと思っていたくらいであった。
そういえば、この旅が一番初めだったと思う。ビアバーでは入った時間が早くて、思うように飲むことが出来なかったが、地獄に寄った帰りに宇奈月ビールを何種類か買った。
家に帰って飲んだ時には、味的にはそれほど感動はしなかったが、なにより種類の多さに驚いた。その数日後、更なるビールを求めてスワンレイクビールを阿賀野市まで買いに行き、ケースに入っていたビールをほぼ全種類買って帰ってきた。
年が明けて2020年、マッチングアプリで出会った人にめちゃくちゃビールに詳しい人がいた。知識としては完敗だった。悔しいと思った。30秒で売り切れるビールがあると教えてもらった。
それは山梨のうちゅうブルーイングというブルワリーが作っているものなのだが、とにかく人気らしい。手に入れてみようと思い、発売開始時間にオンラインショップに訪れた。
カートに入れて、情報を打ち込み、購入ボタンを押した。「カートにありません」というメッセージが出てきた。ここまで45秒くらいだったと思う。本当に売り切れたのだ。ここから僕の負けず嫌い魂に火が付いたのだと思う。
次の発売日がきた。体調を整え、主戦場である便器に座っていた。真剣勝負の時は、誰にも邪魔されないトイレの個室にこもる。頭の中で、購入ボタンを押すまでの手順はイメージ済みだった。
10,9,8,7,6,5,4,3,2,1。ファイ!!商品タップ!かごに入れる!名前、住所、電話番号、カード番号入力!!そして僕は購入ボタンをタップした。
...「購入ありがとうございます」
ほっとした。トイレの中でうちゅうのビールを手に入れることが出来たのだ。
そこからは好みは関係なしに、話題になっているビールや人気のあるビールを中心に飲むことにした。
基本的には、公式のオンラインストアで買うことが多いが、近頃は品揃えのいい酒屋を見つけたので、そこでも買う。
それが積もり積もって、約300種。色んなビールと出会ったが、2021年は好きなビールの種類だけを飲むと決めている。
巷では、サワービールやヘイジーIPAというものが流行っているが、好きなのはアルトやヴァイツェン、デュンケルなどのドイツ系、それとアンバーエールとポーターだ。
一日の区切りとして、気分転換として、これからもビールを飲み続けるだろう。でも1日1本で満足しよう。飲み続けるためには、健康でないといけないから。
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