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我が読書迷走微録

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迷走ばかりの我が読書遍歴を微文で紹介する記録。
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#読書

「ソクラテスの弁明・クリトン」プラトン

ギリシア哲学の礎を成した世界の賢人。『無知の知』を語り、善く生きる」意志を貫いた。
私は大いに夢を見る。
陽光が降り注ぐ晩夏の川の畔をゆっくりと散歩しながら、生と死、個人と国家、倫理と法律等、あらゆるテーマをギリシアの哲人に問う夢を…

「ノルウェイの森」村上春樹

1987年に刊行された大ベストセラーの長編小説。若かりし頃、妙に性に合わず、それ以来回避してきた作家のひとりだが、あえて再読。青春とは、死と虚無とセックスとともに生きることかも知れない。

「神曲」ダンテ

13世紀のイタリア詩人による大長編叙事詩。
地獄編、煉獄編、天国編の3部作は第2の聖書のごとく、長く深く、そして重厚であり、それはどこか精神の建築物のようでもある。

「ホイットマン詩集」

アメリカ近代詩を語るに欠かせない代表的詩人。
黒人奴隷解放運動に揺れた時代の中で残された「草の葉」は、自由詩の先駆けとも言える。

「ライフシフト」リンダ・グラットン

人生という極めて個人的で限定的な所有時間は、マクロ的視点によって策略的に高齢化の実態と思考変化を求められる書。批判的かつ客観的に必読すべき。

「ヰタ・セクスアリス」森鴎外

日本近代文学の文豪による異色作。
軍医、官僚という肩書きを有し、無骨で愚直なイメージの作品群とは裏腹に、赤裸々な性欲生活の作品化は鴎外の多様性を見せつける。

「ゴッホの手紙」小林秀雄

若かりし頃、「アート」と「芸術」の違和感を抱きながら出会ったゴッホの苦悩。小林秀雄が導く狂おしく痛ましいほどの天才は、経年するほどに輝かしい。

「人生論ノート」三木清

おそらくは、哲学や倫理学も知らない中で読まされた哲学読書デビューの書籍。獄中死した著者の思考の断片が凝縮している。三木清再考の一冊。

「禁色」三島由紀夫

1951年に発表された三島前期の大傑作。
平和で安穏とした昭和を象徴する登場人物が織りなすストーリーは、驚愕するほどの展開で三島の世界を表出している。令和の世でも必読の作品。

「ツァラトゥストラはこう語った」フリードリヒ・ニーチェ

ニーチェを単体で読んでいけない。
丹念にその遺伝子を辿ると、単なる発狂した変人ではなく、そこに至る軌跡があり、その頂上がある。それこそがツァラトゥストラ。
つまり、ニーチェの哲学と思想と詩が凝縮した孤高の傑作であるのだ。

「監獄の誕生」ミシェル・フーコー

構造主義、ポスト構造主義を駆け抜けたフランス現代思想の巨匠。
乱読時代にその構造すら知悉せぬままに、辿り着いたポストモダン思想は、コロナ時代に再び脚光を浴びるのではなかろうか。

「悪の華」シャルル・ボードレール

フランス象徴主義を代表する詩人の代表作。
想像を超える享楽を味わった人生から生まれたその作品からは、仄暗い虚無の中に退廃と耽美に満ち溢れ、現代を逆照射する。

「トニオ・クレーゲル」トーマス・マン

20世紀のゲーテとも評されたドイツの大文豪の若き日の傑作。芸術家とは何か?市民とは何か?
芸術という結論なき理想と現実に揺れる主人公に、幾度自らを重ね合わせたことであろう。

「余は如何にして基督信徒となりし乎」内村鑑三

日本史を勉強した中でも、最も影響を受けた人物の著作。ひるまぬ意思、恐れぬ克己、それはキリスト教という範疇を超え、生き抜く力を与えてくれる。