射鹿 鍬山鍬太

短編を書かされています。逃げたいです。クオリティをお求めの方はご退出ください。 Bl…

射鹿 鍬山鍬太

短編を書かされています。逃げたいです。クオリティをお求めの方はご退出ください。 Bluesky: https://bsky.app/profile/gekisou.bsky.social

記事一覧

「ストロベリームーン」「グラス」(2023/12/15)

 タワーマンション高層階の窓際で、女が夜景を眺めている。  男がキッチンで白ワインをグラスに注ぎ、それを持って女のもとへ歩いた。  男は両手に持ったグラスのうちの…

2

「剣山」「玉ねぎ」(2023/12/14)

 美智子は夕飯の材料が入った袋を台所に置きながら義母に声をかける。 「お義母さん、ただいま帰りました」  それを聞いた義母はリビングの奥から出てきて返す。 「あら…

2

「棚田」「充電」(2023/12/13)

 泥だらけで怪我をしたその人を助けたのはひと月も前だったと思う。  道でうずくまってところを私が見つけて、父母に伝えて助けてもらったのだった。  幸い大した怪我で…

1

「缶蹴り」「バラバラ」(2023/12/12)

 憶えているか、俺がオニだった。  あの日の缶蹴りの続きをしよう。   本日は晴天也。探し物にはちょうどいい。  バラバラに散ったあの日が、遠い遠い昔のように感じ…

1

「熱せん妄」「早口言葉」(2023/12/11)

「なまむぎなまごめなまたまごなまむぎなまごめなまたまごなまむぎなまごめ……」 「どうしたんだタカシ、あれだけ滑舌が悪かったお前がこんなに早口言葉を」 「あかまきが…

1

「はいから」「線路」(2023/12/10)

 寝過ごした。  慣れない関東の地で全く聞き馴染みのない駅まで来てしまった。  ひとまず電車を降り、扉の閉まる音を背に聞きながら辺りを見渡す。  ホームの屋根も柱…

1

「牧草」「ほな、また!」(2023/12/09)

 生き物の言葉を翻訳してくれるという機械を購入した。  任意の生き物に設定を合わせて生き物に機械を向けると、その生き物の言葉がわかる優れものだ。  牧草を食べて…

3

「飴細工」「カップラーメン」(2023/12/08)

飴細工「カップラーメンくんはいいなあ。食べたいときにどこでも誰でも笑顔にさせられるんだから」 カップラーメン「いやいや飴細工くんのほうこそ、本当に必要な人に贈ら…

4

「足枷」「冷気」(2023/12/07)

 牢獄は冷える。  とめどなく流れてくる冷気だけでも耐え難いというのに、体制を変えるごとに触れる足枷がヒヤリとして、眠気を散らされる。  うまく寝付けずにいると…

2

「蹄」「背中」(2023/12/06)

 国王マリウスが死んだ。 寝室で短剣を突き立てられ絶命していたのだ。  国の一大事ともあって、何よりも優先して犯人探しが行われた。  マリウスが最後に確認されたの…

2

「シャベル」「星」(2023/12/05)

 今日は友人と山に来ている。 近場ではなく、あえて車で数時間はかかる山まで来るところに、いつもとは違うぞという気概を感じる。  かなりの山奥まで来た。  冬だとい…

4

「換気扇」「虫けら」(2323/12/04)

 皆様、いかがお過ごしか。 私は今、自分を呪っている。前世で悪事を働いた自分を。  私は神を信じていなかったし、もちろん仏も信じていなかった。ましてや輪廻転生なん…

2

「そろばん」「ブランコ」(2023/12/03)

 ぼくはそろばんが大好き。  算数以外の教科はてんでダメだけども、そろばんを知ってからは算数だけは好きになった。  今日も算数のドリルをそろばんで解いていこう。 …

5

「歯車」「歯並び」(2023/12/02)

 自分の歯並びが嫌いだ。笑うたびにグロテスクなまでの口元が表れるのがどうしても許せなくて、自然と笑わないように笑わないように自分を抑えつけるようになった。  私…

3

「便箋」「サンバ」(2023/12/01)

 携帯電話が鳴っている。  この携帯電話を買ったときは胸が高鳴ったものだ。 ボディが鮮やかな銀色で、整然と並べられたボタンのデザインも良い。なにより歌が好きな私に…

2

「ガスマスク」「鰡」(2023/11/30)

A「いやぁ、鰡って魚は強烈に臭いって聞いたからね。」 B「だからってガスマスクを付けるのはやりすぎですよ。」 お題提供:ピカソケダリ メロス(ガスマスク)/ポポポ(鰡)

3

「ストロベリームーン」「グラス」(2023/12/15)

 タワーマンション高層階の窓際で、女が夜景を眺めている。
 男がキッチンで白ワインをグラスに注ぎ、それを持って女のもとへ歩いた。
 男は両手に持ったグラスのうちの片方を女に差し出す。
 グラスに注がれたアルコールに映る下心を見た女は、少し意地悪してやろうと男に言い放つ。
「いちごミルクにして。甘いのが飲みたいの。」
 男はそれに何の動揺もせず涼しい顔で返した。
「とびきり甘いさ、ほら。」
 男はそ

もっとみる

「剣山」「玉ねぎ」(2023/12/14)

 美智子は夕飯の材料が入った袋を台所に置きながら義母に声をかける。
「お義母さん、ただいま帰りました」
 それを聞いた義母はリビングの奥から出てきて返す。
「あら、おかえり美智子さん。」

 美智子が食材を袋から出していると、義母がおもむろに小箱を差し出した。
「美智子さん、あなた今日誕生日でしょ。いつも頑張ってくれているからそのお礼も兼ねて、プレゼントよ」
 美智子は義母の嘘くさい笑顔に嫌な予感

もっとみる

「棚田」「充電」(2023/12/13)

 泥だらけで怪我をしたその人を助けたのはひと月も前だったと思う。
 道でうずくまってところを私が見つけて、父母に伝えて助けてもらったのだった。
 幸い大した怪我ではなく、こんな山中のただの民家の救急箱で対応できるくらいものだった。
 聞くと誤って坂道を転げ落ちたのだと言う。

 彼は良く言えば冒険家、悪く言えば放浪者のようなものだった。
 アルバイトをしてある程度お金が貯まったら旅にでるという生活

もっとみる

「缶蹴り」「バラバラ」(2023/12/12)

 憶えているか、俺がオニだった。
 あの日の缶蹴りの続きをしよう。 

 本日は晴天也。探し物にはちょうどいい。
 バラバラに散ったあの日が、遠い遠い昔のように感じる。
 シゲもトシオも見つけたよ。あとはお前だけなんだ。
 もう米国との鬼ごっこは終わったようだから、缶蹴りの続きをしても良い。

 わかったカンジ、本音で話そう。
 おれの負けでいいから、もう出てきてくれないか。
 シゲとトシオみたい

もっとみる

「熱せん妄」「早口言葉」(2023/12/11)

「なまむぎなまごめなまたまごなまむぎなまごめなまたまごなまむぎなまごめ……」
「どうしたんだタカシ、あれだけ滑舌が悪かったお前がこんなに早口言葉を」
「あかまきがみあおまきがみきまきがみあかまきがみあおまきがみきまきがみ……」
「おい聞いているのかタカシ!」

 病室のベットで一人の男が高熱にうなされ、ブツブツとうわ言を繰り返している。
「どうしたんだタカシ……早口言葉をやめてくれ……」

お題提

もっとみる

「はいから」「線路」(2023/12/10)

 寝過ごした。
 慣れない関東の地で全く聞き馴染みのない駅まで来てしまった。
 ひとまず電車を降り、扉の閉まる音を背に聞きながら辺りを見渡す。
 ホームの屋根も柱も立ち入り防止のフェンスももれなく錆び付いていて、この駅の淋しさがよくわかる。
 駅名標もかなり薄汚れていて見にくいが、なんとか読み取れる具合だ。
 「はいから町」と書かれてある。

 とにかく帰らねばならない。
 駅構内を練り歩き時刻表

もっとみる

「牧草」「ほな、また!」(2023/12/09)

 生き物の言葉を翻訳してくれるという機械を購入した。
 任意の生き物に設定を合わせて生き物に機械を向けると、その生き物の言葉がわかる優れものだ。

 牧草を食べている最中の飼い牛に、早速使ってみる。

「ほな、また」「ほな、また」「ほな、また」

 おかしい。いくらやり直しても「ほな、また」しか表示されない。
 壊れているのか、とも考えたが思い返せばきちんと設定を確認していなかった。

 翻訳対象

もっとみる

「飴細工」「カップラーメン」(2023/12/08)

飴細工「カップラーメンくんはいいなあ。食べたいときにどこでも誰でも笑顔にさせられるんだから」

カップラーメン「いやいや飴細工くんのほうこそ、本当に必要な人に贈られて、甘くて美しい。こんなに羨ましいことはないよ。」

 飴細工もカップラーメンも、どちらも約3分で完成する、立派な食べ物だというのに。
 隣の芝生は青く見える。

お題提供:ピカソケダリ メロス(飴細工)/ポポポ(カップラーメン)

「足枷」「冷気」(2023/12/07)

 牢獄は冷える。
 とめどなく流れてくる冷気だけでも耐え難いというのに、体制を変えるごとに触れる足枷がヒヤリとして、眠気を散らされる。

 うまく寝付けずにいると柵の前から微かな声がした。
「ギャバン、起きているか」
 ひどく弱々しい声の主は親友、イサクだった。
「イサク、なんたってこんなことを」

「すまない、ギャバン。私には妻も子もいるのだ。詳しくは話せんが、これは"政治"だよ」

「……とな

もっとみる

「蹄」「背中」(2023/12/06)

 国王マリウスが死んだ。
寝室で短剣を突き立てられ絶命していたのだ。

 国の一大事ともあって、何よりも優先して犯人探しが行われた。
 マリウスが最後に確認されたのは寝室に入る直前、発見されたのは朝方、従者がマリウスを起こしに行った時であった。
 犯行は警備の薄い真夜中に行われたということになる。
 それゆえに目撃証言などもなく、短剣も寝室に飾られていたものが使われており、手がかりはほとんどない。

もっとみる

「シャベル」「星」(2023/12/05)

 今日は友人と山に来ている。
近場ではなく、あえて車で数時間はかかる山まで来るところに、いつもとは違うぞという気概を感じる。

 かなりの山奥まで来た。
 冬だというのに友人は滝のような汗を拭っている。対して私は体が少し冷えているくらいである。
 友人は疲れているだろうに、シャベルを持ち出し必死に穴を掘り始める。体に鞭を打って、シャベルに足をかけて土を掘り起こし横に遣る。全身を最大限に使って、必死

もっとみる

「換気扇」「虫けら」(2323/12/04)

 皆様、いかがお過ごしか。
私は今、自分を呪っている。前世で悪事を働いた自分を。
 私は神を信じていなかったし、もちろん仏も信じていなかった。ましてや輪廻転生なんか知りもしていなかった。
 今になって先人の言うことは聞くべきなのだと身に染みている。

 人間として悪事を働いた私は、六道輪廻の考えに則りきちんと畜生道に落とされてしまった。
 蝿として生まれ変わった私は、人間時代とはうってかわって至極

もっとみる

「そろばん」「ブランコ」(2023/12/03)

 ぼくはそろばんが大好き。
 算数以外の教科はてんでダメだけども、そろばんを知ってからは算数だけは好きになった。
 今日も算数のドリルをそろばんで解いていこう。

【たかしくんは3000円を持ってスーパーに行きました。200円のりんごを8つ買い、お釣りをポケットに入れました。買い物帰りに鞦韆に興じていると、ポケットからお金が落ちてしまいました。たかしくんは必死にお金を集め、いま手元に400円があり

もっとみる

「歯車」「歯並び」(2023/12/02)

 自分の歯並びが嫌いだ。笑うたびにグロテスクなまでの口元が表れるのがどうしても許せなくて、自然と笑わないように笑わないように自分を抑えつけるようになった。

 私の住む街にリサイクルショップがある。誰もが名前を聞いたことのある大手チェーンというわけではない。開店当時から張り替えてないのであろう燻んだテント看板に「なんでもあります徳田リサイクルショップ」と書いてある、個人店舗である。
 時折そこにふ

もっとみる

「便箋」「サンバ」(2023/12/01)

 携帯電話が鳴っている。
 この携帯電話を買ったときは胸が高鳴ったものだ。
ボディが鮮やかな銀色で、整然と並べられたボタンのデザインも良い。なにより歌が好きな私にとって「着うた」という機能が嬉しい。
 しかし私は今、携帯電話が鬱陶しくて仕方がない。あれだけウキウキしながら設定した一青窈も、今では私の神経を逆撫でするだけになってしまった。
 歌好きが高じて作詞家を名乗るまでになれたのは良いものの、所

もっとみる

「ガスマスク」「鰡」(2023/11/30)

A「いやぁ、鰡って魚は強烈に臭いって聞いたからね。」

B「だからってガスマスクを付けるのはやりすぎですよ。」

お題提供:ピカソケダリ メロス(ガスマスク)/ポポポ(鰡)